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暮らし

86才&75才金沢発ご当地アイドルおばあちゃん元気の秘訣

 お婆ちゃんコントは台本なしの出たとこ勝負。アドリブとは思えない絶妙な間合いでテンポよく進んでいく。

「ネタ集めでよく利用させてもらっているのが、近所のスーパーの中にある洋食レストラン。いつもお年寄りが集まってきては嫁姑関係やら孫の話、病院に通院している話なんかで盛り上がっているんです。年寄りネタには格好の場所だし、買い物もできて一石二鳥なんですよ」と幸子さん。

 近頃では「御供田さん、こんな話があるんだけど、ネタにならない?」と、常連客たちがあれこれと実話ネタを持ち込んできてくれるという。

 また、現在人気急上昇中なのが「バタ子ちゃん」。幸子婆ちゃんの孫という新キャラだ。軽快なトークの最中、「幸子婆ちゃんも使ってるよ~。はい、あげる~」と、ランドセルから尿漏れパッドを取り出してお客さんに配布。高齢女性の気になるお悩みもドッと笑いへと変えてしまう。

「笑いは元気の源。長寿にも繋がるといわれています。解決できないようなことはクヨクヨ悩んだってしょうがない。それなら笑って楽しく一日を過ごす方がよっぽど人生を充実させられると思います」

 そう話す幸子さんの心には、ある思いがあった。

「30年前、あるお客さんから言われたんです。『御供田さん、今日も満席だったけど、もしもお客さんが私ひとりになっても舞台を続けてくれる?』と。その女性の年齢はおそらく80代半ば。『お婆ちゃん、家にいないでどっかに出かけてくれる?』と家族から邪険にされ、家に居づらいご様子でした」

 自分の公演を観に来てくれる間ぐらいは、せめて現実を忘れ、腹の底から笑ってもらいたい。客がたとえ1人しかいなくても、その人のために舞台を続けよう―-その時、そう決めたという。

幸子と千秋のショートコント

金沢弁で繰り広げられる、幸子婆ちゃんと千秋婆ちゃんのショートコントを再現します!

「題・病院」

千秋(以下、千) おまえさん、息災やったかいね?
幸子(以下、幸) 元気やけど、この間、ウラは医者に行って検診してもろうてきた。
千 ほ~。そやったかいね。
幸 昔はこうしてな(千秋の胸に聴診器をあてる仕草)、ほして先生の指でコンコーン、コンコーンってしてくれたもんや。アレを楽しみにして行ったけど、今は全然!
千 年寄りはしてあたらんのか。
幸 せんよ! 今じゃ。この日のためにせっかく真っ赤なブラジャー買うてつけて行ったのに…。
千 あり~ぃ、残念なぁ~。
幸 ところでちょっと喉が渇いたさけ、お茶でもすっか。
千 そうやそうや、紙コップもあるし飲みまっしね。
幸 あれ、おまえさん、白いコップになんで目盛りが入ってるの? こりゃ、病院の紙コップと違うか!? 
千 あり~ぃ!
幸 しかし病院はいいぞー。行けば知り合いがみんな集まっとるし、テレビはタダで見放題や。一番ええのは急に具合が悪うなっても病院さけ、すぐに診てあたるやろ。
千 なるほどなぁ~。
幸 これが家にひとりでおってみまっし。見つけてもらうのに時間がかかって、病院へ運んでもらうまでに延々と時間がかかる。
千 確かにその通りやなぁ。
幸 その点、病院にずっとおれば、いつ倒れたって安心や。みんなとしゃべっとれば元気も出る。
千 あんたは、そんでいつも元気ながやねぇ。そやけど、人間、最期はどうなるかわからんけどねぇ。ウラも寝たきりになるがないか不安ながや。
幸 まあ、周りに迷惑かけるんじゃないかと不安かもしれん。そやけど、そうなることも神様のお導きかもしれんぞ。クヨクヨ悩む必要はない。寝たきりでもええがいね。それも一生懸命、生きてきた勲章や。 

家族や仲間、芸の先輩に学んだ奉仕の心を忘れずに

 幼少期より病気がちだった幸子さんは、もともとは人前でしゃべるのが苦手だった。

「笑ったこともないような子だったんです。人生が180度変わったのは、多分、18才の時。腎臓病で医師から“余命4か月”と宣告されたんですが、奇跡的に治ったのです」(幸子さん)

 一度は失いかけた生命。これから先の人生は、人の役に立てる生き方をしていきたい…。しかも、好きな歌と踊りで世間に恩返しができるのならこんなにうれしいことはない。そう思って、地域の老人会などでボランティア活動を続けてきた。だが、当時の幸子さんは家事に子育てに、私生活が慌ただしかった。夫の昭さん(82才)は幸子さんに条件を出した。

「(36才で)劇団をやらせてもらう時、夫から言われたのは、『朝昼晩の食事は必ず作ること』。いくら忙しいからといって、店屋物などで子供に寂しい思いをさせることは認めないぞと念押しされました。好きなことをさせてもらうのだから、この約束は365日ずっと守っています」(幸子さん)

 6つ年上の昭さんは真正直で頑固な昔気質。表立っては口に出さぬものの、ふたりっきりの時、「お母さんはよく頑張ってて偉いなぁ」と、そっと功績を認めてくれる。

「それが私にとっては一番うれしい。みんなの前では決して言わないけれど、夕食後、一緒にいる時にほめてもらうと気持ちがホキホキってなるね(ホキホキ:金沢弁で「ウキウキ」の意)」(幸子さん)

 以前は、休日に行われる舞台の照明係も担ってくれた。

「深夜のラジオで演歌の新曲をチェックしてくれて、『おい、あの演目に合う曲が流れていたぞ』と、曲の題名とレコード会社を教えてくれたりもしました」(幸子さん)

 結婚して48年。長きにわたる夫婦生活のなかでは離婚の危機に直面する場面も幾つかあった。幸子さんが言う。

「一度、劇団のことで言い合いになってね、お父さんを私がなじったことがあるんですよ。それはもう激高しましてね。柱に頭をゴーンとぶつけられちゃって(苦笑)。あの時は目から日産自動車がゴーン、ゴーンって飛び出すかと思ったわ(笑い)」

 普段は口ごたえすることのない幸子さんだが、劇団の話になるとついつい熱くなる。この時もそうだった。

「別れを切り出したこともありますよ。けど、決まってお父さんがそこで言うのは『ワシはいい』。この言葉は都合がいいねぇ(笑い)。『ワシはいいけど、子供は一体どうするんだ』ってね。で、自然と丸く収ってしまうのね」

 次男の亮さん(41才)のサポートも大きいという。

「次男には、小学6年の時に『浪花扇太郎』の芸名で初舞台を踏ませました。『頑張ったら自転車を買ってあげる』とあの手この手でね(笑い)」

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コメント

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この記事へのみんなのコメント

  • 昭女時代舞踊団

    私達も、たった4人の舞踊団で色んな老人ホームの慰問をしておりましたが コロナで3年間活動を中止、体力気力もすっかり萎えていた所へ、この記事を知り、又頑張ってみようかな・・と、勇気づけられました

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