脳は歩くほど若返る!専門医直伝【脳活ウォーキング】もの忘れや認知症予防にも役立つ8つの歩き方
もの忘れや捜し物が増えるといった加齢のサインが出始めたら、「歩くことが、もっとも重要な脳活になる」と脳内科医の加藤俊徳さんはすすめる。ただ歩くだけでなく、ひと工夫するだけで脳がイキイキする8つの「ウオーキング術」で、脳をぐんぐん若返らせよう。
教えてくれた人
加藤俊徳さん/脳内科医、加藤プラチナクリニック院長、「脳の学校」代表。MRI脳画像診断のスペシャリスト。著書に『最強のウォーキング脳』(時事通信社)、『脳がみるみる元気になる 早口ことば 遅口ことば』(宝島社)ほか多数
歩くことで脳が活性化する
加齢とともに運動量は減少していくが、「体を動かせる限り、歩いて脳の活性化を図る必要がある」と脳内科医の加藤俊徳さんは指摘する。
「いろいろな運動の中で、歩くことは運動神経や年齢を問わずできる『最強の脳活運動』です。というのも歩くことには必ず目的が伴います。足ひとつとっても自分の意志がなければ動かないように、歩く行為は極めて主体的です。漫然と歩いているようにみえて、『動かす』『意欲』『思考力』など、脳のいろいろな機能を働かせている。つまり、歩くことが脳を活性化するのです」(加藤さん・以下同)
加藤さんが脳の働きを8分類した「脳番地」の中で、最初に発達するのが、体の動きを司る「運動系脳番地」。ここを起点に、ほかの脳番地が働き出し、話したり、自分の気持ちを伝えられるように成長していくという。
「歩いて体を動かすことで運動系脳番地にスイッチが入り、脳全体が活性化されるのが脳の仕組みです。逆に言えば、歩かなければ脳は衰えるばかりなんです」
実際、ウオーキングが認知症のリスクを下げるという報告(※1)もある。
「認知症になると、現在の日付や自分がいる場所を把握する『見当識(けんとうしき)』(※2)が失われていきます。その点、ウオーキングは歩いた距離や時間、家を出てから帰るまでの行程を計画・実行する。それが認知症の予防につながります。今回、紹介している8つの脳活ウオーキングは、いろいろな脳番地を刺激できる工夫がちりばめてあります。通常のウオーキングに組み込むことで、ただ歩くよりもっと脳が活性化できるんです」
体と脳の健康をいつまでも維持するために、脳活ウオーキングを習慣にしよう。
※1:Tomata Y, et al. Impact of time spent walking on incident dementia in elderly Japanese. Int J Geriatr Psychiatry. 2019;34(1):204-209. doi:10.1002/gps.5011.
※2:現在の日付や時刻、場所、周囲の状況・人物を総合的に把握し、自分が置かれている状況を正しく理解する能力のこと。
8つの脳番地
※「脳番地」は脳の学校の登録商標です。
【1】運動系脳番地
体を動かす指示を出す領域。刺激されるとほかの脳番地の働きも活性化される。
【2】感情系脳番地
自分や相手の感情を理解したり、共感するときに働く。
【3】視覚系脳番地
左右で働きが異なり、左脳で言葉や文字を、右脳でイメージを理解する。
【4】思考系脳番地
思考、判断、創造など高度な役割を担う。
【5】聴覚系脳番地
聞き取りに関する領域。発達すると暗記力や絶対音感が備わる。
【6】理解系脳番地
情報の整理や理解など高度な役割を担う。
【7】伝達系脳番地
言語やコミュニケーションにかかわる領域。
【8】記憶系脳番地
記憶の形成・蓄積を担う領域。
脳科学者も毎日実践している目的別「脳活ウオーキング」8選
<基本編>脳活ウオーキングのやり方
<Q1> どのくらい歩けばいい?
「まず、通常のウオーキング習慣を持つこと。毎日行うのが理想です。歩く量は1日単位で考えるより、1週間で通算4km歩くなど無理のない目標で始め、自分のペースで距離を延ばすのがおすすめです。脳活ウオーキングは、その通常ウオーキングの合間に組み込んでください。時間は好きなだけ、1日に何回行ってもOK。自分の弱点に絞って強化するのでもいいですし、脳番地をまんべんなく働かせたければ8つのメニューを日替わりで行いましょう」(加藤さん・以下同)
<Q2> 歩く配分にルールはある?
「時間が取れないときは、ウオーキングを朝晩に分割してもいいですし、買い物や通勤時に長めに歩くのでも構いません。1週間の帳尻が合うよう1日の中で調整すればOKです」
<Q3>歩く時間帯は?
「朝は覚醒効果、昼はリセット効果、夕方以降は脳疲労を癒し、血圧を下げる効果が。ライフスタイルに応じて選んでください」
【1】ターゲットウオーキング
「目的を持ち、見過ごしがちなものに目をとめることで視覚的な注意力が鍛えられ、集中力も向上します。好きなものを見るとより効果的です」(加藤さん・以下同)
<やり方>
「赤いもの」「アルファベットのB」「数字の9」などアイテムを決め、それを見つけながら歩く。
<こんな人に>
集中力が持続しない。
<使う脳番地>
運動系、視覚系、理解系、伝達系。
【2】しりとりウオーキング
「歩きながら考えることで脳全体が刺激されます。言葉探しに集中することで、頭の中のストレスが解消される効果もあります」
<やり方>
歴史上の人物(例:森鴎外→伊藤博文)や、歩く途上に見えるもの(例:橋→信号→運河)のように、テーマを決めてしりとりを行う。
<こんな人に>
もの忘れが増えた、言葉が出てこない。
<使う脳番地>
運動系、聴覚系、理解系、伝達系。
【3】積み上げしりとりウオーキング
「誰かと話しながら歩くことで脳はさらに活性化します。認知機能の低下予防やうつ予防として、外出したがらないご家族を散歩に誘ってみてください」
<やり方>
「イヌ」→「イヌ→ヌイグルミ」→「イヌ→ヌイグルミ→ミルク」……のように、しりとりで出た言葉を、初めからすべて復唱していくのがルール。
<こんな人に>
記憶力を強化したい。
<使う脳番地>
運動系、思考系、聴覚系、伝達系、記憶系。
【4】コースチェンジウオーキング
「捜し物ばかりしている人は、ふだん脳に刺激がないため『置いたこと』を意識していないのかもしれません。コースチェンジすると脳への刺激が加わり、注意力を高める効果が期待できます」
<やり方>
定番のウオーキングコースを、あえて違うコースに変えてみる。
<こんな人に>
捜し物が増えた、決断に時間がかかる。
<使う脳番地>
運動系、視覚系、思考系、記憶系。
【5】早口・遅口ウオーキング
「口の動きは体のリズムと連動したがるため、歩調と口調の速さを逆にすることで脳が目覚め、眠っていた聴覚も刺激されます。聴力の低下は認知症リスクを高めるので、鍛えておきましょう」
<やり方>
「ぱぴぷぺぽ」を早口で言うときはゆっくり歩き、遅口で言うときは早歩きをする。これを繰り返しながら歩く。
<こんな人に>
テレビの音や会話が聞き取りづらい。
<使う脳番地>
運動系、聴覚系。
【6】インターバルウオーキング
「場所を決める、緩急をつけて歩くなどルールを決めて集中するうちにイライラが消えます。『少し歩いて止まる』を繰り返すのもおすすめ。決断力を高めるほか、記憶を定着させる効果もある」
<やり方>
看板や信号など目印や歩数などを決め、早歩きとゆっくり歩きを交互に行う。
<こんな人に>
イライラしやすい、不安が強い。
<使う脳番地>
運動系、感情系、視覚系。
【7】ラジオを聴きながら踏み台昇降
好きなラジオを聴きながら段差のあるところを上り下りする。
<こんなときに>
暑さや雨で外に出られない日。
<使う脳番地>
運動系、聴覚系、理解系、感情系、思考系。
【8】腹式呼吸ウオーキング
「足を動かしてラジオを聴くと理解力が深まるため、語学や学びの番組を聴くのも効果あり。座って聴くより理解度が深まります。ネガティブな気分になる番組はおすすめしません」
<やり方>
鼻から息を吸うときにお腹を膨らませ、口から吐くときにお腹をへこませる腹式呼吸をゆっくりと行いながら室内を歩く。
<こんなときに>
暑さや雨で外に出られない日
<使う脳番地>
運動系、聴覚系、理解系、感情系、思考系。
脳活ウオーキングで体と脳の機能を活性化
「脳活で最初に強化すべきは目。見ることと動くことが連動しないと、きちんと歩くことができなくなります。草花を見つける、立ち止まって空を見上げるなど、何かを発見しながら歩くと、視覚的な注意力が活性化されます。【1】の『ターゲットウオーキング』がいいトレーニングになるでしょう」(加藤さん・以下同)
次に、中高年の多くが心配な「記憶力の低下」。これに効くのが【2】や【3】の『しりとりウオーキング』。
「特に【3】は、一緒に歩く息子(20代)にはかないませんが(笑い)、私も訓練して、15個までなら楽に言えるようになりました」
「捜し物が増えた」人は、【4】のように定番のコースを変えてみよう。
「同じ道を歩いていると変化を感じず、脳への刺激が弱くなることがあります。捜し物が多い、捜し物を見つけられないという人は、日常がルーティン化されている可能性がある。誰かの指示ではなく、自らの意思でルーティンを破ると、脳に新たな刺激が入ります」
聴力の低下も、認知症リスクを高める要素だ。
「【5】のように、歩きながら自分で発した音を聞くと聴覚系脳番地の強化になります。高音域の聞き取り訓練には『ぱぴぷぺぽ』という破裂音を発するのが効果的。これに加えて【6】のように歩く速度を工夫すると、より効果が上がります」
楽しむほど脳が活性化される
梅雨や酷暑だからと休んでいては、脳のためにならない。家でできる【7】【8】で、歩くことをあきらめないで!
「好きなラジオ番組を聴きながら足を動かすと、聴覚系や理解系の脳番地が刺激されます。また、【8】の『腹式呼吸ウオーキング』は交感神経を鎮めて自律神経を整えるほか、視覚系脳番地が刺激されて視界が広がる効果も。丹田(たんでん)あたりを意識すると血流が改善し、脂肪燃焼も期待できますよ」
いずれのウオーキングも「いやいや」では、脳への効果が見込めないという。
「『やらされている』と感じた脳は主体性がなく、働きません。一方、楽しければ脳は活性化し、新しい理解や発見が生まれます」
脳が喜ぶ脳活ウオーキング。「面白そう」と思ったいまが始めどき!
取材・文/佐藤有栄 イラスト/ニシノアポロ 写真/PIXTA
※女性セブン2026年6月25日号
●新しいことへの挑戦が脳を活性化 ガラケーをスマホに替えたり音楽を聴くだけでもOK
●脳のピーク年齢「人の顔を覚えるのは32才、集中力は43才」老化を防ぐバランス体操で脳活!
●「ウオーキングしながらのおしゃべり」は脳を活性化させ認知機能低下を抑制する!WHOも認めた「認知症を緩和・予防する行動」とは?【専門家監修】
