万病の予防に唾液!簡単にジュワッと出す「あご押し」法
ガムを噛むことは、海馬の働きが活性化し、認知症や脳梗塞、糖尿病ははたまたダイエットにも効果があるといわれている。そうした研究も最近されている。それでは、日々の生活でどのように「噛む」と、より効果的なのだろうか。
1日1粒“ガム噛み習慣”がおすすめ
認知症予防の神経細胞に関する科学的な研究を行い、噛むことと認知症の関係性について調査している、医学博士の小野塚實さんがすすめるのは、“ガム噛み習慣”。
適度な硬さの好みのガムを1日に数回噛む。これなら時間や場所の制約をあまり受けず、家事の最中や移動中などどこでも手軽に行える。
一般的に、ご飯1口を食べる時の咀嚼回数は約41回。だが、ガム1粒(1枚)を約10分噛むと、約550回噛むことができる。これだけで、脳が生き生きと活性化するとあって、実に簡単だ。
またガムを噛むと、口角周りの筋肉をはじめ、表情筋をよく動かすので、顔がスッキリして、表情も豊かになる。ガムを噛む時は、自分が好きな味、硬さのものを選び、ゆっくり、しっかり意識して噛むことが大切だ。
左右の歯でまんべんなく噛む
「“噛もう”と意識することで、脳はより刺激を受けて活性化します。その際、片側ばかりで噛まずに、左右の歯でまんべんなく噛む方が、脳に送られる情報も多くなります。長く噛むほど脳が活性化されるわけではなく、私の実験では、しっかり意識して噛めば、約2分で脳は活性化されました。むしろ気をつけてほしいのは、嫌になったらやめること。無理して噛み続けると、脳がストレスを感じ、逆効果になってしまいます」(小野塚さん)
また、リズミカルに噛むと、快楽ホルモンと呼ばれるドーパミンやセロトニンの分泌が促進されるため、憂鬱な時やストレスを発散したい時、集中力を高めたい時などにガムを噛むのもおすすめだ。
食事を摂る際は、視覚、聴覚、嗅覚、触覚、味覚の五感を刺激するように心がけると、噛んでいる間に脳にさまざまな情報が送られ、さらに脳は活性化する。
【五感を刺激する食事】で脳を活性
●色のバランスを考える
トマトの赤、きゅうりの緑、卵の黄色など、さまざまな色の食材を使って華やかに調理すると、脳に視覚情報が多く送られ、目でも楽しめて、よい刺激になる。
●硬い、軟らかいを組み合わせる
口の中でとろりと溶けるステーキ、パリパリしたお漬け物、ふわふわのパンなど、食感にバリエーションを出すことで、触覚をそれぞれ刺激する。
●料理が映える器を選ぶ
料理、器、テーブルクロスなど、食卓をコーディネートする際に色の組み合わせをあれこれ考えて、脳を刺激する。器をカラフルに彩れば、視覚情報も多くなる。
●甘味、辛味などいろいろな味つけに
甘い、辛い、酸っぱい、しょっぱい、苦いなど、五味が複雑に絡んだ料理の方が一度にさまざまな味を舌で感じて、脳が受け取る情報量はグンと多くなる。
●温かいメニューを1つは入れる
冷たいサラダに温かいスープなど、料理の温度を変えて触覚を刺激。温かい湯気の立つ料理を1皿でも加えれば、湯気にのって香りも広がり、嗅覚も刺激できる。
●家族みんなで食事をする
五感すべてを使ってより多くの情報を脳に送った方が、海馬が強く刺激される。しっかり意識して噛みながら、話したり笑ったりすると、より脳が活性化される。
唾液は天然の万病予防薬
噛むことによって分泌される「唾液」は、天然の万病予防薬だと、延べ60万人の患者を診てきた、竹屋町森歯科クリニック院長の森昭さんは話す。
「唾液が不足すると、口内で虫歯菌や歯周病菌が増殖してしまいます。それが血管を通って全身に広がり、細菌の老廃物が血管にたまって、脳梗塞や心筋梗塞、動脈硬化などの病気を引き起こします。
なかでも脳出血型認知症は、脳梗塞や脳出血が原因。アルツハイマー型認知症も、脳に付着した歯周病菌による影響もあると解明されています。
現在、40代以降の80%の人は歯周病にかかっているといわれています。普段からよく噛んで唾液を充分に出せば、さまざまな病気の予防にも繋がるんです」(森さん・以下同)
食後すぐは良質な唾液がたっぷり出ており、優れた自浄作用があるため、すぐに歯を磨いて洗い流してしまうのはもったいない。ガムを噛んで唾液を充分に出し、自分の唾液で口内を洗浄するとよい。
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