「リモート健康診断」が進化中!がん・高血圧・糖尿病もわかるキット|選び方
新型コロナウイルスの感染は免れたけれど、進行がんが見つかった──医学界ではいま、こんな患者が増えることが懸念されているという。その理由は、会社や自治体の定期健診が軒並み延期や中止の措置を取られているからだ。この未曽有の事態の中、自分の健康を守れるのは自分だけ。いますぐできる、在宅健診を一挙紹介。
涙を使って乳がん検査できる!?
涙を使って乳がんを検査できる技術を開発──。
5月下旬、神戸大学の研究チームが発表した画期的な最新技術は日本だけでなく世界中の注目を集め、中国の大手ネットメディア・東方網も「間違いなくすべての女性にとっての福音だ」と報じている。実用化は1年後とされているが、医学の世界は日進月歩。簡単かつ体に負担の少ない健診方法は日々、開発されているのだ。特にいま、注目されているのが、病院へ行かずに健診を受けられる「リモート健診」の存在だ。
新型コロナウイルスの感染拡大を防ぐため、会社や学校の「定期健診」は軒並み延期や中止になり、自治体が実施する「がん検診」も中断している地域が多い。ミッドタウンクリニックの理事で医師の森山紀之さんはこの状況に警鐘を鳴らす。
「確かに新型コロナは感染力が強く、実体も完全にはわかっていない恐ろしい病気です。しかし一方で、がんや生活習慣病で亡くなる人は、年間で70万人以上もいる。これらの病気を健診で早期発見できれば多くの確率で治療することができる。ですが、『来年こそ健診を受けよう』と先延ばしにしているうちに手遅れになることだってあるのです。最近は在宅で受けられるリモートサービスも多くあるので、メリット・デメリットを把握したうえで、うまく活用するといいでしょう」
それでは、どんな健診を選び、何に気をつけるべきなのか。
血液や尿を自分で採取して郵送する「健診キット」3万軒の病院がアフターフォロー
在宅で受けられる健診の代表は、血液や尿を自分で採取して郵送する「健診キット」だ。医師が電話で健診結果についての健康相談に応じてくれるアフターサービスつきの『おうちでドック』は、2017年11月にサービスを開始して以来、受診者は2万1000人を超えた。特に緊急事態宣言中、申込数は平常時の3倍にのぼったという。
同サービスを展開するハルメク・ベンチャーズ代表の松尾尚英さんが言う。
「数滴の血液と尿を採取して郵送し、がんや生活習慣病をチェックするサービスです。血液の採取は、指先に器具を押し当てると1.8mmほどの小さな針が自動で出てすぐ引っ込みます。小さな傷ができるので、出てきた血液をスポンジのついた器具で吸い取ります。採尿と採血を合わせて30分もかかりません」
採血に伴う痛みはほとんどない。調べたい病気や受診者の体の状態に合わせて7種類のキットが用意されている。女性に需要が高い『おうちでドック 女性用』の価格は、1万9800円。大腸がん、乳がん、子宮がんや、糖尿病、動脈硬化、腎臓や肝臓の疾患など、13種類の幅広い病気のリスクを調べることができる。
「郵送後2~3週間で、検査結果が郵送されます。その内容をもとに、電話やチャットで医師や看護師に相談することができます。全国で3万以上の医療機関の情報をストックしており、必要に応じて症状に合った医師を紹介することもできる。これらのサービスはすべてキットの料金に含まれています」(松尾さん)
なかには申し込みから検査確認まで、すべてスマホやパソコン1台でできるKDDIの『スマホdeドック』なるものまで。
そのほか、便を検体とする大腸がん検査や痰(たん)の採取から診断する肺がん検査など8種類ある日本医学の『郵送健診キット』も。一般的に、大腸がん検診と血液採取による生活習慣病の健診は推奨できると森山さんが推す。
「便の潜血反応から、大腸がんの可能性を調べる検査は、病院で行う検便と精度や内容はほぼ変わりません。特に大腸がんは女性のがん死亡率の1位で、そのうえ40代以降はリスクが高くなる。受診して損はないでしょう。指先から採取した血液でメタボリックシンドロームや糖尿病などの生活習慣病リスクを調べる検査も、病院と変わらないクオリティーと言って差し支えない」(森山さん)
【データ】
■おうちでドック/ハルメク・ベンチャーズ
https://dock.ouchide.biz/
価格:約7500~2万円
(※検査の種類により価格は異なる)
健診内容と特徴
乳がんや子宮がんなど、女性特有の病気に特化した「がん女性用」や、動脈硬化から痛風まで、あらゆる項目を網羅した「おうちでドック生活習慣病」など全7種類。検査内容に応じて少量の血液や尿を検体とする。結果をもとに医師にオンラインで相談ができる、無料アフターケアの手厚さが魅力。
購入先:公式サイトhttps://dock.ouchide.biz/
■郵送健診キット/日本医学
価格:2000~4500円
(※健診の種類により価格は異なる)
健診内容と特徴
10日以内に結果がわかるスピーディーさが魅力。痰や便を検体とし、糖尿病や肺がん、大腸がんなど、ピンポイントで疾患が調べられるセットが全8種類。クラミジアや子宮頸がんの検査もある。
購入先:公式サイトhttp:// www.jml-group.co.jp/igakuのほか、薬局やAmazonなどの通販サイト
■スマホdeドック/KDDI
https://www.smartkensa.com/
価格:
●生化学14項目検査セット/4980円
●胃がんリスクチェックABC分類/7980円
健診内容と特徴
中性脂肪や血糖値などの14項目を、採血によって調べられる「生化学14項目検査セット」と、少量の血液から胃がんの原因となるピロリ菌の有無や胃粘膜の状態を検査できる「胃がんリスクチェックABC分類」の2種類がある。
購入先:公式サイトhttps://www.smartkensa.com/のほか、Amazonなどの通販サイト
尿でわかる更年期障害リスク
病気に加えてアレルギーや栄養状態について調べることができるキットも幅広く販売されている。医療ジャーナリストの増田美加さんは、更年期の症状の緩和が期待される物質「エクオール」が体内でうまく産生されているかを調べる「エクオール郵送検査キット」を推奨する。
「エクオールには女性ホルモンのエストロゲンに似た作用があり、女性の更年期障害やアンチエイジングに効果があるとされています」(増田さん・以下同)
エクオールのもととなるのは納豆や豆腐などに含まれる大豆イソフラボンだが、体質によってはエクオールをうまく産生できない場合もあるという。
「摂取した大豆イソフラボンから体内でエクオールを産生できる体質の人は2人に1人といわれています。つまり約半数は豆腐や納豆を食べても、エストロゲンに似た作用は期待できないということです」
採尿だけで調べられる手軽さに加え、信頼性が高いことも魅力の1つだ。
「郵送の検診キットの中には、『がんの遺伝子検査』など、まだ信頼性が高いとはいえないものもありますが、エクオールについては製薬会社が調査した膨大なデータに基づくエビデンスがある。検査を受けて産生できないとわかればサプリメントを摂ればいい。実際に私も、受けたことがあります」
【データ】
■ソイチェックエクオール検査/ヘルスケアシステムズ
https://karadacheck.com/check-kit/soy-check/
価格:3800円
健診内容と特徴
採尿により、更年期障害の緩和が期待できる成分の「エクオール」が体内で充分に産生できているかを調べることができる。
購入先:Amazonや薬局など
12万人の医師に相談し放題のオンライン健康診断
ちょっとした不調や体の変化を医師に伝えることも病気の早期発見につながる。そんなときに頼りたいのが、オンラインの健康相談だ。
月額550円を支払えばチャットやテレビ電話で医師に直接相談できると人気なのは、『first call』だ。所属する医師は、小児科や眼科、産婦人科からがん診療科まで幅広く、全12科目に対応している。自分自身はもちろん子供の体調の変化など家族のことも相談できるという。
特に感染を避けたい妊婦向けのリモート対策もすすんでいる。北海道大学病院では家にいながら妊婦健診を受け、必要な処方を郵送で受け取る「オンライン妊婦健診・診療」を実施。胎児の心拍数と妊婦のお腹の張りをモニタリングできる特別な装置『iCTG』を活用し、胎児の健康状態をリモートで医師が確認する。罹患リスクを伴う病院や、通院のための公共交通機関を使う機会が大幅に減ったというメリットに加え、父親や兄姉など家族そろって胎児の心音を聞けるようになったことで、生まれてくる新しい家族への愛着がより深まったという声も多く上がっているという。
【データ】
■first call
https://www.firstcall.md/
価格:月額550円
健診内容と特徴
いつでも医師にチャット形式で直接相談が可能。医師が実名で答える。テレビ電話相談もある。
申込先:公式サイトhttps://www.firstcall.md/
リモート健診で早期の肺がんは発見できない
とはいえ、リモート健診には落とし穴もある。森山さんは「検査内容によって精度が異なるので、理解したうえで利用してほしい」とアドバイスする。
「例えば痰を採取して郵送する肺がんのリモート検診では、病院と違ってX線やCT検査を並行して実施しないため、早期の肺がんは見つかりにくい。また、肺の奥の方にできる腺がんなど、見つけることのできないタイプのがんもあります」(森山さん・以下同)
検体の採取を自分で行うため、失敗してしまうこともあるという。
「子宮の入り口付近をこすって自分で細胞を採取しなければならない子宮頸がん検診はうまく採れないこともあり、早期の頸がんは見つけづらい。自分で採血を行う血液検査も強く指を押さえたり時間がかかりすぎたりすると血液の状態が変化して、結果が正しく出ないことがあります」
また、同じ健診でも多種多様な会社からキットが発売されている。信頼できるものはどう選ぶべきか。森山さんは、申込書やホームページにある説明文がしっかり書かれているかどうかが、1つのチェックポイントになると言う。
「申込書の説明文が丁寧かつ、『この検査ですべてがわかるわけではありません』などと、注意書きが書き添えてあるところを選びましょう。逆に、『これさえ受ければ安心』『全部わかります』といった文言があれば、注意した方がいい。検査結果に“絶対”はない。こうした文言で売り込もうとする会社は医学的見地に乏しく、下手をすると、正確な検体検査を行っていない可能性もあります」
検査の結果に問題があったり、違和感があれば、後日、病院で精密検査を受けることも忘れずにしたい。
「残念なことに、企業や自治体の定期健診でも、大腸がんを調べる便の潜血反応が出たとしても精密検査を受ける人は、半分ほどしかいません。検査を受けて心配なことがあれば、その先の行動につなげてほしい。何もしなければ意味がありませんから」
とはいえ、コロナ感染のリスクを考えると、病院から足が遠のいてしまうもの。健診を受けるための医療機関を選ぶときは、何に気をつければいいのだろうか。
森山さんは病院のホームページをチェックしてほしいと話す。
「コロナウイルスの感染予防対策を詳細かつ具体的に書いてある病院は信頼できます。例えば当院では、内視鏡検査を行うスタッフは防護装備をつけて、毎回消毒している。医療機関のホームページに対策が書かれているはずなので、通院する前に見比べてほしい」
早期発見こそ健康長寿への道。「リモート健診」をうまく活用して健康な体で「ウィズ・コロナ」を乗り切ろう。
他にもあるリモート健康チェック
■VitaNote Quick/ユカシカド
https://vitanote.jp/
価格:500円(※期間・数量限定の商品)
健診内容と特徴
ビタミン、ミネラル、食事バランスの偏りなどを、尿から検査できる。尿を専用のテストペーパーに浸し、その写真を撮って検査機関に送るだけで調べられる。手軽さと安さが魅力。
購入先:「VitaNote Quick 500円」などのキーワードで検索し、特設サイトへ
■遅延型フードアレルギー検査/アンブロシア
https://www.ambrosia-kk.com/
価格:
●IgG食物過敏セミパネル(120項目)/2万9400円
●IgG食物過敏フルパネル(219項目)/4万1700円
健診内容と特徴
原因食物を摂取してから体に症状として表れるまで時間がかかるため、原因に気づきにくい「遅延型フードアレルギー」。その有無を、指先から採取した少量の血液から検査。検査対象の食物や物質の種類により価格が変わる。
購入先:公式サイトhttps://www.ambrosia-kk.com/のほか、Amazonなどの通販サイト
*価格は全て編集部調べ。送料別。
※女性セブン2020年6月25日号
https://josei7.com/
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