医療費「15万円余分に払う人」と払わない人の違いは”歯”
厚生労働省の調べによると、生活習慣病の医療費の中で、歯科が占める割合は大きく、がんの医療費に次いで2位であることが判明。虫歯や歯は茎ぐきからの出血くらいじゃ死には至らないと、放ったらかしにしていると、別の病気の原因にもなり、後々高額な医療費がかかるかも…。医療費を抑えるために今からできることを専門家に聞きました。
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年を取っても歯がある生活こそ、医療費を抑えられる
高血圧性疾患など、命にかかわる病の治療費より、歯にお金がかかるのは、“予防歯科”への認識の低さがあると、宇田川歯科医院院長・宇田川義朗さんは言う。
日本では、「年を取れば歯は失われるもの」「老化現象の1つ」などと考え、ケアをしない人が多かったため、厚生労働省と日本歯科医師会は、1989年より、80才で自分の歯を20本保つ“8020運動”を提唱し、定期的に歯医者に通うなどの“予防歯科”を推奨し続けてきた。
そのせいか、予防歯科の認識は少しずつ定着してきたものの、それでも、70才での自分の歯の平均数は約16.5本(厚生労働省2005年調べ)。親知らずを除いた成人の歯の本数は28本なので約4割の歯が失われているのが現状だ。
「老いれば歯はなくなるというのは間違い。定期的に歯医者でケアすれば、虫歯や歯周病を管理でき、インプラントなどの治療費をかけずにすむんです」(宇田川さん)
予防歯科は自由診療なら1回1万円で年3回程度必要。これを40年続けたとしても総額は120万円程度で入れ歯やインプラント代より安くすむ。何より、自分の歯が残ることは大きい。
具体的な費用を確認してみよう。インプラントだと、1本35万~40万円かかる。インプラントとは、失われた歯根に代えて顎骨に人工歯根を埋め込む治療法。上の歯6本+下の歯6本にインプラントを施す場合、500万円以上に。基本的に保険適用外。
続いて総入れ歯ではどうだろう? 費用は約60万~200万円といわれている。保険適用で1万円前後で作れる場合もあるが、材質などが選べないため、一般的な総入れ歯は上下で約60万円~かかる。インプラントと入れ歯を併用する場合、200万円前後に(いずれも保険適用外)
一方で、予防歯科は1回約1万円程度。基本的に自由診療になるため30分5000円~や、60分1万~1万5000円程度が相場。歯と歯茎の状態によって保険適用できるケースもあるので医師に相談を。虫歯や歯周病の治療時に合わせてケアすれば保険適用でき、3割負担ですむ。
トヨタ関連部品健康保険組合と豊田加茂歯科医師会の共同調査によると、歯の定期ケアをしてきた人は、痛みなどがある時だけ歯医者に通院した人に比べ、65才で約15万円の総医療費の差が出ることもわかっている。
年を取っても歯がある生活こそ、医療費を抑えられる老後につながるのだ。
予防歯科では、何をするのか