86才&75才金沢発ご当地アイドルおばあちゃん元気の秘訣
亮さんは会社員として働きながら、休日の人手が足りない時などは力を貸してくれる。すっかり人気の一座となった劇団だが、一時期は解散寸前というピンチもあった。
「ちょうど劇団が軌道に乗り始めた頃、劇団員たちが『プロになる』と次々に脱退してしまった時期があったんです。歌や踊りがうまい人たちだったので劇団としては大きな痛手でした」(幸子さん)
そんな時、お世話になっていたレジャー施設『金沢サニーランド』(現在は閉館)の社長から1本の電話が入る。
「御供田にちょっと見せたいものがある」
そう言われて向かった幸子さんの目に飛び込んできたのが、翌日に同施設で公演を控えた梅沢富美男の姿だった。
「“下町の玉三郎”と押しも押されもせぬ大スターが、ほかの劇団員らと一緒に荷物を搬入していたんです。汗びっしょりになってね」
ただただ黙々と荷物を運ぶスターの姿に幸子さんは感動を隠しきれなかった。
「その時ね、社長がこう言ったんです。『よく見ておけ、あれが梅沢富美男だぞ』と。思えば、その頃の私は劇団の人気にあぐらをかいて少し天狗になっていた気がします。富美男さんの謙虚な姿勢から、初心にかえることができたんです。座長たるものどんな時でも奉仕の心を忘れてはならないと改めて学びました」
家族の協力、芸の先輩に学ぶ奉仕の精神。そして相棒、千秋さんや劇団員たちの支えがあってこそ、客を楽しませる舞台作りへと邁進できる。
誰よりも“今”この瞬間を楽しんで生きている幸子さんはこれからも人々に笑顔の花を咲かせるだろう。
写真/浅野剛
※女性セブン2020年1月16・23日号