犬の薬の飲ませ方|絶対にしてはいけないこと3つ【獣医師が解説】
病気やけがの治療、感染症予防のためなど、愛犬に薬を飲ませる機会は意外と多い。しかし、嫌がって飲んでくれないと悩んでいる飼い主も…。そこで、犬に薬を与える時にやってはいけないこと、注意点や対処法など、薬の飲ませ方について獣医師に解説いただいた。
1.嫌がる犬に無理に薬を飲ませてはいけない
「処方された薬はきちんと飲ませないとっと、真面目な飼い主さんほど頑張って飲ませようとしてしまいますが、嫌がる犬に無理に薬を飲ませるのはおすめできません」
こう話すのは、目黒アニマルメディカルセンター/MAMeC顧問の獣医師・佐藤貴紀さんだ。
犬用の薬は基本的に苦く、美味しくないものが多い。ましてや犬は、苦いものが得意ではないため、薬を嫌がるのは当然だという。
「犬が嫌がっているのに無理に飲ませようとすると、薬に対してネガティブなイメージを持ってしまいます。そうなると薬への警戒心が強くなり、ますます薬を拒むように。飼い主との信頼関係も壊れて悪循環に陥ってしまうので、無理に与えるのだけはやめましょう」(佐藤さん、以下同)
2.嘔吐があるときは薬を飲ませてはいけない
とくに高齢の犬は病気や食欲不振などで薬を飲む機会も増えるため、以下のポイントに注意しておこう。
「吐き出す力・飲み込む力が弱いなどの理由から、誤嚥を起こす可能性があります。食べ物に混ぜたり、おやつで包んだりする場合は、ひと口で飲み込めるサイズにして、薬を飲んだ後、苦しそうにしていないか注意しましょう」
「嘔吐などがある場合、服薬しても吐いてしまうので、その場合は病院で注射などによって薬を投与する方法もある。
3.人間用の市販薬は絶対に与えてはいけない
「実は、動物と人間の薬は、治療に必要な薬の成分が共通していることも少なくありません。だからといって、自宅にある人間用の市販薬を与えることは絶対にしてはいけません。なぜなら、用途と違う成分が混合されている場合もあるからです。最悪の場合、命を落とす危険もあります」
動物病院では、ペットの体重・年齢に合わせて薬を処方している。薬をきちんと服用できるかが、病気の回復も左右する。愛犬の嗜好や性格を考慮したうえで無理せず行なおう。
犬が嫌がらずに薬を飲ませる3つの方法
犬は嗅覚が鋭いので、そのまま与えても飲んではくれない。では、愛犬が嫌がらずに上手に薬を飲んでもらうにはどうすればいいのか?
1.食事に混ぜて与える
「無理に直接薬を飲ませる必要はありません。まずは食事に薬を混ぜて与えてみてください。この投薬方法が、一番簡単かつ犬もストレスフリーなのでおすすめです。
人間の場合は、食前・食間・食後など服用のタイミングは、食事の前後のことが多いですが、犬の場合は、別に食事と一緒に服薬しても問題ないでしょう。
ただし、時間が経つとご飯に薬の苦味が出てしまう場合があるので、薬を混ぜた後は速やかに食事を与えたほうがいいですね」
2.おやつに包んで与える
アレルギー症状がなければ、ジャーキーやチーズなど愛犬の好きなおやつに包んで与えてもよい。
「おやつやチーズの香りで、薬のにおいもカモフラージュされます。おやつにつられ、すんなりと食べてくれる犬も多いですよ」
ただし、疾患によっては、おやつが症状を悪化させることもあるため、与えても大丈夫か、かかりつけ医に相談しよう。
3.ピルポケットを使う
ピルポケットとは、中心に薬を入れる穴が開いている投薬専用のトリーツ(おやつ)のこと。形状もやわらかく、手でつまむと簡単に形が変えられ、おやつよりも包みやすい。
他にも、ペット用の服薬ゼリーやオブラートなどもある。
薬によっては、
犬が薬を飲んでくれない時の対処法
犬の中には、見慣れない物やいつも違うに薬のおいに反応して、嫌がる場合もある。
前述の方法で薬を飲んでくれない場合には、飼い主が直接飲ませる方法がある。以下で解説する。
犬に直接薬を飲ませる7ステップ
【1】飼い主は利き手と反対の手で犬のマズル(口周りや鼻先のあたり)を持つ。
【2】犬の首を斜め45度くらいまで上にそらす。
【3】飼い主は利き手の親指と人差し指で薬を持つ。
【4】薬を持ったまま利き手の中指を口の中に入れて下に引く。
【5】口が開いたらできるだけ舌のつけ根に薬を入れる。
【6】口を閉じて、飲み込むまでしばらくは鼻先を上に向けたまま、喉もとを優しくさする。
【7】水を飲ませる
「薬が口の中や食道にはりつかないように、最後に水を飲ませてあげましょう。
直接薬を飲ませる方法は、最初からうまくできなくても大丈夫。慣れるまで練習が必要です。人のほうが焦っていると、その緊張感が犬に伝わって余計うまくできなくなるので、リラックスして望みましょう」
それでも、どうしてもうまくできない場合は、動物病院で薬を処方された際に、その場で獣医師やスタッフに飲ませ方のレクチャーを受けてみるのもいいだろう。
教えてくれた人/獣医師・佐藤貴紀さん
麻布大学獣医学部卒業後、勤務医を経て独立し白金高輪動物病院を設立。院長として勤務後、JVCC二次動物医療センター目黒病院センター長を務める。現在、目黒アニマルメディカルセンター顧問(https://mamec.wolves-tokyo.com/)。専門は「循環器」。全国に100人しかいない「獣医循環器学会認定医」。「SuperDoctors 〜名医のいる相談室〜」(https://www.youtube.com/channel/UCUxW…)にて配信中。
取材・文/鳥居優美
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