「排せつ」のトラブル<1>「介護中の便失禁は、便秘が原因の場合も」~プロが教える在宅介護のヒント
専門家に在宅介護のヒントを教えてもらうシリーズ、今回は介護の悩みの中でも、深刻な「排せつの問題」を取り上げる。第一回は「便」に関するトラブルやそのケアについて、訪問看護師の長川清子さんにアドバイスしていただきました。高齢者には、他の年代と違う特有の症状や注意点があるといいます。
写真/アフロ
教えてくれた人
長川清子さん:一般社団法人東京都北区医師会在宅療養相談窓口・訪問看護認定看護師、介護支援専門員。急性期病院勤務、居宅介護支援事業所勤務、訪問看護ステーション所長、東京都立北療育医療センター勤務などを経て現職。仕事の傍、東京都訪問看護ステーション協議会「訪問看護の質向上の為の体系的教育プロジェクト」のワーキンググループメンバーとして未来の在宅医療を担う人材を育てるための訪問看護士のキャリアラダー開発に取り組んでいる。
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便失禁も便秘が原因のことが多い
要介護度が低い人から高い人まで、高齢者の排便トラブルのほとんどは「便秘」に関係しています。
ご本人とご家族、共に、排便回数や量が少ないこと、便意をもよおすのが不規則だったり、便意をもよおさないことなどで、悩んでいる人が多いのです。
便意をもよおさないまま、便失禁してしまうこともあり、これも便秘に起因する場合が多く、この悩みは深刻です。
便秘は、食生活や生活のリズムが乱れることでどの年代の人にも起こることです。若い人の場合は一過性の症状であることが多いので、高齢者の場合も「便秘ぐらいは」と軽く考えてしまうかもしれませんが、それは間違いです。他の年代の人の便秘とは原因や症状、健康への影響が大きく違います。
高齢者の便秘は、排便の回数ではなく便の状態で判断を!
毎日排便がないと「便秘ぎみ」「便秘」などと思う人が多いようですが、それは便秘ではありません。高齢になると食事量や活動量、筋肉量が減ることなどで、排便の回数・量が減る人は多いので、とくに回数にこだわると見誤ってしまいます。
便秘は排便回数ではなく、出ている便の状態を見て判断します。毎日出ていても、うさぎの糞のように黒っぽいコロコロ便なら便が腸内にとどまっている時間が非常に長いと考えられ、便秘です。
しかし、毎日ではなくても、たとえ週に1回でも、適度に水分を含んだ普通便が定期的に出ていたら便秘ではありません。
英国のブリストル大学で1997年に開発された世界的な「便」の基準「ブリストルスケール」では、普通便とはどのようなものか、ものさしになる図を見ることができるので、便秘の判断の参考にしましょう。スケールの「4」が普通便で、日によって「3」または「5」でも心配ありません。食べ物や水分量、活動の影響と考えられます。