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【69歳、これからの生き方】低気圧で「ダメ人間」になった反動? 70代を前にオバ記者に湧き上がる“飽くなき好奇心”

「60代最後の年」が3か月過ぎたものの、スッキリしない天気続きで体調もどん底。ベッドで寝てばかりの“ダメ人間”と化していたオバ記者(69歳)だが、グズグズしきった反動で、ある思いが頭に浮かぶ。「70代、80代で見える景色が違うなら、未体験のことに片ッ端から挑戦しよう!」。そう決意して向かった意外な先とは──。オバ記者ことライターの野原広子氏(69歳)が、新しい刺激に触れながら、年齢を重ねても前を向いて生きるための心の持ちようについて綴る。

2日間寝込んで気づいた「未体験への好奇心」

「60代最後の年」が3か月過ぎた。そこにきてこのスッキリしない空模様ね。気象病っていうんだって。低気圧が東シナ海で発生したあたりから頭が重くなる、足首の古傷がうずく、くらいならまだマシでひどくなるとベッドから起き上がれなくなるの。先日は2日間、ずっと寝てばっかりだった。

 お腹が空くと何か口に入れる。あとはトイレの用をすませるだけ。身体が鉛みたいに重たくて気がつくと寝ている。と言っても2時間くらいで目が覚めるから、あとはダラダラとスマホ遊びよ。もう、ダメ人間、ここにありだ。 
 
 と、体調が悪いと地の底に沈むような気持ちになるんだけど、その反動っていうの? 寝るだけ寝てグズグズするだけすると、われながら突飛なことが頭に浮かぶんだよね。69歳が70歳になり、75歳、80歳になると、その時々で見える景色が違うに決まってる。なら、今までやったことがないけど、興味があることを片っ端からやってみようではないかと、そう思ったのよ。

フェス化する現代のデモで出会った、若い世代の「半身構え」

 そのひとつがデモ参加よ。ふと思い出したのは50年以上前の出来事。「デモ? 今度行くときに声をかけて」と学生運動をしていたナホちゃんに言ったのは、私が高卒で靴屋の住み込み店員をしていた18歳の時だからもう50年も昔だ。「大丈夫。ヘルメットは貸してもらえるから」と、そこまで話は進んでいたけどそのうちナホちゃんとは音信が途絶えてしまった。

 それ以降、デモ隊の横を通り過ぎると、その時々でスローガンは違うけれど、そこに集まる人々は、どんな気持ちでここに来ているのか。そもそもデモに参加しようと思った動機は何? と気になっていた。そのたびに「人それぞれ」と通り過ぎてきた。

 そんな私が「行ってみるか」と思ったのは『首相官邸前ペンライトデモ!憲法9条改憲NO!ウィメンズアクション』よ。ネットで見たらペンライトにキラキラ団扇を振ってまるでフェスか推し活なんだってね。ヘルメットに軍手、角材の昭和のデモとはずいぶんな様変わりじゃないの。女性が中心のデモというのも面白そう。

 あいにくその日は夕方になってもざーざー降り。ふつうなら「やーめた」となるところだけど、赤坂見附で飲みの予定が入っていた。デモ会場の首相官邸前は飲み会のお店と目と鼻の先で少し早めに家を出れば良い。とかなんとか言うけど私は雨が降ろうが興味があれば動くのよね。
 
 おお、地下鉄の国会議事堂前駅の出口を出ると雨の中、カッパを着た女性がズラッと並んでいる! 人混みの中、傘をさそうとするとステージらしいところからずっと離れたところにいるしかない。

「ああ、カッパ着てくれば良かった」と、同世代らしき女性に声をかけたら「そうよ。雨のデモにカッパは必携よ」と教えられた。感じのいい人なので「活動歴は長いんですか?」と聞くと、学生時代からこれまでずっとだそう。意思の強そうな見た目からして、なるほど納得。

 で、はるか向こうのステージには何人かがマイクを握って、「憲法改正反対」「戦争反対」と熱弁している。その中で「ん?」と思った主張があったので、若い女性2人に「どう思う?」と聞いたら「う〜ん、どうなのかなぁ」と微妙な答えが返ってきたの。

 聞いたら30歳と32歳の会社員で2人がデモに参加し始めたのは今年2月の衆議院選挙からなんだって。「それまで政治は遠かったけど、ほんとにこのままでいいの?と思ってSNSに投稿したら同じような人がいっぱい集まってきたんです。それでデモにも参加するようになったけど、今日みたいな雨だともう家に帰りたい(笑)」だって。

 主催側に全面的に同意しているのではなくて、半身構えている感じだね。でも見ると彼女みたいな20 代から40代の、身ぎれいな人がけっこうな数、混じっていたのは、意外だった。今度は天気のいい日に行ってみようかな。

人情派刑務官にオーダーした一文字は「邪」!?

 あと最近、興味を持ち出したのが書。講演会で自著『で、やせたの?』にサインを求められることが重なって、「書は苦手」なんて言ってられなくなってね。デパートで開催している教室に1回7000円出して美しく見える字の書き方のツボを教わったの。

 そんな私の前に現れたのが、刑務官のたかぽんと刑務所の管理栄養士のキョウコちゃんだ。己書っていうんだってね。古来からの書道の枠を超えて己の思いのまま筆を走らせて絵のような書のような独自の世界ができたらよし。

 ほうほう、なるほど、人情派刑務官のたかぼんは「ありがとう」「感謝」などほっこりにた文字がお得意。いやいや、人の心はそんな美辞麗句で治るか? そんなもんか? で、私がオーダーした一文字が「邪」。人の心の禍々しさをさあ、どう表現する! 果たし状を渡すような気持ちで待つこと数分。ほほう、やるねー。後ろ手に刃物を隠しているみたいな文字ね。

 で、お次はほっこり笑顔のキョウコちゃん。毒婦の「毒」。「母」の字が土台になっている「毒」の字をどう書く?

 あらら。可愛い顔してやるわね。「甘党の姑に砂糖たっぷりの料理をにこにこ笑いながらすすめている嫁」という感じの文字。

 あれから3週間。原稿書きに飽きると私はバッグの中から2人からもらった色紙を取り出して眺めている。

変化の気配に目を向けて、まだまだ前へ

 もうひとつ私がときどき眺めているのが日本一高いビルになる東京駅日本橋口の目の前に建設中のトーチタワーだ。地上62階、高さ385mで2028年完成予定なんだって。先日見たら3月に見たときと比べると、見上げるほどになっていたの。

 過去を振り返るのもいいけど、新しくできるもの、変わる気配に目をやっている限りは私、まだまだ大丈夫だと思うんだよね。

◆ライター・オバ記者(野原広子)
1957年生まれ、茨城県出身。体当たり取材が人気のライター。これまで、さまざまなダイエット企画にチャレンジしたほか、富士登山、AKB48なりきりや、『キングオブコント』に出場したことも。バラエティー番組『人生が変わる1分間の深イイ話』(日本テレビ系)に出演したこともある。2021年10月、自らのダイエット経験について綴った『まんがでもわかる人生ダイエット図鑑で、やせたの?』を出版。実母の介護も経験している。

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