《世界骨粗鬆症デー》骨の健康に欠かせない3つの栄養素、食事の摂り方や骨を元気にするレシピを管理栄養士が指南「高齢者女性は特に注意!」
10月20日は世界骨粗鬆症デー*。厚生労働省の「患者調査」(令和5年)によると、骨粗鬆症(こつそしょうしょう)の患者数は138万人を超え、女性130万9,000人、男性7万8,000人と、女性が圧倒的に多い。高齢女性はとくに注意したい「骨粗鬆症」骨の健康のために摂るべき栄養素や生活習慣について管理栄養士の川鍋仁美さんにアドバイスいただいた。
*世界骨粗鬆症デー/国際骨粗鬆症財団(International Osteoporosis Foundation:IOF)が制定。
教えてくれた人/管理栄養士・川鍋仁美さん
管理栄養士。2児の母。大学卒業後、総合病院に勤務。介護食・嚥下食などの献立作成や栄養相談など行ってきた経験を活かし、現在はデイサービスで高齢者の栄養サポートなどを行う。介護する人もされる人も笑顔になれる「介護食作り」を目指し、活動中。「管理栄養士が伝授!いちばんやさしい介護食ガイド」の運営・執筆も手がける。https://eiyousupport.com/
高齢女性は特に注意「骨粗鬆症」
少しずつ涼しくなって秋も深まり、身体を動かしやすくなり、食材もおいしい季節です。そこでぜひ注目したいのが“骨の健康”です。食欲の秋、スポーツの秋こそ、とくに高齢者に心がけていただきたいのが「骨粗鬆症」の予防です。運動や食事を見直すきっかけにしてみて欲しいと思います。
高齢者は骨の健康に要注意
身体を支えるために重要な骨ですが、常に破壊され、新しく作られるという代謝が繰り返されています。この骨の代謝バランスが崩れ、「作られる」よりも「破壊される」量が上回ってしまうと、骨がもろくなって骨粗鬆症を引き起こします。主な原因は加齢のほか、女性ホルモンの減少にも関係しているとされ、高齢女性はとくに注意が必要です。
骨が弱っているとちょっとした転倒や打撲などでも簡単に骨折しやすくなってしまいます。高齢者はとくに骨折して数日寝たきりになってしまうだけでも筋肉量が減少し、要介護度が進む恐れもあります。
骨粗鬆症と運動
骨を強くするには、適度な運動を行って骨に一定以上の負荷をかけることが大切とされています。寝ている時間が多い、座り姿勢が多い人は、骨に負荷がかかりにくく、骨粗鬆症になりやすくなってしまいます。なるべく歩くことを心がけたいものです。骨の健康のためには、ウオーキングや太極拳などゆったりとした動きでも骨に刺激となります。
歩くのが大変であれば、椅子に座って「かかと落とし」(床や地面にかかとをトントンとついて刺激を与える)をするのも有効なので、意識してみてください。
秋から冬にかけて気温が下がると、身体の基礎代謝は上がる傾向にあるので、運動の効果も感じやすくなります。無理のない範囲で運動にも挑戦してみましょう。
骨粗鬆症予防におすすめの栄養
骨粗鬆症予防のためには、骨をつくる栄養素を不足なく摂ることが大切です。まずは、骨に必要な栄養素を確認しておきましょう。
・カルシウム
骨や歯の主要成分で、骨密度を維持するために必ず必要な栄養です。
牛乳などの乳製品や骨ごと食べられる魚、大豆製品、緑の葉物野菜(小松菜・春菊など)に多く含まれています。
・ビタミンD
カルシウムの吸収を促してくれるビタミンです。紫外線を浴びることによって体内でビタミンDが生成されます。適度な日光浴をするとよいでしょう。
魚類、きのこ類、卵などに多く含まれています。
・ビタミンK
血中のカルシウムを骨に沈着させる働きがあり、骨を強くしてくれるビタミンです。
納豆や緑の葉物野菜(ほうれん草・春菊など)に多く含まれています。
骨を強くする栄養素の効果的な摂り方
「骨にはカルシウムがいい」と理解しているかたも多いと思いますが、カルシウムだけをたくさん摂るのではなく、ビタミンDやビタミンKもあわせて摂るのがポイント。どちらか一方だけ摂るのではなく、栄養素を不足なく補うことが大切です。
これらの栄養素はすべて食事から摂るのが理想ですが、食事から充分摂れない場合にはサプリメントなど利用する手もあります。ただしサプリメントは摂りすぎに注意し、必ず容量を守ってください。
たんぱく質をはじめ、さまざまな栄養素を含む「バランスのよい食事」を心がけることが骨粗鬆症予防の基本となります。
骨を元気に保つ簡単レシピ「鮭のクリームリゾット」
鮭は魚の中でもビタミンDが豊富な食材。タンパク質やカルシウムを豊富に含む牛乳やチーズを合わせて、カルシウムとビタミンDを同時に摂れるレシピをご紹介します。噛む力が弱ってきている高齢者や介護中の人にも食べやすいクリームリゾットに仕上げました。
<材料>(2人分)
・鮭フレーク…大さじ2
・ご飯…茶碗1杯分
・玉ねぎ…1/6玉
・えのきだけ…1/6株
・牛乳…150㏄
・スライスチーズ…1枚
・バター…10g
・塩コショウ…少々
<作り方>
【1】玉ねぎとえのきだけをみじん切りにする。
【2】ごはんをザルに入れ軽く水で洗いぬめりをとりしっかりと水気を切る。
【3】フライパンにバターを入れ、溶けてきたら①の野菜を加えてよく炒める。
【4】【2】のご飯と鮭をいれて炒め合わせる。
【5】牛乳とチーズ(ちぎって)を加えて、とろみがつくまで軽く煮る。
【6】塩コショウで味を調え、皿に盛ってお好みでパセリや粉チーズを振りかける。
夏の疲れを感じていた高齢のかたも、爽やかな気候になり食欲も少しずつ出てきた頃かもしれません。食事と無理のない範囲の運動から、ぜひ骨粗鬆症予防を始めてみましょう。
骨密度は20代をピークに40代ごろから一気に減少し始めるといわれています。高齢者はもちろんですが、介護者自身も健康でいるためにも日々の食事から効率よくカルシウムやビタミンを摂取して骨粗鬆症予防を始めていきましょう。