医療費「15万円余分に払う人」と払わない人の違いは”歯”
では、予防歯科とはどんなことをするのか。
「虫歯や歯周病の検査と定期清掃、歯みがきや食生活の指導、唾液やかみ合わせの点検などです」(宇田川さん)
定期健診は、本来自由診療だが、2016年4月から、かかりつけ歯科医機能強化型歯科診療所の施設基準(※)を満たした歯科医院に限り、穴が開く前の初期虫歯へのフッ素塗布に保険適用が認められ、診療を受けやすくなった。
とはいえ、治療が終わっているのに歯科医院に通うのは抵抗があるかもしれない。しかし、詰め物・かぶせ物には寿命があり、治療部が再度虫歯になる可能性は高い。かぶせ物の下で虫歯になると、見た目ではわからないため、プロの定期ケアが重要になる。
「予防歯科こそ、歯科治療の根幹にかかわります。そのため、どんな医師に診てもらうか見極めるのも大切。予防歯科の学会や勉強会に所属し、勉強している医師かHPなどで確認しましょう」(わたなべ歯科の院長・渡辺勝さん)
歯の疾患、喪失は別の病気の原因になる
歯に疾患があると、噛めないため偏食となって栄養が偏ったり、歯並びやかみ合わせが悪くなると、骨がゆがむなど、健康に悪影響を及ぼす。つまり、歯の疾患や喪失は別の病気の原因になりやすいのだ。
特に大人が歯を失う最大の原因が歯周病で、現在、35才以上の日本人の約8割が罹患しているとされる。
これは、歯を支えている組織(歯茎・歯根膜・歯槽骨・セメント質)に起こる、さまざまな症状の総称。歯茎に歯垢がたまって腫れる歯肉炎から始まり、放置しておくと歯周炎に。
細菌の毒素が悪影響を!歯周病ケアこそ重要
こうなると、歯と骨をつなぐ歯根膜が溶け、歯周ポケットと呼ばれる隙間ができ、そこにさらに歯垢がたまる。さらに悪化すると歯槽膿漏(しそうのうろう)になり、歯を支える歯槽骨が溶けて歯がとれてしまう。また、歯周病菌が血液中に入ると、心臓病などの重篤な生活習慣病を引き起こす。
「歯周病の症状が重いほど、医療費負担も大きくなりがちなので、重症化させないこと。一度なっても歯科医による歯垢除去や家でのセルフケアに励めば改善できます」(宇田川歯科医院院長・宇田川義朗さん)
予防歯科は歯周病ケアと考えても過言ではないのだ。ちなみ、歯周病が原因で起こる疾患は以下のものがある。
●バージャー病
●骨粗鬆症
●低体重児出産
●早産
●アルツハイマー型認知症
●心臓病
●脳梗塞
●糖尿病
●動脈硬化
●肺炎
歯周病の細菌がつくる毒素は全身の健康に悪影響を及ぼす。特に心臓病のリスクは通常の3倍。骨粗鬆症の進行リスクは通常の2倍。低体重児出産リスクは通常の7倍以上。高齢者の死因に多い誤嚥性肺炎の要因にもなる。
(※)複数の歯科医師か1名以上の歯科衛生士がいる訪問診療対応、その他の条件をクリアした歯科診療所。宇田川歯科医院は認可済み。
※女性セブン2017年9月21日号
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