西城秀樹さん闘病中の自宅改修と愛用した暮らしの道具【第4回】
第一子妊娠中に発症して以来たびたび起こった脳梗塞、そして指定難病のひとつである多系統萎縮症…。西城秀樹さん(享年63)を、次々と病魔が襲った。秀樹さんに寄り添い、共に闘ってきた妻の美紀さんに、家族の想いや向き合い方を伺うシリーズ4回目は、秀樹さんのために暮らしの中で工夫したこと、愛用していた品などについて教えてもらった。
→第3回:西城秀樹さん“病に負けない心”脳梗塞と多系統萎縮症に挑み続けた日々」を読む
「パパがいない2度目の冬だね…って、先日子供たちと話しました。哀しみというより、寂しさが増しているように感じます」
穏やかに語る美紀さんだが、柔らかな物腰の中に芯の強さを秘めている。闘病中の夫と3人の年子たちとの生活は、決断の連続だったという。
「寒い季節はとくに子供たちはしょっちゅう風邪もひくし、予防接種を受けていてもインフルエンザには1人かかるともう1人…。病気で免疫力が下がっている秀樹さんにうつらないようにと、それは気をつけました。インフルエンザにかかった子と秀樹さんがリビングで鉢合わせしないように家の中で交通整理です。そのかいあってか、彼はインフルエンザには一度もかからなかったです」
要介護認定を受け、介護保険サービスも利用した
度重なる脳梗塞の後遺症、そして多系統萎縮症によって右足が動きにくくなってしまった秀樹さんは、家の中の少しの段差でも転ぶことが多くなっていた。そこで美紀さんは、2017年の冬、リビングの階段に手すりを付けることを決めた。
「もともと、2014年の夏頃に介護保険の申請をしていました。そのときは、要介護1という認定を受けていましたが、翌年には、要介護2まで状態は進んでいました」
介護保険制度においては、要介護認定(要支援1・2、要介護1~5)を受けると、在宅で介護をする場合は居宅事業者と契約してケアマネジャーを紹介してもらい、介護サービス計画(ケアプラン)を立てることになる。
「ケアマネジャーさんと日々相談を繰り返す中で、手すりを設置することになりました。そのとき、住宅改修に介護保険を利用できると知りました。秀樹さんは介護保険を使わず自費でつけようと言ってたけど、わたしは利用できる制度は使うべきだと思っていました」
※編集部注:介護保険制度では、要介護者のために住宅改修を行う際、実際にかかった改修費の9割相当額が償還払いで支給される。支給額は、支給限度基準額(20万円)の9割(18万円)が上限となる。
「手すりの色やデザインは秀樹さんに選んでもらったんですよ。手すりの太さなど、にぎりやすいかどうかは、秀樹さんじゃなければわからないですから。彼が好きな白を選んだら、自宅の雰囲気やインテリアにもよくなじみました。
介護保険サービスを使っても、好みのデザインや色を選べるんです。素敵な手すりがついて階段が上りやすくなって秀樹さんも気に入っていたようで、私もうれしかったです。彼は、階段を上ることがリハビリのひとつになるので、手すりを持って一段一段ゆっくりと上がっていました」
「手すり以外にも、秀樹さんが暮らしやすい工夫をいろいろ取り入れました。秀樹さんは右足に力が入りにくかったから、ベッドの脇やトイレなど、しゃがんだ状態から立ち上がるときに、体を支えるためにつかむ棒があると便利なんです。そこで、部屋の各所につっぱり棒もつけました。これも専門の人に相談し、介護保険で福祉用具のレンタルができました。業者さんが定期的にずれていないか調整してくれるし、レンタルなので、不要になったら返却すればいいというものでした」
編集部注:福祉用具貸与、販売サービスは、介護保険制度の居宅サービスのひとつとして位置づけられている。要介護度によって、使用できる種目に制限がある。詳しくは、厚生労働省「介護保険における福祉用具」(https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/000314951.pdf)参照。
介護保険制度を利用するためには、市役所など住んでいる地域の役所に届け出ると、認定調査が実施され、要支援1・2、要介護1~5の7つの区分のいずれかに認定されることが必要。区分によって使えるサービスや支給限度額が変わる。
65才以上の人(第1号被保険者)は原因を問わず、要支援・要介護の状態で利用できるが、40~64才の人(第2号被保険者)は特定疾病で要支援・要介護になったときに利用可能となる。特定疾病とは、末期がんや関節リウマチなど老化に伴うもので、秀樹さんが抱えていた多系統萎縮症もこの特定疾病に含まれている(※厚生労働省「介護保険制度について(40歳になられた方へ)」より)。