メンタルも強くなる<最強の胃>を作る6つの食事ルール「腹7分目」がいい理由を医師が解説
体調、食生活、ストレスなどの影響を受けやすい「胃」。胃もたれ、食欲不振、吐き気など慢性的な胃の不調を感じている人も少なくない。日本人の繊細な胃を整えるにはどのような食生活を心がければ良いのだろうか。胃を強くする食事法を専門家の2人に聞いた。
教えてくれた人
一石英一郎さん/消化器内科医、医学博士、国際医療福祉大学病院内科学教授。予防医学の観点から日本人の遺伝子を解析する「遺伝子栄養学」を提唱。著書『「胃」を整えると自然と「不安」が消えていく』(アチーブメント出版)が好評。
林真一郎さん/薬剤師。東邦大学薬学部客員講師、ハーブ専門店「グリーンフラスコ」(東京・自由が丘)代表。「緑の医学」のコンセプトのもと、ハーブ療法の普及に取り組んでいる。オンラインショップ(http://www.greenflask.com)
日本の胃がん発生率は「世界3位」
胃を整えるにあたり、自分の胃が元気かどうかを知ることも大切だ。
「日本の胃がん発症率は世界3位。現在では日本人のがん死亡率は大腸がんが上回っていますが、依然として“胃がん大国”です。胃がんの原因の約98%はピロリ菌感染によるもの。日本人で60才以上の約70%がピロリ菌を持っていますから、中高年のかたは、一度は菌の有無を調べておくべきです。検査が広がったことで、現に早期発見・早期治療につながっています。
ピロリ菌検査と、胃の元気度を反映するペプシノゲン検査がセットになった『ABC検診』という検査なら、医療機関にもよりますが、5000円前後で受けられます」
40才を過ぎたらバリウム検査ではなく内視鏡検査(胃カメラ)も受けてほしいと、医学博士の一石英一郎さんは言う。
「バリウム検査と比べ、画像の診断レベルが圧倒的に違いますし、気になる箇所を切り取って調べることができます。また、ピロリ菌による胃全体の影響も一目でわかります。身内で胃がんになった人がいるとか、胃薬が手放せないかたは、早めの受診をおすすめします」
多種多様の胃薬が発売されているが、選び方は?
「市販の胃薬は効能がさまざまですが、効果はすべてマイルド。自由に試してみて、効果がなければ医師に相談してください。意外にも、便秘薬でお通じが改善されたことで胃への負担が軽減され、胃もたれや胸やけが治ったというケースもあります」
医師も実践!丈夫な胃を作る6つの食事ルール
胃が元気(=消化吸収が活発)であれば、健康によいものを幅広く摂取・吸収でき、ひいては全身に健康成分が行きわたり、脳が活性化され、メンタルも安定するという好循環が生まれるという。
「その循環を作るためには、食事のとり方が重要。そこで、私が実践する6つの食事ルールを紹介しましょう」
【1】よく噛む
【2】腹六~七分目
【3】規則正しく食べる
【4】温度変化で活性化
【5】野菜から食べる(ベジファースト)
【6】体調により食材や調理法を変える
丈夫な胃を作るための食事ルールについてこう解説する。
【1】よく噛む
「咀嚼(そしゃく)をすることで唾液中の消化酵素(アミラーゼ)が分泌され、胃腸の消化・吸収を促進します。特に朝食は液体ではなく固形物を30回くらいよく噛んで食べ、唾液を出しましょう」
【2】腹六~七分目
近年話題となった「オートファジー(自浄作用)」(細胞が、古くなったたんぱく質や老廃物を掃除して細胞を若返らせる働き)を利用し、胃の活性化をはかるもので、その際の食事の適正量が腹六~七分目だという。
「腹八分目じゃないの?と言われそうですが、最近の研究によると、六~七分目でないとオートファジーのスイッチがオンにならないそうです」
オートファジーが発動するには、16時間の断食が効果的といわれているが、栄養不足や低血糖でかえって健康を損なう恐れもありそうだが…。
「その通りです。中高年以降の急激な飢餓状態は、骨粗しょう症や認知機能低下のリスクを招きますから、早めの夕食後から翌朝まで何も食べない、ゆるめの『夜間ファスティング』がいいと思います。アカゲザルを30年観察した研究によると、腹七分目のサルは満腹のサルに比べ、生活習慣病の発症率が低く、しわも少なく、脳の萎縮も抑制されていたそうです」
食事の時間と量が適正な人は、現状維持で問題ない。
【3】規則正しく食べる
「体内時計が乱れると『肝臓で解毒し、腸で消化・吸収する』というプロセスが乱れます。たとえば肝臓で無毒化されていない成分が脳に入り、メンタルの不調を招くことも。起きたら日光を浴び、起床後の1時間以内に朝食(炭水化物、たんぱく質、オメガ3系の脂質)をとると、体内時計の遺伝子が鍛えられ、胃が整います。ホテルで出てくるような和朝食セットやツナサンドがおすすめです」
【4】温度変化で活性化
人間が持つ温度センサーで胃腸を動かすというもの。
「人間は、43℃付近で『熱い』と感じる温度センサーがオンになります。このスイッチは、唐辛子の辛み成分であるカプサイシンを食べても入ります。スイッチがオンになると、胃の血流が増え、粘膜を修復します。しかし、43℃を超えるものを飲んだり、辛い刺激が強すぎると、逆に胃潰瘍のもととなります」
一方で、26℃以下になると今度は冷感センサーがオンになる(メントール摂取でも同様の現象が起こる)。
「常温の水と15℃の水を飲んだグループでは、後者の方が腸の蠕動(ぜんどう)運動が改善されたという研究がありました。つまり、温感センサーをオンにして『胃』を、冷感センサーで『腸』を刺激すると、胃腸両方の動きが活発化します。温冷料理が交互に出るフランス料理は、胃腸を鍛える理想的な食事法です」
たとえば生野菜サラダの後に温かい主菜(肉や魚のソテーなど)、熱々ではないコーヒーとアイスクリーム等の組み合わせが参考になりそうだ。
【5】野菜から食べる
「胃腸が消化・吸収を始める際の準備運動です。野菜の繊維が肉や魚を包み込み、消化・吸収を助けるのです」
【6】体調により食材や調理法を変える
「繊維質が多い和食材は、ヘルシーですが消化に悪い。胃が疲れているときに食べると胃の働きを弱めるため、細かく切って塩分を控える。脂の多い魚(さば、あじ、ぶり、とろなど)や豚肉、牛肉は避ける。どうしても食べたければ茹でて脂を抜くなど、胃に優しい食材、食べ方を選びましょう」