小学館IDについて

小学館IDにご登録いただくと限定イベントへの参加や読者プレゼント にお申し込み頂くことができます。また、定期にメールマガジンでお気に入りジャンルの最新情報をお届け致します。
閉じる ×
ニュース

 【追悼・美輪明宏さん】「一生働く」と決めた私を支えてくれた存在 69歳のオバ記者が振り返る、強烈な言葉と「老いること」の安心感

 美輪明宏さんが91歳で亡くなったという突然のニュース。69歳になり、「一生働く」と決めているオバ記者にとって、90代になっても現役で輝き続けていた美輪さんは、そこにいるだけで年齢を重ねる不安を吹き飛ばしてくれる大きな心の支えだった。20代の頃に通い詰めた銀座のシャンソン喫茶での姿から、度肝を抜かれた自宅インタビューでの強烈な一言まで、オバ記者ことライターの野原広子氏が、唯一無二の存在だった美輪さんとの思い出を振り返る。

『銀巴里』でハラハラしながら見つめたステージ

 スマホに美輪明宏さんが亡くなったというニュースが飛び込んできた。91歳だって。こんな時、私の田舎、茨城の年寄りたちは「歳に不足はねぇけどなぁ〜」と言って悲しみを和らげるんだけど、美輪さんは別。あの方だけはずっとこの世で生きながらえると思っていたもの。そうかぁ、美輪さん、亡くなったのか〜と思ったら急に目頭が熱くなった。
 
 私が美輪さんをしょっちゅう身近で見ていたのは、私が20 代半ばだから美輪さんは40代後半の頃。場所は銀座にあった『銀巴里(ぎんぱり)』というシャンソン喫茶よ。コーヒー800円で客が多くない日は入れ替えなしでね。右手の楽屋から歌い手が次々に現れて一幕の芝居みたいな歌を聴かせてくれるの。現実逃避するにはこんなに安くてお手軽な場所はなかったのよ。

 誰が目当てというわけではない。いつもふらりと立ち寄っていたのに、なぜか美輪さんに当たる日が多かったんだよね。メディアの寵児だった時がひと段落していたのかな。喉の調子もあまい良くなさそうで歌い終わるまでハラハラしながらステージを見ていたっけ。

 出番を終えると「どうぞ、リクエストしてください」とあの声で客席に呼びかけることもあったけど、とてもじゃないけどそばに近寄れるような雰囲気じゃないわよ。

「あらそう〜? まぁ、そんな大人しい人ばかりじゃないもの。いろんな方からリクエストをもらったわよ」

 それから10年くらい経って、美輪さんの自宅でインタビューをする機会に恵まれたの。その時、『銀巴里』でのことを話すとあの顔で微笑んでくれた。

「ブスはいいわよ〜」自宅インタビューで笑い転げた『美人論』

 美輪さんのご自宅がこれまた度肝を抜くような邸宅でね。なんたって観音開きの玄関の正面にはどーんとクリムトの『接吻』だよ。落ち着いて考えたらホンモノはオーストリアにあるからレプリカなんだけど、靴を脱ぎながら見ていると、もしや?と思っちゃう。

『女性セブン』のインタビューでテーマは『美人論』。リビングに通されて話を聞き始めたらそりゃあもう、面白いったらない。「美人は大変なんです。若いころはそりゃあ、みんながチヤホヤするけどある時を境にピタッと見向きもされなくなります」と言い、顔をヒタと見る。そしていかにもの作り笑いで「その点、ブスはいいわよ〜。ずっと昨日の続きで明日が来ます」って、そう言ったんだから。もう笑い転げたわよ。

 忘れられないのはその言葉だけじゃない。どでかいエメラルドの指輪はホンモノっぽいけれど、目が慣れてくるとリビングの椅子や敷物がどこかチャチな感じがするの。美輪さんは「みんな舞台で使ったものよ」とサラッと言うんだけどね。そうか。玄関の絵もそうだけどホンモノっぽいニセモノ、てか、ちゃんとしたニセモノが好きだったのか。

 お目にかかって話したのはその時だけだけど、それから何度コンサートに行ったかしら。そのたびに、美輪さんが作り出す壮大なニセモノの世界に酔いしれた私。

東京駅ホームでの“記者習性”と、消えない心の支え

 あ、今思い出した! 北陸新幹線が金沢まで開通したばかりの時だから約10年前だね。金沢でコンサートがあったのかしら。東京駅で金沢行きの新幹線に乗り込む美輪さんとホームですれ違ったのよ。黄色いヘアーを隠すつもりか、ニット帽をかぶってスッピンだったから気づいたのは美輪さんがお付きの人と車両に消えた後なの。

 それで、これは長年の週刊誌記者の習性だね。とっさに後を追って新幹線に乗り込み、発車を知らせるベルが鳴る中、すれ違うフリをして通路を直進し、美輪さんがあの声で荷物を上に乗せる、乗せないの話をしているのを聞きながら、隣のドアから大急ぎでホームに降りた。

 それにしても参った。何がって、一生働くと決めている私は、美輪さんだってまだ働いているんだから私も大丈夫とどこかで思っていたんだね。何の根拠もないことだけど存在そのものがどれだけの人を安心させたかよ。

 無敵の“魔女”でもいつかは旅立つ時がくるんだね。美輪さん、ありがとうございました。どうぞ安らかに──。

◆ライター・オバ記者(野原広子)
1957年生まれ、茨城県出身。体当たり取材が人気のライター。これまで、さまざまなダイエット企画にチャレンジしたほか、富士登山、AKB48なりきりや、『キングオブコント』に出場したことも。バラエティー番組『人生が変わる1分間の深イイ話』(日本テレビ系)に出演したこともある。2021年10月、自らのダイエット経験について綴った『まんがでもわかる人生ダイエット図鑑で、やせたの?』を出版。実母の介護も経験している。

関連キーワード

コメント

ニックネーム可
入力されたメールアドレスは公開されません
編集部で不適切と判断されたコメントは削除いたします。
寄せられたコメントは、当サイト内の記事中で掲載する可能性がございます。予めご了承ください。

最近のコメント

シリーズ

【10周年特別企画】私の介護
【10周年特別企画】私の介護
介護ポストセブン開設から10年。多くの著名人が、自身の介護について語ってきました。それらの貴重な声をインタビュー集としてお届けします。
【10周年特別企画】想いよ届け!~挑戦者たちの声~
【10周年特別企画】想いよ届け!~挑戦者たちの声~
超高齢社会の課題に挑む人々の熱い想いに迫る人気インタビュー企画をまとめて紹介します。
新設情報!老人ホーム、介護施設、デイサービス
新設情報!老人ホーム、介護施設、デイサービス
老人ホーム、介護施設、デイサービスの新設情報をご紹介!
【脳活】でうっかり物忘れを楽しく防ぐ!
【脳活】でうっかり物忘れを楽しく防ぐ!
うっかり物忘れが増えてきた…。そんなときは、川島隆太教授監修の【脳活】に挑戦! 介護のなかま会員になると問題がダウンロードできます。
介護付有料老人ホーム「ウイーザス九段」のすべて
介護付有料老人ホーム「ウイーザス九段」のすべて
神田神保町に誕生した話題の介護付有料老人ホームをレポート!24時間看護、安心の防災設備、熟練の料理長による絶品料理ほか満載の魅力をお伝えします。
市販の介護食や手作りレシピ、わかりやすい動画も
市販の介護食や手作りレシピ、わかりやすい動画も
介護食の基本や見た目も味もおいしいレシピ、市販の介護食を食べ比べ、味や見た目を紹介。介護食の作り方を解説する動画も。
「老人ホーム・介護施設」ウォッチング
「老人ホーム・介護施設」ウォッチング
話題の高齢者施設や評判の高い老人ホームなど、高齢者向けの住宅全般を幅広くピックアップ。実際に訪問して詳細にレポートします。
介護の「困った」を解決!介護の基本情報
介護の「困った」を解決!介護の基本情報
介護保険制度の基本からサービスの利用方法を詳細解説。介護が始まったとき、知っておきたい基本的な情報をお届けします。