猫が母になつきません 第467話 じどう
手を近づけると自動でフタが開くゴミ箱を買ったのは、新型コロナウイルスが猛威をふるい始めたころだったから約5年前。まだ実家で母と暮らしていて、使っていたペダル式のゴミ箱のフタがあまりに頻繁に壊れるので嫌気がさしたのと、もし母か私のどちらかがコロナに感染したらうつらないよう、ゴミの処理をできるだけ触らずにすむようにしておこうと考えたからでした。45Lのゴミ袋がセットできて密閉されるので匂いもほとんど気にならない。買ってよかった台所用品ベスト5にはいります。
食器用洗剤入れ、いわゆるソープディスペンサーと言われるものですが、こちらは従来使っていた上から押すタイプの容器の出が悪くて、スポンジに洗剤を注ぎ足したいときに何度も押さなくてはならないのが地味にストレスでした。本当にちょっとしたことではありますが、1日に何度も使うものなので、これも自動で洗剤がでるものにしてみました。スポンジをかざすと適量の洗剤がぬーんと出てくる。なんだかたのしい。なんだか贅沢。なんだか文明。
AIが台頭してきている時代にこの程度の自動化はごくごくかわいいものではありますが、よく考えてみると喜んでばかりもいられません。電動である以上、定期的に充電が必要、メンテナンスも必要。もう押すだけではダメなのです。食器用洗剤とこれまでとは違う形で関わっていく必要があります。便利になったように見えても、新しいソープディスペンサーの登場によってうちの台所は少し複雑化したのです。世の中がデジタル化、自動化されて便利になるはずが、逆に複雑さが増して混乱をきたすことの多い昨今、私はスポンジに洗剤をぬーんと出してもらうのを楽しみながら、現代社会における自動化のパラドックスに直面していました(盛)。
作者プロフィール
nurarin(ぬらりん)/東京でデザイナーとして働いたのち、母と暮らすため地元に帰る。ゴミ屋敷を片付け、野良の母猫に託された猫二匹(わび♀、さび♀)も一緒に暮らしていたが、帰って12年目に母が亡くなる。猫も今はさびだけ。実家を売却後60年近く前に建てられた海が見える平屋に引越し、草ボーボーの庭を楽園に変えようと奮闘中(←賃貸なので制限あり)。
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