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「一見介護用品ではないものが“介護に役立つ”ことがある」大手日用品メーカーの花王だからこそできるカテゴリー横断型の新プロジェクト誕生秘話【想いよ届け!~挑戦者たちの声~Vol.3前編】

「介護用品といえば、紙おむつなどの介護されるご本人が使うものだけではない。介護をする側の人も含めた暮らしそのものに役立つものが、結果、介護にも役立つはず」。そんな想いから、介護する人と介護をされる人どちらにも寄り添う商品を、カテゴリーを横断して提案するプロジェクトを始めたのが、花王の新たな取り組み「介護のある暮らしに花王のできること」だ。同社でマーケティングの最前線において指揮を執る人物を訪ねた。

挑戦者たち/プロフィール

花王・佐鳥翼(さとり・つばさ)さん/ヘルスケア部門や飲料、ホームケア事業部などでマーケティングに従事。現在はハイジーンリビングケア事業部門・サニタリー事業部で大人用紙おむつ「リリーフ」のブランドマネジャーを務める。趣味はゴルフ、ジムで走ること

「介護のある暮らし」に何ができるのか

 介護は「する人」「される人」のどちらも大変な状況に置かれる。この現状に対し、僕らには何ができるだろうか――。

 入社から20年来、マーケティング畑を歩んできた花王の佐鳥翼さんはそう考えていた。

 65才以上の高齢者の割合は、いまや日本の総人口のおよそ3割に達し、今後も増えていくことが想定されている。少子高齢化は加速し、介護を受ける側の人数と反比例して、介護する側は間違いなく減っていく。そして働きながら介護をするケースも増え、その負担が増していくことも予想される。

 こうした社会的背景から、佐鳥さんが所属するサニタリー事業部を中心に、2024年からあるプロジェクトが進行していた。

「介護に花王のできること」

 一見、少々控えめな印象の、しかしながらどこかに芯の強い熱も感じさせる短いフレーズと、よく見慣れた左向きの月の横顔。このロゴマークをトップに配したウェブサイトが、2025年4月8日に公開された。新たな取り組みの正式名称は「介護のある暮らしに花王のできること」。

「大人用紙おむつや消臭剤などの『介護される人向け』の商品と、効率よく掃除ができたり、手軽にひと休みできる『介護する人向け』の商品、部門を横断して介護に寄り添うアイテムを、包括的に提案する取り組みを開始しました」(佐鳥さん、以下同)

 この名称には、ある想いが込められている。

「メーカー側からの発信なのですが、社名を先に入れることはしたくなかった。あくまで“介護”が主軸。介護シーンに、花王としてどう寄り添っていけるのか、どんな提案ができるのか、ということを常に考えてきました」

プロジェクトを仕掛けたのは大人用紙おむつブランドのチーム

 花王×介護といえば、どんな商品を思い浮かべるだろうか。

「大人用 紙おむつ購入動向調査2024」(介護マーケティング研究所 by 介護ポストセブン)によると、大人用おむつのブランド「リリーフ」は「初めて購入した紙おむつ」の上位に名前が挙がっている。

膨大なマーケット調査を分析

「『リリーフ』という大人用紙おむつブランドを通して、これまでにも介護にかかわる人々の負担解消と快適な暮らしをサポートする観点から、商品の改良を行ったり、消費者や小売・流通に対してより良い排泄ケアに向けた提案を行ったりしてきました。

 ただ、介護する人・される人の日々の生活を見渡せば、介護は言うまでもなく排泄ケアのみで成り立っているわけではないんです。

 朝から夜まで介護生活を細かく見ていくと、要介護者の身の回りの世話はもちろんのこと、介護者が別居で介護している場合はその人自身の仕事や暮らしがあり、その双方の場で食事や洗濯、掃除などの家事も発生します」

介護の二重生活にのしかかる負荷をラクにしたい

 総務省の「社会生活基本調査」によると、仕事を持ちながら介護を行っている人のボリュームゾーンは50〜60代、中でも最も多いのが50代女性で、しかもフルタイム勤務をしているケースが増えている。つまりは介護する側の大変さも、より深刻なものになっていると容易に想像できるわけだ。

 その視点を持った佐鳥さんはまず、社内の調査部門社内の調査部門であるコンシューマーインテリジェンス室が実施したモニター調査をもとに、「介護のある暮らし」の具体的な実情を探った。

「調査を細かく分析してみると、仕事をしながら介護をされているかたたちの生活はとにかく忙しい。通いで親の介護をされている場合には、介護をする親の家、自分の家の家事の負担もありますから、二重生活ともいえるのです。

 たとえばリモート勤務の傍ら、週に4~5日は実家の母親を介護している男性の場合。毎日17時頃に実家に立ち寄り、2時間ほど家事や食事作り、母のケアに充てています。

 またパートで働く61才女性のケースでは、パート勤務が休みの日には、朝7時から10時まで自分の家の家事、11時から15時まで実家の家事と介護、16時から帰宅して自分の家族に夕食を作り、洗濯をするといった具合です。

 別居で介護を行い、しかも仕事も持っている人は、仕事と介護、そして2拠点の家事もこなさなければならないため、日頃から高い負荷がかかっているのです。

 さらにこうした人たちの声を細かく拾ってみると、少しでも家事を効率的に行えるように工夫されているんですね。介護をする人たちは、家事のシーンでは時短につながる家事用品や洗剤などを選ばれていることが多く、排泄のニオイに特化した消臭剤を使うことで洗濯の時短にもつながる。排泄の失敗や食べこぼしには、さっと拭き取れるシートを役立てていることがわかりました」

商品の利用実態から新しい視点と気づきを得た

 佐鳥さんが気づいたのは、従来“介護”というカテゴリーで打ち出してきた商品に限らず、幅広いジャンルの商品が介護生活のサポートとして積極的に使われている実態である。

「そのほかに、介護をする側の疲れの癒やしやリラックスにつながる入浴剤なども介護をする人の暮らしでは重宝されることがあるでしょう。自分の家と親の家、2つのお風呂を掃除するには、こすらずに泡で汚れを落とす浴室用洗剤は負担軽減に役立ちますよね」

「紙おむつ」と「洗剤」のような、介護の横断的な売り場づくりを花王だけでやるのは難しい。しかし、”介護のある暮らし”に役立つ商品を包括提案できないかと考えた。ここが新たなマーケティングの着眼点だ。

 介護される人だけでなく介護する人も直面している、体力的にも精神的にも大変なこの状況に佐鳥さんは目をつけた。彼の想いを起点に、花王は新たな取り組みへと踏み出すことになった。

■介護に花王のできること
https://my.kao-kirei.com/kaigo/

撮影/柴田和衣子 取材・文/斉藤俊明

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