86才&75才金沢発ご当地アイドルおばあちゃん元気の秘訣
北陸の地、石川県金沢市。ここに地元で知らない人はいないといわれるほど有名な大衆演劇一座がある。その名も『花幸会 御供田(ごくでん)幸子一座』。
なかでも座長の御供田幸子さん(75才)と劇団員の丸山千秋さん(芸名・浪花千秋・86才)が繰り広げるお婆ちゃんコントは、お年寄りからの絶大な人気を誇り、今やCM出演数4本に、新聞・雑誌のコラム連載と、各方面で大活躍。
「電話で“オレオレ”と言われたらそのままずっと家におれ!」
「年いってからね、耳も目も遠くなったけど、小便だけは近うなる」
時事ネタから下ネタまで愉快なコントで人気の大衆演劇一座。多くの人を魅きつける、お2人に“健康”仕事“笑い”など、元気の秘訣を聞きました!
年間200公演の大衆演劇で客のクレームをチャンスに
「南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏…」。腰を90度に曲げ、乳母車を押しながら、健康ランドの大ホールの舞台に2人が登場すると、待ってましたとばかり、会場に拍手が巻き起こる。毎回、愛嬌たっぷりの金沢弁で、時事ネタから下ネタまで、毒舌まじりにコントを展開。大爆笑をさらいつつ、時折はさむ金言には思わずホロリとさせられる。
劇団は1981年に幸子さんがひとりで立ち上げた。当時、36才。「家にじっとしていられないタイプ」という幸子さんが大好きな歌と踊りを老人ホームで披露したのがそもそもの始まりだった。
「ボランティアとして老人ホーム等で慰問活動を行っているうち、徐々に劇団員が増えました。最近ではようやくセミプロと言ってもらえるぐらいには成長したかな」と幸子さん。
お婆ちゃんコントが誕生したのは1994年。劇団立ち上げから10年以上後のこと。
「ある日、いつものように千秋さんと他愛もない話をしていたら、たまたま居合わせたテレビ局のかたから『面白い!舞踊と歌謡ショーの間にコントとして入れてみてはどう?』と言われたんです。それがきっかけ。でも、最初のうちは私、イヤでイヤで仕方がなくてね…」(幸子さん)
変なプライドが邪魔をした。40代で老婆を演じることに抵抗を感じた幸子さんは床に突っ伏して泣きじゃくった。取材時、横で聞いていた千秋さんがクスッと笑いながら言う。
「なだめてねぇ(笑い)。私はお得意の下ネタでお客さんに喜んでもらえるならこんなうれしいことはないって思ったんですけど」(千秋さん)
でも、いざとなったらとことん役になりきるのが御供田流。羞恥心を捨て、モンペにほっかむり、顔にしわを描いて役になりきった。ところが、今度はこんな問題が浮上する。
「ある時、公演終了後に楽屋を訪ねてきた高齢の女性客から『あてつけか!』って言われてね。農業を営まれているかただったんですが、『どんなお婆ちゃんコントをやるかと思って楽しみにしていたのに、私たちの野良仕事を馬鹿にしているのか!』と。私たち年寄りにもっと夢を見させてくれるようなお婆ちゃんコントをやってくれってお叱りを受けたんです」(幸子さん)
この経験を経て以降、白塗りに結い上げた白髪、きちんと着こなした着物姿という現在の姿になった。
「あの時に言われた言葉があったからこそ今のお婆ちゃんコントが成立した。クレームはチャンスになるんだと気づかされました」(幸子さん)