お腹にガスがたまる…その理由と対処法|放っておくと大腸がんに!?
ビオフェルミン製薬の調べによると、女性の約20%が「1年以内にお腹の張りが気になったことがある」と回答。さらにそのうち60%の人が週に1日以上お腹の張りを感じているという。多くの女性を悩ませている「ガス腹」の原因やその解決法を専門家に教えてもらった。
お腹が張る、ガスが溜まる「ガス腹」の原因
大腸疾患に詳しい松生クリニック院長の松生恒夫さんは、ガス腹の原因を「腸の動きの停滞」だと解説する。
「ガス腹は、腸の動きが停滞し、ガスがおならとして体外に排出できていないことによって起こります。腸の動きが止まってしまう理由は、冷えてしまったり運動不足で腸への刺激が足りなかったり、偏った食生活で腸内環境が悪化していたりとさまざまです」
特に女性は男性に比べてガス腹になりやすい体質だと松生さんが続ける。
冷えや腰痛、ストレスが原因のことも
「女性は冷え症の人が多いうえ、大腸の『横行結腸(おうこうけっちよう)』と呼ばれる、腹部を横に通る部分が下に垂れ下がっている人が多い。ガスはこの部分にたまりやすく、垂れ下がっていると、ガスが通り抜けづらく、排出がうまくいきません」
ガス腹の原因は、腸の構造だけにとどまらない。あきカイロプラクティック治療室副院長の檜垣暁子さんは多くの施術経験から、こんな指摘をする。
「腰痛を訴える人にガスがたまりやすい傾向があります。腰の筋肉がすごく張っていたり、骨盤まわりやお腹側の筋肉が硬い人に多い。胃腸と腰は近くに位置しているため密接な関係にあり、胃腸が弱れば、神経バランスが乱れ、背中や腰の筋肉が緊張します。反対に、背中や腰の筋肉が凝り固まると、腸付近の筋肉が影響されてこわばり、動きが停滞してしまうのです」
メンタル面との関連も指摘されている。心療内科「心と体のクリニック」院長の大林正博さんが解説する。
「最近、『脳腸相関』という言葉が注目されています。人間にとって重要な器官である脳と腸とは、相互に影響を及ぼし合っていることが最新の研究でわかってきました。試験や面接の前など、ストレスを感じるとお腹が痛くなり、トイレに行きたくなる人が多いと思いますが、これは脳が自律神経を介して腸にストレスの刺激を伝達することによるもの。逆に、腸の機能異常や腸内細菌の異常が脳に伝わり不安を引き起こすとの論文もある」
このように、ストレスと腸の状態は“一心同体”。ガス腹に関しても関連は避けられない。
「不眠や疲労などによる精神的なストレスは腸の動きに大きく影響するといえる。また、緊張状態にある人は無意識に息を飲み込む回数が増え、その結果、腸に大量の空気がたまってしまう『呑気症(どんきしよう)』という状態に陥ってしまうことがある。これもガス腹の原因の1つです」(大林さん)
ガス腹で大腸がんや逆流性食道炎に
冷え症から腰痛までさまざまな要因をつくり出すガス腹は、言うまでもなく苦しく、スカートやジーンズが入らないなどの弊害があるが、それだけにとどまらない。
「むくみやニキビ、肌荒れの原因となるほか、滞留するガスによって体臭が強くなることもある。そればかりか、ひどくなると腸内環境が悪化し、大腸がんのリスクを高めたり、腸の横行結腸にたまったガスが胃を圧迫して逆流性食道炎を誘因するとも考えられます」(松生さん)
若い頃から便秘やガス腹など腸の不調に慣れっこになっている人も少なくないが、それがのちのち命取りになる場合だってあるのだ。
ガス腹を改善する対処法
では、ガス腹を改善するためにはどうすべきか。では、ガス腹を改善するためにはどうすべきか。松生さんは、「オリーブオイル」「オリゴ糖」「ペパーミントティー」を食卓に取り入れることを推奨する。
●食卓に「オリーブオイル」「オリゴ糖」「ペパーミントティー」を
「エクストラバージンオリーブオイルは腸の活動を活発にする作用があり、温かいスープに入れると効果が倍増。物理的に内側から温めることで副交感神経を優位にしリラックスさせる。腸を柔軟にし、働きを活性化してくれるのです。
また、玉ねぎやバナナ、ごぼうなどに含まれるフラクトオリゴ糖、大豆に含まれる大豆オリゴ糖、キャベツやアスパラガス、サトウダイコンなどに含まれるラフィノース、乳糖と砂糖から作られる乳糖加糖オリゴ糖など、小腸で吸収されずに大腸に到達する『難消化性オリゴ糖』はビフィズス菌のエサとなり、ビフィズス菌を増やします。腸内環境を改善し、腸のぜん動運動を促進、善玉菌を増やすなど腸を活性化させてくれます。そしてペパーミントは漢方薬としても使われ健胃・解毒効果のほか腸の動きを促し、ガスを排出させる作用があります」(松生さん)
納豆や豆腐がガス腹を招く
一方で、口にするのを控えた方がいい食品もある。みらいクリニック院長の今井一彰さんは腸にいいとされる食べ物も、ガス腹の状態のときは控えるべきだと言う。
「納豆やチーズなどの発酵食品は、ガスを発生させる酵素を含んでおり、摂りすぎるとガス腹を引き起こすことがあります」
檜垣さんも同意見だ。
「豆腐などの豆製品も体にいいと積極的に摂る人が多いですが、こちらもガスが出やすい。ガスでお腹が苦しいときは、おかゆやうどんなど消化のいいものにして、豆類は体調が整ってから食べるようにしてください」
→免疫力を低下させる「宿便」、ぽっこりお腹の解消法|空腹時の白湯と梅流しが効果的
口呼吸で空気を飲み込むことが原因の場合も
食べ物のほか、空気を取り込む呼吸に原因があるケースも含まれるようだ。
「口呼吸は空気を飲み込み、“呑気症”につながることがある。ガス腹を防ぐうえでは、できる限り鼻で呼吸するのが望ましいですね。また、口呼吸の人は、舌の力が弱くて上あごから離れ、口まわりの筋肉も緩んでいます。大きく口を開け、『あー、いー、うー、べー』と最後は舌を出して発声する『あいうべ体操』などは舌を鍛え、口まわりの筋肉を動かすトレーニングです。こういったものを取り入れて鼻呼吸を定着させ、予防してほしいですね」(今井さん)
●鼻呼吸を促して呑気症を抑える「あいうべ体操」のやり方
【1】~【4】を1日10セット行う。
【1】「あー」と声を出し、口を大きく開く
【2】「いー」と声を出しながら、口を大きく横に広げる
【3】「うー」と声を出しながら、唇を大きく縦に広げる
【4】「べー」と声を出しながら、舌をあごにつけるように突き出して下にのばす
腰回りの筋肉をほぐしてお腹の張りを解消する方法
また、檜垣さんによれば、お腹の張りは腰まわりの筋肉をほぐすことで解消できるという。
「お腹まわりの腹筋や腰などの筋肉を柔らかくほぐしてあげることで、腸のまわりの血流が改善されてリラックスし、ガスが排出されやすくなります」
檜垣さんがすすめるのが、腰部をたたく『腰トントン刺激法』やあお向けになって腰にこぶしを当てる『腰ぐ~体操』(下図を参照)だ。骨盤の中央や腰、ウエストまわりを自分で気持ちいい強さでたたく体操を習慣化することで、停滞していた腸の活性化が期待できるそうだ。
◆ガス腹を改善する腰ストレッチ
腰まわりの筋肉をほぐすことで、胃の動きを活発にする。
《腰ぐ~体操》
《腰トントン刺激法》
「こうした運動は寝る前や、お風呂上がりの腰が温まったときにやるのがおすすめです。逆に、食べた直後は避け、2~3時間置いてからにしてください」(檜垣さん)
食事や体操に加え、これからの時期に気をつけたいのが、屋内と屋外の気温差だ。
「エアコンが効いた部屋と外との温度差が10℃を超えると腸に大きな負担がかかります。温度を調節したり、着るものを工夫したりして、なるべく温度差を縮めるようにしてください。また、体を温めるためには入浴も活用してほしい。38~41℃程度のお湯に30分ほどつかるといい。アロマオイルを垂らせば副交感神経の働きも高め、相乗効果が望めます」(松生さん)
夏はもう目の前。ちょっと頑張ってみるだけで、お腹が気になりしまい込んでいたお気に入りのカットソーが着られるようになるかも。
教えてくれた人
松生恒夫さん/松生クリニック院長。医学博士・日本内科学会認定医。大腸疾患に詳しい。
檜垣暁子さん/あきカイロプラクティック治療室副院長。カイロプラクティック理学士。
今井一彰さん/みらいクリニック院長。内科医・東洋医学会漢方専門医。鼻育、口呼吸問題の第一人者。あいうべ体操、ゆびのば体操の考案者。
イラスト/飛鳥幸子
※女性セブン2020年7月9日号
https://josei7.com/
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