《介護施設の口コミサイトはなぜない?》東大卒の起業家、森山穂貴さんが語る介護業界の課題「“しんどいアピール”ばかりしていても未来は明るくならない」
「介護業界を変革したい」と、東京大学在学中に起業し、介護事業の運営・プロデュースなどを手がける森山穂貴さん(23歳)。現状の介護サービスにおいて「介護が必要な当事者も家族もモヤモヤしている状況だ」と語る。日本の介護に明るい未来はあるのか。新著『未来をつくる介護』を上梓した森山さんにその思いを聞いた。(全3回の第3回)
◆EEFULホールディングス代表取締役・森山穂貴
もりやま・ほだか/EEFULホールディングス代表取締役。2002年生まれ。東京大学社会心理学研究室在籍(2026年3月卒業予定)。介護事業のデジタル化や持続可能なケアシステムの創造を目指し、東京大学在学中にスタートアップ企業を設立し、介護事業の運営やプロデュースなどを手がける。新著『未来をつくる介護』(クロスメディア・パブリッシング)。介護情報ポータルサイト「EEFUL DB」https://www.eeful-db.com
親を介護施設に入れるのは「悪」という風潮
――介護施設の不足や費用的な問題から、在宅介護を選ぶ人も多いようです。
森山:日本では、まだまだ親を施設に入れることは「親不孝」で、子供の側も家で見てあげたいという気持ちが根強いと思います。近年は、独居の高齢者も増えていますよね。結婚しない人や、結婚しても子供を持たない人も多いですし、結婚していても先立たれて単身世帯になる。子供がいない場合は、意思決定をする親族も見つかりにくい状況になります。
こうした社会的背景から、今注目しているのは「定期巡回・随時対応型訪問介護事業※」です。在宅でも誰かが見守ってくれる環境を作る役割として効果的で、将来性があると思っています。
※訪問介護スタッフ・訪問看護師が自宅を定期的に訪問し、月額制、24時間対応の介護サービス。
――介護施設や事業所は、さまざまな種類があり、選び方が難しいと感じます。
森山:介護という分野においては、情報の非対称性が高いと思います。たとえば、飲食業界なら口コミサイトはたくさんありますが、介護業界にはそうしたものがなく、10年ぐらいネット戦略が遅れていると思います。
そもそも介護サービスを選ぶには、現状ケアマネジャー(ケアマネ)を通さなくてはなりませんよね。介護のプランをアレンジできる権限をもっているのはケアマネだけですが、サービスの良し悪しや口コミなど詳細まで把握しているとは限りません。
さらにサービスの利用方法をちょっと変更したいとき、たとえば「介護スタッフの訪問時間を30分ずらしたい」というだけでも、ケアマネの許可をとる必要があるケースもあります。子供の保育園や習い事を選ぶときにアレンジャーとかいないじゃないですか。介護保険サービスの制度はやはり特殊な構造だと思います。
ケアマネ自体、なるまでに時間がかかること、高年齢化や人材不足という問題もあります。
介護施設や介護サービスは、利用する方、ご家族双方が納得したうえで選ぶことが大切だと思います。介護情報ポータルサイト『EEFUL DB』https://eeful-db.comには、施設情報も掲載していますが、口コミ機能もありますので、活用していけたらいいと思っています。
やはり実際の経験談には価値がある。食事やケア、サービスの質について、現場のリアルなことが一番参考になると思います。
――今後の展望「介護の明るい未来」を構築する上で、大切にしていることはありますか。
森山:介護に関わる人たちの中で、多くのストレスを抱えているのは、これから介護が本格化する前の段階。「親の健康問題がちょっとストレスになっている」という人たちが介護のボリュームゾーンなのです。
まだ施設に入居するほどではないけど、ケアが必要で常に頭の片隅で親のことが気になっている、施設に入居したけど週に何度か通わなければならないなど、ストレスを抱えていることは多いですよね。家族で話しあっても今後の方針で意見が分かれたりする。誰もが理想の介護に答えが見つからず、モヤモヤしている。
ぼくがメディアで発信する理由は、そうした介護でストレスを抱えている人たちに、色んな選択肢や考え方があるということを伝えたいということもあります。
「理想論ばかり」「そんなに甘くない」とか、「現場は疲弊している」という批判を受けたこともありました。だけど、介護業界が「しんどい」というアピールばかりしていても、未来は明るいものにならないし、ますます介護業界の壁が高くなってしまうかもしれない。
「人生の終盤で、どうしたら楽しい時間を少しでも多く過ごせるか」という当たり前の感覚を大切にしたい。考え続けなければ物事はいい方向には変わらないと思うんです。
撮影/杉原賢紀 取材・文/吉河未布
