免疫力を鍛えるのは栄養バランス!|相乗効果発揮する食品の組み合わせとレシピ
免疫強化はがん患者にとって医療の要。がんサバイバーである私も、10年以上、地道に取り組んできた。とはいえ、1つの食品を食べて免疫力が上がるほど人間の体は単純ではない。食事、運動、ストレス軽減など生活習慣を正し、体のバランスを整えてこそ食品の栄養価値も高まる。
10年前に乳がんを患い、手術、抗がん剤治療、ホルモン治療等を行った本誌記者(59才・その後、再発なし)が、各種治療とともに真剣に取り組んだのが「食生活の見直し」。食事、運動、睡眠など日々の生活が、がん予防にいかに大切か、自らの体験を踏まえつつレポートします。
免疫力を高めるには、体全体の機能バランスを良好な状態にすること
「まずは体の正常な機能を阻害する要因を除去してから、足りない部分を食事などで補うことが大切です」
と、医師の福田一典さん。西洋、東洋の両医学を長年研究し、漢方を医療に取り入れてきた福田さんに、免疫力を強化するコツを聞いた。
――免疫について教えてください。
福田 免疫は、外部から侵入してきた細菌やウイルスなどの病原体や体内に生じたがん細胞などに対して攻撃を仕掛け、排除しようとする生体防御機能です。主にリンパ球という細胞が中心となってコントロールしています。リンパ球にはB細胞、T細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞などがあり、これらの免疫細胞の働きが弱まると、病原体に感染したり、がんが発生しやすくなります。
――ということはリンパ球を正常な状態に保つことが重要と?
福田 その通りです。栄養状態が悪かったり、ストレスや運動不足で血液循環が悪く新陳代謝が低下していると、リンパ球のT細胞の一部が抑制されることが知られています。このT細胞の機能が抑えられると、感染症やがんに対する免疫力が低下します。こうなるといくら免疫増強作用を持った食品や薬剤を大量に摂っても効果が出ません。ですので、まずストレスや運動不足を解消して血液循環を改善させ、リンパ球を作るもととなる“たんぱく質”が豊富に含まれている食事を摂る必要があります。たんぱく質を充分に摂り、運動をすると、エネルギー生産の中心的役割を果たす細胞小器官のミトコンドリアが活性化します。このミトコンドリアが増えることで、機能食品が身になり免疫力も上がってくるわけです。
――機能性食品でオススメなのは?
福田 腸などの免疫機能に働きかける“多糖類きのこ”は有効です。まいたけなどに含まれるβ-グルカンは、T細胞やNK細胞などにかかわる免疫細胞を活性化させます。ほかには免疫増強作用のある精油の多い柑橘類、ウイルスや細菌から体を守るサポニンを多く含む大豆製品、体の治癒力を高めるビタミンやミネラルの豊富な野菜や果物、抗菌効果の高いアブラナ科野菜やにんにく類。また漢方で生薬として使われる、血管拡張作用のある桂皮(シナモン)、体を温め発汗作用のあるしょうがや、解熱作用のある葛根なども効果があります。これらをたんぱく質と共に、偏りなく食事に取り入れることが大切です。
いま、ウイルスの情報過多で心のバランスを崩している人が多いかもしれません。ストレスはがんや感染症を悪化させる元凶。余暇を楽しんだり、おいしい料理を食べたり、心も良好な状態にすることも忘れてはなりません。
食品の相乗効果で免疫機能が向上
食品は相乗効果で威力を発揮するため、次に紹介する食品をバランスよく毎日の食事に取り入れることで免疫力が向上する。免疫機能が高い食品だからと同じものを多量に摂取すると逆効果。アブラナ科野菜に多いイソチオシアネートなどは甲状腺に害を与えたりするので注意したい。
●にんにく
血管を拡張して血液循環を活発にし、動脈硬化や高血圧などの予防に効果的。抗菌作用が高くがんやウイルス抑制にも有効。
●多糖類きのこ
・ひらたけ
・まいたけ
・なめこ
ほか、霊芝、ハナビラタケなどの多糖類きのこに含まれるβ-グルカンは、体内に入った細菌やウイルスを攻撃するマクロファージやNK細胞を活性化させ免疫効果を高める働きを持つ。きのこのβ-グルカン+精油の多い柑橘類+サポニンの多い大豆類の組み合わせが効果的。
●たんぱく質
・焼き麩
・卵
・鶏肉
・うるめいわし
ほか、納豆、豆腐、豚肉、かつおぶし、しらす干し、鮭、チーズなど、三大栄養素の1つ「たんぱく質」は、アミノ酸が多数結合した高分子化合物。筋肉や臓器など体を構成する要素として免疫力向上の要の食品。1日に必要なたんぱく質は成人女性50g、成人男性60g。
●精油の多い柑橘類
・仏手柑(ふつしゆかん)
・ジャバラ
・温州みかん
ほか、甘夏、伊予柑、レモン、グレープフルーツなどの精油の多い柑橘類には、果肉に腸内環境改善・免疫力増強の水溶性食物繊維、オリゴ糖、抗酸化・抗炎症作用のあるカロテノイド、抗酸化作用のあるビタミンC、果皮にがん細胞の増殖を抑制するリモネンなどを豊富に含む。
●アブラナ科野菜
・ブロッコリー
・キャベツ
・ルッコラ
ほか、カリフラワー、ケール、からし菜、クレソン、小松菜、白菜などのアブラナ科野菜は、ツンとする香りや辛みを出す硫黄含有化合物であるグルコシノレートの豊富な供給源。抗菌物質が多く、発がん性物質の解毒を促進し、がんや脳血管疾患、心血管疾患などの予防に有効。
●ビタミン、ミネラルが豊富な野菜
・ほうれん草
・にんじん
・かぼちゃ
ほか、ねぎ、白菜、トマト、きゅうり、レタス、玉ねぎなどの野菜は、ビタミンA、ビタミンC、葉酸、ミネラル(カルシウムや鉄)、食物繊維が豊富で、体の治癒力を高める働きを持つ。できるだけ多種類の野菜(栄養)を1日約400g摂るよう心がけたい。