《40年ぶりの再会》オバ記者、人気脚本家・羽原大介さんとの不思議な縁をたどる
大規模再開発で様変わりした新宿駅で、まさかの“30分迷子”。慣れ親しんだはずの街で方向感覚を失ったオバ記者(69歳)は、そこから過去の記憶と人の縁をたどり始める。脚本家・羽原大介さん(61歳)との再会、思いがけない形でつながる若い世代――。オバ記者ことライターの野原広子氏が変わりゆく街の風景と重なるように、人生の時間と不思議な縁を描く。
新宿駅で“迷子”に
新宿駅周辺が大変身中なの、知ってます? どのくらい変わっているかというと、山手線ホームに降りてから西口中央改札にたどり着くまで、なんと30分もかかったんだから。
あの日は旅雑誌の撮影で、新宿からロマンスカーに乗って箱根へ向かう予定。12分前には着いていたし、西口改札を出てすぐの交番前なんて定番中の定番、迷うはずがないと思っていたの。
ところが地下に降りた瞬間からさっぱりわからなくなった。大規模工事で動線が変わり、人の流れに乗ったらデパートに入り込んでしまい、引き返しても見覚えのある風景に出会えない。駅員さんも見当たらず、完全に迷子よ。
横浜や川崎ならまだしも、小学生の頃から通い、上京後は仕事も遊びも新宿だったこの私が迷うんだから、今の新宿は別物だと思ったほうがいいわね。
あの人気脚本家とは旧知の仲
その新宿で私は面白い人と出会っている。時は1989年8月。そう言い切れるのは、PARCO劇場で初上演されたつかこうへい作『幕末純情伝』のおかげなの。当時、私は新宿歌舞伎町にある反社の巣窟のようなマンションに事務所をかまえていて、そこにライター仲間の紹介でふらりとやってきたのが羽原大介さん。聞けばサンミュージックでアイドルのマネジャーをしていたのを辞めて、つかこうへいさんの運転手兼役者になったと言う。
いやいや、待て待て。サンミュージックといえば私は19歳の時、丸1年、四ツ谷のビルの1階の喫茶店でウェイトレスをしていたのよ。あの人この人…いくらでも名前が出てくる。
そんなこんなで32歳の私と25歳の羽原さんは、仕事をしたり、芝居のチケットを手配してもらったりと面白い時間を過ごしたっけ。
あれから40年。私は69歳、羽原さんも61歳。その間に彼は映画『パッチギ』や『フラガール』、朝ドラ『マッサン』『ちむどんどん』の脚本家として有名になった。そして私は週刊誌記者から顔出しのオバ記者になったものの、まぁ、変わり映えがしないわね。
フラガールが繋いだ“数奇な縁”
しかし人の縁とは不思議なものでね。長年、羽原さんとは会うこともなかったのに、赤坂レッドシアターで羽原組が芝居『星の流れに』を上演していると知って昨秋、会いに行ったの。が、それだけで終わらなかった。
この春、私の洋裁の師匠が「現代の名工」に選ばれてその祝賀会の司会を仰せつかった。その時に助手を務めてくれたのが大学2年生の師匠の孫娘で、聞けば「葵季柚歌(あおきゆいか)という名前でフラガールの舞台に立つんです」とな。「フラガールって羽原さんの?」「えっ? 知ってるんですか?」「知っているもなにも」と、祝賀会の真っ最中にびっくり仰天よ。
で、「よし、じゃあ、そのことを羽原さんに話して驚かしてやろう」と再び赤坂レッドシアターへ。「えっ?」と羽原さん、顔が固まっていたわよ。そして芝居は泣いた泣いた。何がってフラガールのキレのあるダンスに泣いたねぇ。子供のころ、常磐ハワイアンセンターで観た呑気なフラダンスとは別ものだ。もう、どんだけの月日が流れたのよ、と思ったらまた涙が止まらなくなった。
時は大河のような流れもあれば…
そうそう。新宿西口中央改札の待ち合わせだけど、ライターのWさんと会えたのは約束の時間の15分後。要は30分も駅中をうろうろしちゃったわけ。このことがあまりに悔しくて、後日、新宿駅東口を歩いてみたのよ。そうしたらすごい人出でね。なんと大スクリーンに映し出された競馬の真っ最中だったの。で、その横の新宿アルタは取り壊されていた。
でね。思ったの。世の中って10年20 年、何も変わらない大河の流れのような時もあれば、川幅が狭くなって時の流れがやけに早くなる時期もあるんだなと。そして去年あたりからいきなり急流に変わってないか、と。
ネットを開けば流れている声はAIで人間じゃないし、同世代と話せば相談事は何聞いても恥をかかないチャットGPTばっかりだと言うの。そんなわけで69歳! 時代に取り残されるな、と自分を励ましている。
◆ライター・オバ記者(野原広子)
1957年生まれ、茨城県出身。体当たり取材が人気のライター。これまで、さまざまなダイエット企画にチャレンジしたほか、富士登山、AKB48なりきりや、『キングオブコント』に出場したことも。バラエティー番組『人生が変わる1分間の深イイ話』(日本テレビ系)に出演したこともある。2021年10月、自らのダイエット経験について綴った『まんがでもわかる人生ダイエット図鑑で、やせたの?』を出版。実母の介護も経験している。
