在宅医療でここまでできる|内科、歯科、眼科、健診も!ステイホーム医療最新事情
「看取り」「緩和ケア」そんな言葉がついて回った在宅医療に新しい風が吹きつつある。コロナ禍の下でも医学は日進月歩の進化を遂げ、いまや電話ひとつで薬がもらえ、家で眼圧検査までできる時代になった。治療の受け方から注意点まで最新情報を徹底レポート。
会議に授業、飲み会まで、コロナ禍によってさまざまなものがリモート化されたが、医療も例外ではない。ナビタスクリニック川崎の内科医・谷本哲也さんが指摘する。
「これまでは通院して治療や薬の処方を受けることが当たり前でしたが、外出による感染拡大や病院内でのクラスターを防ぐためさまざまな規制が緩和され、病院に行かなくても電話やオンラインで診療を受けたり、薬をもらったりできるようになりました。自宅にいながら受けられる医療の幅が広がり、恩恵を受ける利用者が増えています」
ウィズ・コロナの世界では、わが家で医療を受けるのは死ぬ間際だけ、という常識は過去のものになりつつある。ステイホームで受けられる最新医療とその注意点を探っていく。
アプリ1つでのどの奥まで診察
まず注目したいのが、スマホやパソコンのビデオ通話機能を利用した「オンライン診療」の拡張だ。
●オンライン診療
「オンライン診療の最大の特徴は、自宅にいながら医師と画面上で相談できることです。これまでは持病の慢性疾患がある場合に限ってかかりつけ医のオンライン診療が可能でしたが、コロナを機に規制が緩和され、初診でも、オンライン診療を受けられるようになりました」(谷本さん)
とはいえ、オンライン診療を導入している医療機関はまだ多くない。近隣の医療機関のうち、どこがどのように実施しているのかイマイチわからないという人も多いだろう。そこで覚えておきたいのがオンライン診療専用のスマホアプリだ。なかでも『curon(クロン)』は、1つのアプリで病院探しから薬の処方、支払いまですべてをまかなえると大きな話題を呼んでいる。
curonを提供する株式会社MICIN(マイシン)広報の多田絵梨香さんによれば利用患者数は昨年末に比べ、10倍以上に増えているという。
「アプリに登録された4000を超える全国の医療機関から患者の条件に合った医師を選び、予約してテレビ電話で診療を受けていただきます。オンラインのため血液検査や触診ができないといった制限はありますが、スマホのカメラを通して医師が患者の、のどの奥を診察したり、事前に患者が撮影した患部の写真を見て診察するなど、可能な限りの医療を提供しています」(多田さん)
24時間テレビ電話で診療を受けられ、夜間でも診療後最短1時間で薬が届くオンライン救急診療サービスの『ファストドクター』やお薬手帳のアップロード機能もついたアプリ『リモートドクター』など、注目のサービスはほかにもある。自分自身はもちろん、小さな子供が体調を崩したときなど、感染リスクが低い家で安心して医師に相談できるといった、多くの喜びの声が上がっているという。
●こんなにあるオンライン診療サービス一覧
以下、上の図表と同じ内容。
◆curon(クロン)/MICIN
https://curon.co/
アプリストアからアプリをダウンロードし、アカウント登録する
全国で4000を超える医療機関が登録するオンライン診療専用のアプリ。病院探しから薬の処方、支払いまでが完結するスムーズさが特徴。
◆CARADA オンライン診療/カラダメディカ
https://telemedicine.carada.jp/
スマートフォンにて、公式サイトから新規登録またはQRコードでダウンロードし、アカウント登録する
医薬品の卸売企業とIT企業の合弁会社が手かけるオンライン診療システム。スマホだけでなくパソコンやタブレットからも登録でき、大きな画面で診療を受けることもできる。
◆CLINICS/メドレー
https://clinics.medley.life/
公式サイトやアプリストアからダウンロードしたアプリからアカウント登録する
オンライン診療システムの草分け的存在。予約、診療から処方までを完結できるほか、医療機関や病気を調べる機能も。アプリ利用料は無料。
◆リモートドクター/アイソル
https://remodoc.net/
公式サイトやアプリストアからアプリをダウンロードし、アカウント登録する
低用量ピル外来など、幅広い診療内容をカバーするオンライン診療専用アプリ。お薬手帳のアップロード機能やオンライン服薬指導が可能な近隣の薬局の紹介機能も搭載。
◆ファストドクター/ファストドクター
https://fastdoctor.jp/
公式サイトから直接日時などを予約
電話かWEBで症状を伝えると、適任の医師が車で往診に訪れ、在宅で検査や診察を実施。その場もしくは診療後すぐに郵送で薬が処方される。
進化している訪問診療
進化しているのはオンラインの世界だけではない。これまではがんの緩和ケアなど終末医療や、医師不足の地域を中心に展開していた訪問診療も、その幅を広げている。
東京都中野区で100人以上の患者に訪問診療を行う「みやびハート&ケアクリニック」には12人の医師が登録し、認知症やがんの緩和ケアから整形外科、眼科、メンタルヘルスまで、多彩な分野で高度な医療を提供している。同クリニック院長の渡邉雅貴さんが言う。
「月2回ほどの定期訪問が基本ですが、緊急時は24時間対応で往診します。担当医はかかりつけ医として患者の既往症や併存症を把握しており、採血や血液中の成分分析、心電図やエコー、酸素吸入など、一般病棟の緊急治療と同等の治療を在宅でも迅速に展開することができます」
治療だけでなく、眼科医による眼底・眼圧検査などの検診も受けることができる。コロナ感染を避けるための対策も万全だ。
「訪問時にはフェイスシールドや医療用マスク、感染防止ガウンの装着を徹底しています。当院には外来診察もありますが、外来と訪問診療の医師は完全に分業している。院内でコロナ感染者が出たとしても、訪問診療には影響が出ません」(渡邉さん)
電話診療で薬を処方
薬の処方においても、「新しい生活様式」が取り入れられている。これまでは高血圧や糖尿病などの慢性疾患がある場合、定期的に通院し、問診や診察を受けた後に処方薬を受け取るのが定石だった。
だが、現在は厚労省の通達によって、慢性的な持病の治療薬は電話による診察を受ければ処方を認められるようになっている。
「基本的には、ホームページの専用フォームなどを通じてかかりつけ医の電話診療を予約します。その後、通常の通院時のような問診を電話で受け、その内容をもとに担当医が薬の量や種類を判断します」(谷本さん)
診療が終わると、病院から患者の希望する薬局に処方箋がFAXなどで送られ、薬局から患者宅に薬が郵送される流れが一般的だ。こうした在宅医療の可能性はさらに広がっていくことが予想されている。
「中長期的には、スマホを使って患者にデジタル聴診器を貸し出して心臓の音を遠隔で聞き取ったり、自宅のテレビとつなげてのオンライン診療などが実現するかもしれません。医療機関からは『将来こんなことができるといいね』という意見をたくさんいただいています」(多田さん)
この波は内科疾患にとどまらない。専用のマウスピースとリモート治療のシステムを用いて行う「オンライン歯列矯正」など、新たな医療サービスがすでに出現している。
リモート医療の限界
便利な一方、注意点もある。渡邉さんは「リモート医療の限界を知っておくことが大切」と指摘する。
「医療を提供する側にもさらなる知識と経験が必要です。例えば患者が自覚している症状や不調はオンラインでも医師に伝えられますが、診察室に入ってくる様子や雰囲気など、対面しないとわからない情報はたくさんあります。最近も、高熱が続きコロナ感染を疑われて対面診療ができず、ほかの病院でオンライン診療を数回受けても症状が改善しなかった患者が、当院を受診したら重度の扁桃腺炎だった事例があります。早期に対面診療ができたら、この患者は重症化しなかったはずです」(渡邉さん)
症状によっては最初からオンライン診療を避けるべき場合もある。
「突然の頭痛や胸の苦しさ、強い腹痛といった症状はくも膜下出血や心筋梗塞など一刻を争う、命に危険が及ぶ病気の兆候の場合があり、必ず対面で医師の診察を受けるべきです。もし迷った場合は、オンライン診療で時間を浪費するより、早く医療機関を受診してほしい」(谷本さん)
自分の体を守れるのは自分だけ。うまく使って健康に過ごしたい。
※女性セブン2020年7月2日号
https://josei7.com/