女ひとり死ぬ前に…老前整理の進め方|絶対に捨てておくべきものは?
女ひとりの老後、楽しく生きて、そしてひとりで死ぬときのために…。準備しておくべき”老前整理術”を専門家に聞いた。エンディングノートに書き残しておくべきものとは? 所持品の整理とは…。
【目次】
老前整理とは…
いつか来る最期のときに備え、お金や人間関係、身の回り品物の整理をしてこくことを”老前整理”という。
いつ“その日”が訪れるかは、誰にもわからない。いざというときに気がかりなのは、残していく人たちのこと。葬儀、相続、遺品整理などで困らせることがないように、身ぎれいにしておきたいものだ。眠りにつく前に、一冊のノートを用意して。
東京都福祉保健局の発表によると、2019年、東京23区内の自宅で亡くなった65才以上の単身者は、2003年以降過去最高を記録。男女合わせて5953人となった。自宅で悠々自適なひとり暮らしをしていても、誰もがいつか死を迎える。
もしものとき、残された人たちに負担をかけないためには、どうすればいいのだろうか。
老前整理で重要なのは遺言書と財産目録を
自分が亡くなった後、残された家族は葬儀、法的手続き、遺品の整理など、やるべきことが山積みになる。
一般社団法人遺品整理士認定協会常務理事で遺品整理士の長谷川正芳さんは、「遺族の負担を減らすには、あらかじめ遺言書を残しておくのが最善の方法」と語る。
事前に「誰に」「何を」「どんな割合で」相続させるのかの意思を明確にした遺言書と、預金や家などすべての財産を書き出したうえで、それらをお金に換算し、「全部でこれだけの財産があります」と一覧にした財産目録が必要になる。
エンディングノートに書くべき4つのこと
一から自分でつくる自筆証書遺言書は骨が折れるうえ、書式の間違いも心配だ。公証役場でつくる公正証書遺言書が安全だが、手数料などに10万円以上かかる。
そこでエンディングノートから始めるのがおすすめだ。
1.葬儀の希望や理由
「エンディングノートは、遺言書のような法的効力がないぶん制約もないので、遺族に伝えたいことを、なんでも自由に書ける。葬儀の希望を残す場合は、余計な遺族間のトラブルを防ぐために、なぜそうしたいかの理由も書き添えて」(長谷川さん)
法的な強制力がなくても、あなた自身の「こうしてほしい」という意思は家族に伝わるだろう。老前整理(R)コンサルタントの坂岡洋子さんは、
「こんな葬儀にしてほしい」という希望に加えて、誰を葬儀に呼んでほしいかも書いておくことをアドバイスする。
2.訃報を知らせたい人の連絡先
「自分の訃報を知らせたい人をリスト化して連絡先を書き留めておくと、葬儀の際、遺族の負担が減ります。遺品の処分方法や棺に入れてほしいものもメモしておけば、その後の遺品整理もスムーズに進みます」
3.パソコンやスマホのパスワード
絶対に書き忘れてはいけないのは、パソコンやスマートフォンのロック解除方法だ。
「パソコンとは違い、スマホはパスワードがわからなければ解除が難しい。特にiPhoneは、“パスワードがなければほぼ100%解除できない”といわれています。アンドロイドでも、プロの業者に依頼して、約1か月は待つことになる。しかも、費用は約50万~60万円もかかります」(長谷川さん・以下同)
4.保険証や権利書のありかを明記
さらに、保険証や権利書などの大切なもののありかや預金額、口座番号なども書き留めておくといい。詳細にまとめておけば、正式な遺言書をつくるときのたたき台になる。
「“遺言書をつくっていること”と、“遺言書を保管している場所”も、エンディングノートに書いておくべきです。もし自宅に保管している場合、家族が見つけられずにトラブルになるケースも少なくありません」
エンディングノートの保管場所は?
大切な財産の内訳や、自分の胸の内までさらけ出さなければならないだけに、エンディングノートは人目につかない場所に隠すべきもの。本当の意味での枕元に置くわけにはいかないが、かといって誰にも見つけられないような場所に隠してはいけない。
「せっかく書いても、見つけてもらえなければ意味がない。本棚の奥など、もしものときに発見されやすい場所に保管してください。可能なら、書いてから家族に預けたり、メールでありかや概要を送ったりしておくのもいいでしょう」
所持品の老前整理術…捨てるべきものは?
エンディングノートに加えて、元気なうちから取りかかりたいのは、所持品の整理。
「高齢になると、片づけにも腰が重くなるもの。50、60代の元気なうちから、不要なものはできるだけ減らして、身辺を整理しておきましょう」(坂岡さん・以下同)
宝石や時計は元気なうちに贈与
なかでも、宝石や時計などは、元気なうちに贈与しておいた方がいい。
「高価な品を死後に形見分けすると、親族同士でもめ事になることもあります。親族が集まる機会があれば、“欲しいものがあれば持って行って”と言って、子供や孫にあげるのがいちばんいい。生きているうちに子供や孫から『ありがとう』という言葉を聞くこともできます。ただし、相手が欲しがっていないのに“いいものだから”などと、無理に押しつけないように気をつけて」
写真やアルバムの整理
思い出の品も少しずつ整理を。アルバムは1、2冊に減らしておき、スマホやパソコンに保存されている写真は、CDやDVDに焼いておく。1枚でも充分な量が保存できるが、多すぎると見返すのが面倒になるので、同じような写真は取捨選択しておくこと。処分するのを心苦しく感じることもあるが、“遺族が必要としているかどうか”を目安にすれば迷わずにすむ。
「家族のアルバムがたくさんあるなら、“子供はその写真を大切にしているかどうか”を考えれば、処分するかしないかの判断がつきやすくなります」
悪口を書いた日記は処分を
「日記なども、もし夫や姑の悪口を書いているなら処分した方がいいし、いい思い出や感謝の気持ちを書いているなら残していい。
趣味の絵画や陶芸は自分で処分を
「絵画や陶芸など、趣味で作った作品は、遺族にとっては捨てづらいもの。できるだけ自分で減らしておきましょう」
遺影の準備をしておく
写真の整理とともに、遺影の準備も忘れずに。遺影写真は亡くなった後すぐに必要になるうえ、遺族の手元に長く残る。少しでもラクに葬儀をしてもらえるよう、自分で準備しておけるのが理想的だ。
「葬儀に使える遺影写真が見つからない人は意外と多い。いい写真が1枚もなかったり、逆に写真が多すぎて決められないのです。候補写真を複数ピックアップしてCDに焼いておけば、遺族の負担が減ります」(長谷川さん)
葬儀代になるお金を準備
写真の整理が終わったら、葬儀代の足しになる程度のお金も、あらかじめ用意しておきたい。
「葬儀のほか、不用品の処分など、人が亡くなった後は大きなお金が必要になります。相続財産とは別の預金通帳を用意して“このお金でお葬式を開いてね”と、エンディングノートに書いておくと安心です」(坂岡さん・以下同)
通帳や印鑑の保管場所を伝える
当然ながら、通帳や印鑑などの貴重品は、エンディングノートとは分けて保管すべきだ。しかし、床下などのわかりにくい場所にしまい込んだために、遺族が財産を見つけられない、というケースも少なくない。
「通帳や印鑑などはまとめて1つの箱に入れておく一方で、その箱を保管するのは、誰も見つけられないような場所でも、人目につくところでもいけません。たんすや押入れなど、死後必ず遺族が触れるであろう場所に保管して、信頼できる人に、口頭で場所を伝えるようにしましょう」
残される家族のためにできることを、いまから進めておきたい。
教えてくれた人
老前整理(R)コンサルタント/坂岡洋子さん、一般社団法人遺品整理士認定協会常務理事で遺品整理士/長谷川正芳さん
※女性セブン2020年11月5・12日号
https://josei7.com/
●夫が死んだときの手続き…女ひとりの老後のための7つのNGとは|ファイナンシャルプランナー風呂内亜矢さん