尿失禁とそのケア~プロが教える在宅介護のヒント 「排せつ」のトラブル<3>
尿失禁が起こったら、段階に応じたケアをします。若い人にも排尿障害を起こす人は増えているので、体操などはご家族そろって行ってはいかがでしょうか。
尿失禁が起こったら
ご本人の活動のしやすさから選ぶと、パットやリハパンが軽快です。
失禁があっても、水分摂取や活動を控えすぎないように促しましょう。夜間に頻尿の傾向がある場合は、睡眠を妨げるのを予防するために夕食後の水分摂取は控えめにするとよいでしょう。
腹圧性尿失禁の改善には、「骨盤底筋(こつばんていきん)体操」がお勧めです。骨盤底筋のトレーニング方法として世界中に普及しているのがこの体操です。
1:骨盤底筋を意識する。椅子に座り、肛門に力を入れて締めたとき、動く筋肉の辺りが骨盤底筋
2 :・仰向けになり、足の裏を床につけ、肩幅に開いて膝を曲げる→体の力を抜き、肛門と膣(睾丸)を締めるように意識→息を吸いながら肛門と膣(睾丸)を頭の方へ引き上げるイメージで締める→そのままの状態で5秒くらいかけて息をゆっくり吐き、息を吐ききったら力を抜いてリラックス。
これを5回繰り返す
3 ・肩の真下に手をつき、ももの付け根から膝が床と垂直になるように付け、四つ這いになる→・背中はなるべくまっすぐ、床と平行になるように。→この状態から息を吸いながら肛門と膣(睾丸)を頭の方へ引き上げるイメージで締める。→そのままの状態で5秒くらいかけて息をゆっくり吐き、息を吐ききったら力を抜いてリラックス。
これを5回繰り返す
失禁が続いたら
居室で過ごすことが多くなり、失禁の不安が続いているなら、次の段階と考えましょう。
端座位(ベッドの端に腰をかけ、足を下ろした姿勢)が保てるならポータブルトイレを利用しリハパンを併用します。
ただし、リハパンは横向きになって寝ると漏れやすいので、寝て過ごす時間が多くなってきたら、紙おむつが安心です。端座位が不安定になり、支えが必要になった場合も、紙おむつを。
排泄ケアの最終段階
紙おむつを利用し、ベッド上で陰部洗浄も必要になります。吸水性がよく、逆戻りしないので、取り替えるときにそのまま洗浄できます。日本は紙おむつ開発先進国で、市販されている製品の吸収力や、消臭、皮膚への負担を軽減する機能などがとても優れています。ご本人の快適性を増し、介護負担を軽減してくれます。
おむつを替えるときは、ご本人の自尊心に配慮することが大切です。「汚れている」、「濡れている」、「臭い」はNGです。「気持ちよくしましょう」と声がけしてください。
また、皮膚が赤くなったり、かぶれている場合も、「排尿でかぶれている」などの声がけは不安を招きますので、「痛い?」「洗ってお薬をつけましょうね」などと、介護を受ける人が「快適に過ごせること」に目を向け、対応しましょう。
排泄ケアはデリケートなことで、する側も、受ける側も、申し訳なさを感じやすく、無意識のうちに疲弊する行為です。介護をする人が、一人で一生懸命になってしまうと疲れてしまい、余裕がなくなって、双方がより苦しくなる恐れがあります。
訪問看護師や介護の専門職に相談し、間に入れることで、排泄の問題にスムーズに関われる場合もあります。委ねられることは委ねて、気持ちに余裕を保っていただきたいと思っています。
※ リハパン(リハビリパンツ)と紙おむつの違い
リハパンは、紙製のパンツタイプで、履いて着用する。尿を吸収する陰部の部分が厚くなっていて、布パンツ利用が不安な人が排尿コントロールのリハビリに用いるのが一般的。
紙おむつは臀部(でんぶ)を包み込んでテープで止めて着用する。中敷きのパットを併用するのが一般的。多くは寝たきりの人を対象とした設計になっている。
教えてくれた人
長川清子さん:一般社団法人東京都北区医師会在宅療養相談窓口・訪問看護認定看護師、介護支援専門員。急性期病院勤務、居宅介護支援事業所勤務、訪問看護ステーション所長、東京都立北療育医療センター勤務などを経て現職。仕事の傍、東京都訪問看護ステーション協議会「訪問看護の質向上の為の体系的教育プロジェクト」のワーキンググループメンバーとして未来の在宅医療を担う人材を育てるための訪問看護士のキャリアラダー開発に取り組んでいる。
取材・文/下平貴子
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