「血圧の数値に振り回されない」「ウオーキングを習慣に」日本で唯一の薬やめる科医師が解説する降圧剤の減らし方
日本では、高血圧と診断されると降圧剤で血圧を下げる治療が一般的だ。しかし、医師に勧められるまま薬を飲み続け、「本当にこのままでいいのだろうか」と不安を抱える人は少なくない。降圧剤は血圧を下げる一方で、効きすぎによるめまいや立ちくらみなどの副作用を招くこともある。血圧が安定していれば、生活習慣の改善を前提に減薬を目指せるケースもあるという。日本唯一の「薬やめる科」の医師に、降圧剤を見直すためのアクションプランを聞いた。
教えてくれた人
松田史彦さん/医師・松田医院院長
血圧を安定させつつ、降圧剤をやめることは可能
副作用や多剤併用時のリスクから「少しでも薬の種類を減らしたい」「できれば降圧剤の服用をやめたい」と考える患者は多い。
そんな願いに対し、「血圧を安定させつつ、降圧剤をやめることは可能です」と断言するのが、日本唯一の「薬やめる科」を開設する松田医院院長の松田史彦医師だ。
「降圧剤だけで3種類以上も服用している患者さんが少なくない。副作用の影響を考えると、血圧や体調を確認しながら、まずは1種類減らすことが望ましい。実際には3種類から2種類にしても、体調がほとんど変わらず、むくみや疲れなどが軽減したというケースが多いのです」(松田医師。以下「」内は同じ)
減薬のための最初のステップは、血圧の数値に振り回されないことだという。
「数値を気にして1日に何回も血圧を測る人がいますが、やめましょう。血圧は常に変動します。朝や寒い時に血圧が高くなるのは当たり前。血圧の数値を忘れて好きなことをやるほうがリラックスして数値が落ち着いてきます」
そして第二のステップは「歩く」こと。
「血圧を下げるための生活習慣として運動は不可欠。特にウォーキングなどの有酸素運動には血圧を下げる効果が認められています。毎朝ちゃんと起きて、歩くこと。外に出られない時は部屋の中で屈伸運動をするなど、無理のない範囲でやっていきましょう」
こうして数値が安定してきたら、「減薬」のステップに移行する。
「上が『年齢+100』くらいになってきたら、『年齢+90』を目指しつつ、まず1種類減らすことを考えます」
減薬する場合はまず「やめやすい薬」から始めよう
この際に重要なのは「やめやすい薬」を知ることだという。
「効き目の高いCa拮抗薬やARBを残し、効き目がマイルドなACE阻害薬やβ遮断薬などからやめることを検討します。β遮断薬はウォーキングの継続などで血流が改善されていれば減らしやすい薬です」
このほか、併用薬としてサイアザイド系利尿薬が処方されている場合は、優先的に減薬すべきだと松田医師は言う。
「体内の余分な水分などを尿として排出し、多少血圧を下げたり、むくみを取ったりする効果がありますが、もともと頻尿のある高齢者は、利尿薬によって頻尿がもっとひどくなる可能性がある。ほかの降圧剤と併せて処方されているなら、第一の選択肢になるでしょう」(同前)
薬の種類を減らすだけでなく「量を減らす」視点も大切だ。すでに1種類しか服用しておらず、体調と血圧が長期的に安定している場合、「1回の服用量を減らすことを考えましょう」と松田医師は言う。
「10mgの錠剤を5mgに、といった具合に進めてきます。いずれにしても自己判断で断薬、減薬するのは危険なので、必ず主治医と相談のうえで行なってください。もし主治医との折り合いがつかなければ、ほかの医療機関を受診してセカンドオピニオンを求めてみるのもいいでしょう」
いきなり降圧剤をやめるのは副作用以上にリスクが大きい。確実にステップを踏みつつ、減薬、断薬を目指したい。
「降圧剤」のやめ方フローチャート
【1】血圧を1日に何度も測るのをやめる
血圧は朝と夜でも数値が変わる。何度も計測して数値に振り回されるのではなく、血圧を忘れる時間を作るほうが数値は安定する
【2】有酸素運動で上(収縮期)が「年齢+100」程度に安定
ウォーキングをはじめ適度な有酸素運動には血圧を下げる効果がある。室内で屈伸運動でもいい。上が「年齢+90」程度で安定してきたら減薬に入る
【3】「やめやすい薬」から減らしていく
3種類以上の降圧剤が処方されている場合は、まず1種類減らすことから始める。その際、「やめやすい薬」を把握することが大切。Ca拮抗薬やARBに比べ、β遮断薬やサイアザイド系利尿薬は効き目がマイルドでやめやすい
※週刊ポスト2026年6月19日号
●日本初「薬やめる科」外来の断薬専門医が教える降圧剤のやめ方・減らし方
