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「もっと早く購入すればよかった!」認知症の母の介助や靴の抜ぎ履きが断然ラクになった《介護用シューズ》

 認知症の母を12年に渡り、遠距離介護を続けている作家でブロガーの工藤広伸さん。最期まで家で暮らしたいと願う母のために、さまざまなアイテムや知恵で工夫を凝らしているのだが、母は手足が変形する難病も抱えており、“靴選び”に苦戦しているという。しかしある靴に出合ってから変化が――。

執筆/工藤広伸(くどうひろのぶ)

介護作家・ブロガー/2012年から岩手にいる認知症で難病の母(81才・要介護4)を、東京から通いで遠距離在宅介護中。途中、認知症の祖母(要介護3)や悪性リンパ腫の父(要介護5)も介護して看取る。介護の模様や工夫が、NHK「ニュース7」「おはよう日本」「あさイチ」などで取り上げられる。著書『親の見守り・介護をラクにする道具・アイデア・考えること』『親が認知症!?離れて暮らす親の介護・見守り・お金のこと』(翔泳社)など。ブログ『40歳からの遠距離介護』https://40kaigo.net/、Voicyパーソナリティ『ちょっと気になる?介護のラジオ』https://voicy.jp/channel/1442

難病も抱える認知症の母の足に合った靴選び

 母は、シャルコー・マリー・トゥース病という難病を抱えています。手足の筋萎縮が特徴で、母の足は土踏まずが極端に凹んでいて、足裏が地面に接地する面積が少ないため、なかなか合う靴がありません。

 母が自分で見つけた靴をボロボロになるまで履き続けていたのですが、2013年の祖母の葬儀の際に、「こんな汚い靴で、葬儀に参加するわけにはいかない」と言うので、新しい靴に買い替えました。

 その靴を6年ほど履き続けたのですが、かかとのゴムがすり減ったので、新しい靴を探しました。しかし靴の種類を変えると、母が転びやすくなるのではないか、認知症の母は靴が変わるとことで混乱するのではないかと不安になり、履いていた靴と同じ品番をネットで必死に探して購入しました。

 結局母は、同じ品番の靴を11年も履き続けました。しかし、あることがきっかけでこの靴が履けなくなってしまったのです。

骨折がきっかけで新しい靴が必要になった

 そのきっかけとは、骨折です。母は実家の居間で転倒し、左足親指の付け根にひびが入ってしまったのです。包帯で足を固定した状態では、いつもの靴が履けなくなってしまったので、一時的にサンダルでデイサービスに通いました。

 すると、デイサービスのスタッフさんから「靴を替えるいい機会かもしれませんよ」と言われ、たまたまデイサービスの送迎車に乗っていた他の利用者さんが履いていた靴を見せてもらいました。

 その女性が履いていた靴は面ファスナータイプで、甲の部分が大きく開くので履くのも脱ぐのもラクそうです。特殊な足の形をした母には合わないと思っていたのですが、改めて介護用の靴について調べ始めました。

 まずは、福祉用具専門相談員さんから頂いた福祉用具カタログに掲載されていた介護用の靴の中から、母に合うものを選ぶことにしました。

 福祉用具カタログを読むと、介護用の靴ならではの機能がたくさんあって、目から鱗が落ちるような発見があったのです。

介護用の靴の特徴とは?

 介護用の靴の特徴として、靴ひもで縛るタイプは少なく、手間のかからないファスナーや面ファスナー、しゃがまずに足を滑り込ませて履くスリッポンなどの種類が多くありました。

 ファスナータイプは、スライダーと呼ばれるファスナーを開閉するためのパーツが小さく、手先の不自由な母には扱いづらいと考え除外。面ファスナータイプは、母が使い方を理解できないと思ったのですが、デイサービスや病院などで靴を脱ぐ際に、わたしや介護職の方が必ず介助するので、母が分からなくてもいいと思い候補にしました。

 またスリッポンタイプは、しゃがんだり立ち上がったりするのに時間がかかる母がラクになると考え、こちらも候補にしました。

 次にメーカーですが、福祉用具カタログの誌面に大きく載っていたのが徳武産業でした。この企業をネットで調べると、足や歩行の悩みに寄り添った靴を開発しているケアシューズ専門メーカーとのこと。

 片足だけの販売や、サイズ違いの左右セット販売など、細かいニーズに応える製品を展開していました。足の不自由な高齢者の中には、片足に体重を乗せて歩く人がいて、片足だけ早く靴が劣化するケースがあるようですし、左右の足のサイズが違う人もいるようです。

 他にもデイサービスや介護施設などで、他の利用者の靴と間違わないよう、新しい靴にネーム刺繍を入れるサービスもありました。

 こうした情報収集を行ったあと、最後に福祉用具専門相談員さんに相談したところ、徳武産業の『あゆみシューズ』は人気があるということだったので、面ファスナータイプとスリッポンタイプの2足を購入することにしたのです。

 購入する際、ワイズと呼ばれる足幅(足囲)を調べるよう相談員さんに言われたので、母が履いていた靴を調べると3Eと表記がありました。5E、7Eと数が増えるほど足幅が広くなるのですが、靴の試し履きをしてサイズ23.5、ワイズ3Eの靴を両足、購入しました。

もっと早く介護用の靴を買えばよかった!

 靴を購入して半年が経ちましたが、以前の靴と比べて履かせる時間は大幅に短縮され、母の歩行も問題ありません。面ファスナータイプは靴の脱ぎ履きの介助がラクですし、スリッポンタイプは靴を脱ぐ必要のない外出のときに重宝しています。

 ただ私が購入したスリッポンタイプは、母の変形した足ではスッと入らず、かかとの部分を手で広げて足を入れないとダメでした。それでも以前の靴よりもかなりラクに履けるので、買い替えてよかったと思っています。

 認知症の母を混乱させないために、11年も履き慣れた靴にこだわってきましたが、もっと早く介護用の靴にしておけばよかったと後悔しています。

 履きやすい靴なら、外出が億劫になることもないでしょうし、自然と活動量も増えて、元気でいられる期間が延びるかもしれません。

 皆さんも一度、親の靴を見直してみてはいかがでしょうか?

 今日もしれっと、しれっと。

【データ】徳武産業『あゆみシューズ』

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