《親が亡くなる前に…》相続時にもめがちな「不動産」 今からやっておきたい手続きと親に確認しておくポイント
制度や仕組みが複雑で、わかりにくい印象の強い「不動産」。しかし、不動産情報こそ、きちんと把握し、家族で情報連携しておくことがいざというときのために大切と話すのは、節約アドバイザー・ファイナンシャルプランナーの丸山晴美さん。不動産の情報連携をしておくことが大切な理由と、その際のポイントなどについて詳しく教えてもらった。
教えてくれた人
丸山晴美さん/節約アドバイザー。ファイナンシャルプランナー
22歳で節約に目覚め、1年間で200万円を貯めた経験がメディアに取り上げられ、その後コンビニの店長などを経て、2001年に節約アドバイザーとして独立。ファイナンシャルプランナー(AFP)、消費生活アドバイザー、宅地建物主任士(登録)、認定心理士などの様々な資格を持ち、ライフプランを見据えたお金の管理運用のアドバイスなどをテレビやラジオ、雑誌、講演などで行っている。
いざというときのために把握しておきたい不動産情報
不動産は自宅だけでなく、家賃収入がある収益物件や田畑なども含まれます。自宅以外の不動産に関して、よく知っているのは本人です。亡くなったあとに遺された人が困らないよう、情報をきちんと整理して連携しておくことが大切です。
所在地だけでなく権利関係も把握しておく
不動産情報を整理する際は、不動産の所在地だけでなく、権利関係も把握しておきましょう。
所有している土地・建物などの「所有権」を持っている場合、その名義人や所有権割合はどのようになっているのか。土地を第三者から借りて「借地権」が設定されている場合、「旧借地法」なのかそれとも「新借地借家法」なのか、借地期間はいつまでなのかなど、できるだけ詳しく契約内容を把握しておくと、相続時にトラブルが起こりにくいでしょう。
また、購入時に住宅ローンを組んだ際に、不動産を担保とする「抵当権」が現状どのようになっているか、住宅ローンの残債や借り入れている金融機関の情報。注意点としては、住宅ローンは完済しているのに、抵当権の抹消登記がされていない場合は、早めに手続きをしておきましょう。そのままにしておくと、相続時の不動産売却など手続きが煩雑になるためです。
こうした権利関係は、登記簿謄本で確認できますが、登記簿謄本が見つからない場合は、最寄りの法務局、もしくは法務局のHP(https://houmukyoku.moj.go.jp/homu/static/online_syoumei_annai.html)で土地・建物の登記事項証明書を取得しましょう。
住所や氏名の変更時も早めに申請を
また、2026年4月1日から住所や氏名・名称の変更があった場合は、変更日から2年以内に変更登記の申請をすることが義務付けられます。相続時の煩雑な手続きを楽にすることにもつながるため、資産情報は定期的にアップデートしておきましょう。
意外と忘れがちなのが、老人ホームに住民票を移した場合です。老人ホームに住民票を移した場合も住所変更手続きが必要で、放置したままだと相続時にさかのぼって作業をしなければなりません。忘れずに行うようにしましょう。
その際、「スマート変更登記」を利用することで、申し出の後に住所や氏名の変更があった場合は、法務局において住所等の変更の事実を確認して、本人の了解を得た上で、変更登記がされるようになります。詳しい情報や手続きは、「かんたん登記申請」(https://www.touki-kyoutaku-online.moj.go.jp/mtouki/)を参照してください。
亡くなった後は3年以内に名義変更が必要
不動産の所有者が亡くなり、不動産を相続する場合は、名義変更(相続登記)を行います。2021年の民法改正により、2024年4月1日から相続に係る不動産の名義変更が義務化されており、相続により不動産を取得したことを知った日から3年以内に正当な理由なく所有権移転登記を行わなかった場合には、10万円以下の過料の適用対象となります。
名義変更は法務局の窓口でもできますが、登記・供託オンライン申請システム(https://www.touki-kyoutaku-online.moj.go.jp/)を使えばWeb上でも手続きが可能です。面倒くさいからと後回しにしていると、そのまま忘れてしまいがちなため、早めに変更するようにしましょう。
不動産の手続きを意識しておくことが負担の軽減に
親の死後、葬儀や金融機関の手続きなどで後回しにされがちな不動産の手続きですが、やるべきこととして意識しておくことが精神的な負担を軽くすることにつながります。できれば元気なうちにエンディングノートに残してもらうことが理想的です。
ただ、それが難しかったり、書き漏らしがあったりすることもあります。その場合は帰省時などに何気ない話題などから、所有している不動産について聞いてみるとよいでしょう。