夫亡き後自分の介護を子供に委ねるとき、やってはいけない3つの行動「同居は慎重に」
もしも夫がボケたら、夫が死んだら、自分の介護はどうすべきなのだろうか? 子供には迷惑をかけたくないけれど、いざというときに頼りになるのは子供の存在だろう。子供のとのかかわり方について、専門家の意見を「自分の介護に関するアンケート調査」とあわせて紹介する。
自分の介護は子供の頼りたくないと思っているが…
夫にもしものことがあったとき、頼りになるのはやはり子供。最後にカギとなるのは、円満な家族関係だ。
目白大学教授の小野寺敦子さんは語る。
「いまの60代くらいの女性は『サンドイッチジェネレーション』。自分の子は30代前後の子育て世代で、親は80代でも元気で健在、という人たち。親の介護に娘の結婚、孫の世話などの“板挟み”になり、非常に大変な立場なのです」
親の介護・自分の介護は誰がすべき?調査結果
問:「親の介護は誰がすべきだと思いますか」(40~50代が回答)
自分自身 57.2%
介護サービスの職員 36.0%
自分の兄弟姉妹 30.4%
問:「自分の介護は誰にしてほしいですか?」(60~70代が回答)
介護サービスの職員 49.6%
配偶者 41.2%
子供 24.6%
生命保険会社の調査(アクサ生命)によると40~50代の“介護する側”は、半数以上が「親の介護は自分がするべき」と考えているの対し、60~70代の“介護される側”は、7割近くが「子供に面倒をみてほしくない」と考えていることがわかった。
介護する側とされる側の意識の違いが浮き彫りになった。しかし、老後、子供に迷惑をかけたくないと思っていても、夫が認知症になったり、夫に先立たれたとき、頼りたくなるのは子供。これから先、自分自身の介護で子供とのかかわりで気をつける点はなんだろうか。
→女ひとり死ぬ前に…老前整理の進め方|絶対に捨てておくべきものは?
夫亡き後の介護でやってはいけない3つのこと
1.母娘が過剰に親密になりすぎてはいけない
とくに娘との関係には注意すべきだという。
もしものことがあったとき、ついわが子に頼りたくなるのは当然のこと。しかし、自分の子供、特に娘にばかり頼りすぎてしまうのは考えものだ。
「息子なら、お金や施設との契約といった具体的な話がしやすく、頼れる存在になります。
一方、娘だと同性ということもあり“認知症になったお父さんの介護が大変”などと愚痴や心配事を話せたり、心に寄り添ってもらいやすい。
しかし、だからこそ、母娘が過剰に親密になりすぎないように注意する必要があります。依存しすぎていても、娘は“親だから”という理由で、負担に感じても無下にすることはできません。わが子に負担をかければかけるほど、“娘がいないと何もできない両親”になってしまいます。
“孫はこの学校に入れなさい”“あんたのしつけは間違っているわよ”など、干渉しすぎないこと。義理の娘である息子のお嫁さんのことも尊重し、適度な距離感を保つように心掛けることが大切です。」(小野寺さん)
→夫が死んだときの手続き…女ひとりの老後のための7つのNGとは|ファイナンシャルプランナー風呂内亜矢さん
2.「子供は親の言うことを聞くべき」という考え方は捨てる
いくつになって、わが子を子供扱いしがち。しかし、その考えも改めた方がいい。
あなたが育て上げた子供たちは、立派な大人だ。
世話をする側からされる側になったら、「子供は親の言うことを聞くべき」という考えは捨てた方がいい。
3.子供と同居は過度な期待をしてはいけない
夫の死を契機として子供の家で同居を開始する人も多いが、「かまってもらえる」「寂しくなくなる」などの期待はできない。
高齢者の生活環境調整に詳しい大阪保健医療大学准教授の山田隆人さんが話す。
「孫が“おばあちゃんは家族”と認識できるかどうかは、小さい頃からどれくらい接点があったかによって変わります。ある日突然“今日から一緒に暮らすのよ”と言っても、孫は距離を感じてしまう。
子育て世帯は子供を中心に動きますし、高齢者とは生活時間も違う。家での役割がなくなり、肩身の狭い思いをする人も少なくありません」
いつか夫がいなくなり、わが子に頼らなければならない日はきっとやってくる。そのときに後悔しないよう、家族の関係を見直しながら、丁寧に準備を進めていきたい。
教えてくれた人
小野寺敦子さん/目白大学教授。目白大学HP:(https://www.mejiro.ac.jp/graduate/voice/archive/012045/)。著書『女50代のやっかいな人間関係』(河出書房新社)。
山田隆人さん/大阪保健医療大学准教授。大阪保健医療大学HP:(https://ohsu.ac.jp/teachers/532/)
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