介護生活にハーブを!<10>虫刺され、虫よけ、水虫に「ドクダミ」
私たちの暮らしでは、食事やお茶など様々な形で利用されるハーブ。西洋だけでなく、日本でも昔から健康のために、ハーブの力が活かされてきました。
介護生活にもぜひともハーブを活用してほしいと、写真家でハーバリストの資格を持つ飯田裕子さんが、介護する人・受ける人へ、ハーブ暮らしに取り入れるヒントを提案するシリーズ、今回は、かゆい虫刺されに役立つハーブをご紹介。街中でもよく見かけるおなじみの植物を賢く利用するヒントを教えてもらいます。
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梅雨も終盤のこの時期、気温も湿度も上がり、そろそろ蚊も出てきました。
皮膚は汗ばんで毛穴も開きがち。そんな時期の虫刺されは、つい手が伸びてかいてしまうと、お肌が傷つきやすいものです。
先日、母が言いました。
「歳をとると虫に刺されたことも気づかなくてね。そうかと思うと、かゆいところに知らない間に手が伸びてかき壊したりたりするのよね。掻き跡もなかなか治らなくてね。ほら、まだ去年のかき傷がそのまま…」
特にお風呂上がりで、体が温まった時や寝床に入った後に、眠気も覚めるほどかゆさが増したりすると言います。
季節ごとに必要なものが準備されている自然
そんな話を聞きながら、ふと裏庭へ目をやると、鬱蒼とし始めた草むらの中にひときわ白く清楚に花開くドクダミの一群が眼に止まりました。
自然は本当によくできたものです。季節ごとに人が必要とするものを、「そろそろ必要な時期ですね」と、ちゃんと準備してくれるのですから。
人間も自然の一部ですから、そんな自然のシステムの中に配置されているのかもしれません。
そんなわけで、今回はドクダミのことを少しお伝えしたいと思います。
地下茎の多年草のドクダミは、生薬では「十薬」とも呼ばれ、いくつもの疾患に効果が期待できる万能薬として、昔から重宝されてきました。中国はもとより、ベトナムでは魚料理の臭い消し、殺菌にも使われています。
日本列島では北海道の南からほぼ全域に、それもジメジメした日陰に生育し、春の訪れとともに新芽を吹いて地面から現れてきます。中心の黄色い突起が花で、白い部分はガクだと言いますが、白十字に見えるドクダミの花はどこにでも直ぐに駆けつけてくれる白衣の看護婦さんを想わせますね。
しかし、ドクダミを摘んで、葉を揉むと、可憐な姿には似合わない独特の強い匂いを発します。その匂いの正体は、デカノイルアルデヒド、ラウリンアルデヒドという成分で、それが消炎、抗菌、排膿に役立つのです。
ドクダミという名前は、その強い匂いから「毒溜む」、もしくは毒下しに用いられたことで「毒矯み」と呼ばれたという、二つの説があるそうです。
そんなドクダミは花が咲いているこの時期(地域により、5月末から7月末)に花の成分と葉の成分の両方が豊富なので、是非、生のドクダミを採取してチンキを作ってみてください。チンキにすると不思議とドクダミ特有の匂いがなくなり、すっきり爽やかな使い心地になります。
チンキとは、メディカルハーブでは、薬草をアルコールで漬け、有用化学成分を抽出する方法のことです。
私も先日、庭でヤブ蚊に刺されてすぐに、木陰のドクダミの葉をそのまま刺されたところに擦り付けてみたら、腫れも痒みもしなかったので、チンキを早急に作りました。
今回は飲用ではなく、皮膚への塗布が目的ですので、アルコール度数も20度~25度くらいのマイルドなもので作ってみました。
「ドクダミのチンキ」材料と作り方
材料
●甲類焼酎 1本(紙パックのもので900ccほど)
●地上で採取した花が咲いているドクダミを茎、花、葉(15~20本程度)
●湯(50℃)
作り方
【1】ドクダミを50℃の湯でさっと洗い、水気を切る。
【2】ガラスの容器にドクダミを入れる。
【3】焼酎を注ぐ。
【4】1週間~2週間、そのまま室内の日の当たらない場所に置く。
【5】漉して保存用の瓶に保管する。
(コーヒーのドリップフィルターや、排水口用ストッキングネットを利用して漉すのがオススメです)
ちょうど1週間前に仕込んでいたドクダミのチンキを、母の皮膚に塗布してみましたところ、「あれ? すーっと痒みが止まったみたい」と喜んでいました。
また、梅雨から夏にかけての湿度と温度が高い季節のお悩み、「水虫」にもドクダミのチンキは重宝します。
水虫の場合はドクダミのチンキに、ローズマリーの精油を2~3滴添加するとさら良いでしょう。ローズマリーに含まれるロスマリン酸は、水虫の元凶となる真菌に抗う成分として認識されています。