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「見せかけの友人なんていりません」下重暁子さんが提案する新時代の生き方

「友達は財産」「人と人とのつながりを大切に」「みんな仲よく」──私たちは小さな頃からこんな言葉を耳にしてきた。しかし、今やそれは“呪い”となって私たちを縛りつけているようだ。

 人と人とのつながりが希薄になった、といわれる現代社会で、より強くなった“つながり信仰”と、幅広い世代に浸透したSNSによって、“人とのつながり”から抜け出せなくなってしまっている人への、極上メッセージ。

→波乱万丈を生きる先輩から~50代のあなたへ~【下重暁子さんインタビュー】

つながりから離れる時間を恐れない

 知人がどこに旅行したか、誰と食事したか、知りたくもないのに知ってしまう。学生時代の友人の夫のこと、子供のことなどプライベートも耳に入ってしまう。友人たちが楽しく集まっていると、自分はその輪からはみ出していないか気になる――。

 離れて暮らす家族や友人の動向がすぐわかるほど“つながっていること”に、不自由を覚え、生きづらさを感じ、解放されたいと思う人が増えているのではないか。

 2018年、最も売れた(※「2018年間ベストセラー/新書ノンフィクション部門」日販・トーハン調べ)新書『極上の孤独』(幻冬舎)は、まさにそうした多くの人の深層心理を代弁している。

 著者・下重暁子さんが、今の時代だからこその「孤独の大切さ」「つながらない生き方」を語ってくれた。

 * * *

──友達との大切さや、人とのつながりが重要視される一方、イジメやママ友とのトラブル、職場の人間関係などにストレスを抱える人が増えています。

「孤独と聞いてどんなことを思い浮かべるか。孤独死、孤食、ひとりぼっち、など負のイメージを抱く人はとても多い。でも、そもそもそうしたイメージが間違っていると思います。孤独こそ“本当に豊かな時間”であり、私たちが生きていくうえで必要な時間です。私は幼少期に結核にかかったことで小学2年、3年とほとんど学校に通っていませんでした。家でずっとひとりで過ごしていたんです。それでもさみしいなんてこれっぽっちも思いませんでしたよ。窓の外を眺めたり、本を読んだり、自分だけの時間を楽しんでいましたから。

 つながりの大切さや、友人の大切さよりも、ひとりでいることの愉しさを先に覚えたのです。アナウンサーとして入局したNHK時代もそうでした。同僚たちはみんなでお茶したり、食事したりしていましたが、私は参加したことが少ないし、おしゃべりもほとんどしませんでしたね。9年間在籍していましたけど、ずっと“変わり者”だったんです(笑い)」(下重さん、以下「」同)

──学生時代の友人、勤め先の同僚、ママ友、ご近所づきあいなど、その時々のつながりもありますが、年を重ねると、同窓会などの機会も増えてきます。

「現代社会において、つながりは常に私たちを追いかけてきますが、距離を置くことはそう難しくはないはずです。同窓会などの案内は私も多くいただくけれども、ほとんど参加したことはありません。NHKのOB会からお誘いもありますが、昔はこうだったよね、という思い出話か、今のマスコミは…なんてエラそうに話したりするだけでしょう(笑い)。楽しいですか?」

“つながり”に縛られやすくなった時代

──SNSの発達などで、つながりが可視化されたり、グループ単位でのやりとりが容易になったことで、“友達の数がどんどん増える”“常につながりの中に置かれている”という環境になりつつあります。

「私にも大切な友達はいます。学生時代の同級生や、NHK時代の同僚など、会いたいと思う人はいますよ。そういう友達とは個人的に連絡を取り合っています。でも、何時間もおしゃべりしたり、しょっちゅう食事をしたりということではないですね。

 極めて親しい友人に、作家の黒田夏子さんがいます。早稲田大学時代からの友人ですが、その頃は一緒に食事したことはないし、プライベートのこともよく知りませんでした。電話もしないし、いつもハガキでやりとりするだけです。でも彼女が75才で芥川賞を受賞するまでの間、すべてを“書くこと”に費やしてきたことはよく知っている。孤独という共通項があるからか、どこか同じ“ニオイ”を感じ、尊敬すべき才能と努力がある。大切な友達です。そういう友達はそんなにいりません。

 長々と世間話をするのが友達でしょうか。昔話を延々とするのが友達でしょうか。四六時中連絡を取り合うのが友達ですか? 私はそうではないと思います。大切な友達は1人か、2人、数えられるくらいいればいい。数の多さはちっとも重要じゃないはずです。

 人間関係にストレスを感じたり、息苦しさを覚えたりするのは、本当に一緒にいたいと思う人ではないからです。なんとなく集まっているママ友、同級会など、惰性といっては失礼ですが、積極的に会いたいと思っていない人と過ごせば、疲れてしまうのはごく当たり前のことだと思います」

「友達が少ないこと」は引け目どころか誇り

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この記事へのみんなのコメント

  • あ〜や

    一人暮らしなって25年になるかなぁ 淋しいと思うと一層淋しくなる時期もあったけど今は一人暮らしがいいと思う。読みたい本を時間を忘れて読めるし見たいテレビがあれば好きに見れる。群れるのは子供の時から苦手だったような?友人と食事などたまに行くのは楽しいしカラオケも(コロナから行ってない) 映画もひとり、美術館や博物館もひとり 帰りにお茶してデパ地下でお気に入りの惣菜を買って夕食。至福の時間独り占め。 マンション住まいなのでご近所さんとは挨拶ぐらい町内会などないし。友人と友達とは少し違うような? 友達は年齢や境遇は違うけどなんか価値観が似てるような。 友人は価値観など関係なく楽しい時間を供用できるかな。 私は友達はひとり(彼女はしらないかな)重く感じられるとイヤだから。 友人は何人かいるし孤独感はない よく一人暮らしで淋しくないと聞かれるしマンションなど誰に残すのなんて余計なお節介する人もいる。心配しなくてもあなたには残さないしあげないから(笑) 強がりでもなく一人暮らし楽しんでます♪

  • 年輪

    友達は要らないとは思いません。 自分の中に〈元気にしているかな?会いたいな〉とおもう人がいることは、私にとって心の元気に繋がります。どういう関係が友達なのかは、人それぞれでいいと思います。 うるさいけど憎めない人、優しそうだけど意地悪な人。付き合いの中で分かってきますので、自然と交流がなくなったり、優しく続いたり。友達を持つべき、持たないと決めることこそが煩わしいように思えます。

  • デラシネ

     私は人間関係に悩むことはありません。いいか悪いかは別にして悩みになるほどの人間関係を誰とも築いてないからです。 会いたいとか話をしたいとか思う人も姉以外にいません。それを寂しいなんて思ったこともありません。 人付き合いは煩わしいだけですから孤独だとも思ったことはありません。 他人に関心が持てないのです。 人に自分をさらけ出すことは嫌だし人の内面にも立ち入りたいとは全く思いません。 人にどう思われようと全く気にしないし気を使いたくもありません。 距離を保ちたいから深入りして嫌な思いをすることもありません。 若い頃から大勢の中にいることが苦手で人間嫌いかもと思ったことがありますがますますその傾向は強くなってきましたが苦にも思いません。 触れないで私の心に。それが真情です。

  • イチロウ

    私は、長年の親友達と数年前に死別し、爾来孤独です。   新築の家で共に暮らしていました亡母は、夕食時に私の面前で倒れました。 業務で訪れた地で買い求めた京菓子を食後の茶菓子にするつもりでしたが、冷蔵庫の中で干からびてしまいました。 数か月の闘病後に亡くなったからでした。 亡母亡き後、今日まで20年間を一人暮らしです。 両親からの相続財産(僅かでしたが)を暫くは管理し、金銭を妹と弟に配り、数年後に相続した不動産を処分し、やっと面倒な仕事から解放されましたが、自分の職業と相続財産の管理とで神経を使い紛争にも巻き込まれ疲労困憊したものでした。 でもそうした面倒は、自分の学業であった法律学が解決してくれました。 加えて、私の最大の味方であった愛猫でした。 自宅に帰れば、喜びの声をあげて駆け寄る長男猫に自分のストレスが全て雲散霧消されるようでした。  長男猫が亡くなった後は、あの仔は神になって天上に居るのだ、と思い自宅の各部屋に長男猫の写真を拡大し額縁に入れて飾っています。 各部屋に入ると、額縁の中から少し鼻にかかったような甘い長男猫の声が聞こえるようです。 その度に、待っててね~、もう少ししたいことがあるからね~、そしたら其処へ行くからね~、と言い聞かせています。 ニッキ様、うつ病は治ります。 私の友人も知人も、何人もがうつになり、治りました。  私自身は、症状が体に出ました。 逆流性食道炎です。 ストレスからでした。 職場で労組の役員をしましたのでその報復が度々あり、加えて親族に問題を抱えた者が居ましたので苦労したのでした。 それらの問題は、法律が解決してくれたのですが、精神的な問題は、法律で解決出来なかったのでした。 当然ですが。 長男猫が居なければ、辞表を出し、全てを放擲して自宅に閉じこもっていたことでしょう。

  • ニッキ

    私は56才の独身です。 16年前に最愛の母が亡くなってから、一人暮らしです。姉が嫁いでからは16年間、母と二人暮らしで、お互いに無くてはならない存在でした。母は中途失調だったので、余計いつも一緒でした。そんな母は特別な病気がないのに、私の目の前で突然倒れ、意識が戻らないまま翌日亡くなりました。私はショックのあまり半狂乱でした。 その時から私は独りになりました。しばらくは姉宅にいましたが、自宅に戻ると母の気配がして辛いので、会社帰りにカフェなどで時間を潰し、なるべく遅く帰るようにしていました。そしてうつ病になり、会社を休職しても、復職出来ず退職となりました。自宅にいるのはあまりに辛いので、試しに休職中に近くのアパートに移り住みましたが、あまり変わりませんでした。結局自宅を売却し、今もそのアパートに一人で住んで、クリニックに 通い薬を飲んでいます。 前置きが長くなりましたが、下重さんは健全な人を前提に仰っしゃっているのでしょうか?私は嫌でも独りになってしまいました。愉しむなんてとても出来ません。病気を知っている人は疎遠になり、知らない(敢えて話さないので)人は、私が独身なのに継続的に働いていないこと(うつ病故にまともに働けない)を不思議に思うのか、長続きしません。 自ら集団を離れ、厄介ばらいして、一人の時間を大切にする。きっと下重さんには黙っていても人が寄ってくるのではないでしょうか。でも私にはほぼいません。気にかけてくれるのは姉家族ぐらいです。たまに友人一人くらいです。今の私は、表面だけでも話したり食事したり出来る人が欲しいです。働かず、家に籠っていると、一日中誰とも話さない時もあります。そうすると、誰も私のことなんて頭にないと思い、すごく孤独を感じます。生きる意味があるのかとも思います。 集団から抜けるのは、参加しないなどすれば 比較的簡単だと思いますが、友人が欲しくても、既に出来上がっている集団に入っていくのは容易なことではないと思います。 一人になりたい人、なりたくない人。 私はやはり自分の家族が欲しかったです。 無い物ねだりでしょうか。私のような状況の人は、孤独とどう付き合っていけば良いのでしょうか? 孤独をアピールする訳ではありませんが、マザーテレサの言葉が身にしみます。ご存知かもしれませんが。 この世で最大の不幸は、戦争や貧困などではありません。人から見放され、自分は誰からも必要とされてないと感じること。 愛の反対は憎しみではなく、無関心です。世界で一番恐ろしい病気は孤独です。

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