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医者へ上手な気持ちの伝え方|診察時、患者も同じ時間の長さ医師と話すべき

 同じ治療なら、信頼できる医師のもとで安心して治療を受けたいものだ。そのためには医師の言葉を聞くのはもちろん、患者側から病状や要望を的確に伝える必要がある。

「患者と医師も生身の人間同士。大前提として、“相互に理解しようとする”ことが必要だと痛感しています。ある意味では恋愛と同じ。医師と患者、どちらか一方通行の“片思い”では治るものも治らなくなる」(東日本の総合病院勤務・匿名外科医)

 では、「手術を受けたくない 」「薬をのみたくない 」という感情はどうやって伝えればいいのだろうか。

診察室で医師が患者を診察し、看護師が見守っている

医師とのちょっとした会話が治療に影響することもある(写真/ピクスタ)

患者はHPなどで事前に情報を集めておく

 東京医療センター臨床研修科医長の尾藤誠司さんは、「相互理解できている理想的な状態」としてこんな具体例を挙げる。

「医師が一方的に説明をするのではなく、説明するときと同じくらいの熱意を持って患者さんの話を聞いているのかが重要です。時間にして、双方が同じくらい話しているのがいちばんいい状態でしょう」

 医師とある程度対等に話すには、患者も能動的に情報を集めることが必要だ。

「病院のホームページが強い味方になります。今はどの医療機関もだいたいはネット上で治療方針や医師のプロフィールとともに手術に長けた名医の存在や新薬の投与、新しい検査器具の導入など、その病院の“ウリ”を公開している。自分の病気にどんな治療法があるのかを調べるとともに、かかっている病院が何を得意とするのかをしっかり確認し、医師との対話にのぞむことをおすすめします」(医療問題に詳しいジャーナリスト・村上和巳さん)

「必要ですか?」はNGワード。医師に敬意を示す

 知識を得た結果、ムダな投薬や検査、手術を断りたいという希望が出てくることもある。

「断るときのポイントは『敬意を持っているように見せる』こと。医師はどうしてもプライドの高い人間が多い。たとえば『CTは必要あるんでしょうか』という言い方はNG。なぜなら、医師のフィールドに患者が入り込んでしまっているからです。これでは『素人が何を言う』とへそを曲げられてしまう可能性がある。

 同じ必要性を問う質問であれば、『私の腹痛は深刻な状況が想定されるのでしょうか』といった聞き方に変えましょう」(尾藤さん)

「薬なしでがんばりたい」「副作用が心配」など気持ちを正直に伝える

 また、検査や治療を受けたくない理由は隠さずに告げた方が、医師は味方になりやすい。

 島根大学医学部附属病院の医師・大野智さんはこうアドバイスする。

「たとえば『この時期の入院は子供の受験と重なるので避けたい』とか『お金の面で不安がある』などと具体的理由がわかれば、医師も患者さんと一緒に解決策を探ることができる。入院の時期をずらしたり、公的補助を調べたりして解決することもできるので、遠慮せず打ち明けてほしい」

 薬に関しても同様だ。「この薬、必要ですか」と言えば医師の機嫌を損ねる可能性があるし、「効かない」と訴えれば逆に増やされてしまうパターンもあるという。

「素直に『できれば薬はのみたくない』『なしでがんばりたい』『副作用が心配』など、のみたくない自分の気持ちを包み隠さず表現するのがいいです。『踏ん切りがつかない』など、先送りをうながす言い方も有効です」(尾藤さん)

 複数の薬が出る場合、種類を減らしてもらいたいときは、どうすればいいのか。

「もちろん病状によりけりですが、『今、この症状にいちばん困っている。これに対応する薬を優先的に出していただけませんか』という言い方をすればいい。それ以外の症状にはあまり困っていないことが伝われば、減薬につながります」(大野さん)

円満にセカンドオピニオンを受けに行く際に言い添える言葉とは

 手術や長期にわたる投薬など、治療に関して大きな選択を迫られたとき、他の医師の意見を聞いてみたくなることもあるはずだ。すでに「セカンドオピニオン」として一般的になっているが、それを申し出る際も注意が必要だ。

「セカンドオピニオンという言葉が独り歩きし、『別の治療法を探しに行ける』と誤解されているところがあるが、そもそも『今の医師のもと、治療方針にしっかり向き合うために、別の医師からも説明してもらう』という意味を持つものです」(大野さん)

 だからこそ、セカンドオピニオンを希望する際は「先生の治療を安心して受けたいからこそ」と言い添えることを忘れないようにしたい。「セカンドオピニオンは患者の当然の権利でしょ」という態度はもってのほかだ。

病院を変わりたいときは「ウソも方便」

 ただし、謙虚に依頼しても顔をしかめる医師であれば話は変わってくる。

「いまだにセカンドオピニオンを露骨に嫌がる医師はいる。それは患者を手放したくないエゴと、自分のところで治療を続けさせる自信のなさの表れとしか言いようがなく、そういった病院であれば、もう通院をやめた方がいい」(前出・外科医)

 担当医に見切りをつける場合であっても、けんか別れはNG。それまでの検査結果などの経過データを次の医師に引き継いでもらわねばならないからだ。

「先生と相性が悪く、どうしても病院を変わりたい場合は、ウソでも『夫が転勤になった』とか『孫の面倒を見ることになり、娘夫婦の家の近くで治療を受けたい』などと説明し、気持ちよく紹介状を書いてもらいましょう」(村上さん)

 医師に対しては正直であるべきが原則だが“ウソも方便”を使った方がいい場合もあるようだ。

※女性セブン2019年3月14日号

●病院とトラブらないための賢い患者の心得3つのポイント

●私ってモンスター患者?事例で学ぶ医師との付き合い方

●ポリファーマシー(多剤服用)の実態 その副作用と減薬対策

 

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この記事へのみんなのコメント

  • まゆみ

    大変参考になりました。

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