40才以上の約8割が悩む“腰痛” 「脊柱管狭窄症」や「腰椎椎間板ヘルニア」を併発していることも<腰痛のタイプが分かる簡単診断&改善ストレッチ>
「腰痛は加齢が原因だから治らない」と諦めていませんか?「一口に腰痛といっても原因は複合的。本当の原因を把握できず治療法を間違えている人が多い」と、柔道整復師の酒井慎太郎さんは言う。特に40才以上の約8割がなるにもかかわらず「脊柱管狭窄症」は診断が難しく、最適な治療を受けられず痛みに苦しんでいる人も多い。そこで、酒井さんに腰痛の見抜き方や最強の改善メソッドを聞いた。
教えてくれた人
酒井慎太郎さん/柔道整復師、さかいクリニックグループ代表。これまで100万人以上の腰や首、肩、ひざの痛み、スポーツ障害などの施術にあたる。主な著書に『図解 今すぐ治せる!脊柱管狭窄症』(Gakken)など。
脊柱管狭窄症患者の9割が別の病気も
老化による腰の痛みや違和感の原因は、2つに大別される。前かがみになったときに痛む「腰椎椎間板ヘルニア」と、後ろに反ったときに痛む「脊柱管狭窄症」だ。
「和歌山県立医科大学の調査によると、無症状も含めると40才以上の約8割が『脊柱管狭窄症』に罹患していることがわかっています」(酒井さん・以下同)
脊柱管とは腰椎の背中側にある組織で、内部には神経や血管が通る。加齢などで周りの組織が変形して脊柱管が狭くなると、内部の神経や血管を圧迫。症状が進むと、お尻や足のしびれ、腰の痛みなどを引き起こすが、必ずしも腰が痛むわけではないのが特徴だ。
一方、腰椎椎間板ヘルニアは、前かがみなどの悪い姿勢からくる腰まわりの筋肉の緊張により、腰椎のお腹側がつぶれ、椎間板から髄核(ずいがく/※)がはみ出て、神経を圧迫。これが腰痛の原因となる。女性は特に首の骨がまっすぐな状態で固定される「ストレートネック」が多いため、背中と腰が丸まりやすく、発症しやすい。
「私の治療院を訪れる脊柱管狭窄症の患者さんのうち、9割が腰椎椎間板ヘルニアも患っています」
姿勢の悪さなどが原因で先に腰椎椎間板ヘルニアを発症。徐々に悪化して脊柱管狭窄症も併発していくケースが多いという。
「脊柱管狭窄症だけでいえば、発症するのに性別や運動経験の有無、姿勢のよしあしは関係なく、普段から反り腰になりがちな人、長時間座っている人がなりやすいといえます」
※椎間板とは、背骨を構成する一つひとつの骨の間にある、クッションのような組織。髄核とは椎間板の中にあるゼリー状の組織。
放置すると女性は特に寝たきりになりやすい
脊柱管狭窄症の改善方法は「背中を丸めて過ごすこと」だが、腰椎椎間板ヘルニアも併発している場合、この方法だと、痛みが改善しないばかりか、背骨が丸くなり、寝返りが打てなくなったり、立てなくなったりと症状が悪化する。
「女性の場合、更年期を過ぎると骨粗しょう症になりやすいため、脊柱管狭窄症や腰椎椎間板ヘルニアによって背骨や関節に柔軟性がなくなって転びやすくなると、骨折して寝たきりになる可能性が上がります」
そうならないためには、腰の痛みの本当の原因を知り適切なケアをすることが大切だ。まずは、左のチェックシートで確認しよう。
「薬物治療や手術は、日常生活の見直しで改善が見込めないとわかってから検討しても遅くはありません」
簡単診断「あなたの腰痛タイプはどれ?」
<1>椅子に30分以上座っている間や安静時の状態
●痛くない(または症状が変化する) → Aタイプの腰痛
●痛い(またはしびれる) → Bタイプの腰痛
<2>床に正座をしている間の状態
●痛い(またはしびれる) → Aタイプの腰痛
●痛くない → Bタイプの腰痛
<3>せき・くしゃみが腰に響くか
●響かない → Aタイプの腰痛
●響く → Bタイプの腰痛
<4>体を動かしたときの痛みの出方
●動いていると痛みが増す → Aタイプの腰痛
●動き始めは痛いが、動いているうちに楽になる → Bタイプの腰痛
<5>痛みを感じる時間帯
●夕方や雨・台風の日 → Aタイプの腰痛
●朝 → Bタイプの腰痛
<6>痛みの種類・主に痛む部位
●重だるい鈍痛が、腰よりも脚やお尻に現れる → Aタイプの腰痛
●ズキンとした激痛が主に腰に現れる → Bタイプの腰痛
【チェックシートの結果から診断しよう!】
●Aにだけ当てはまる項目がある → 脊柱管狭窄症による腰のトラブルの可能性が
●Bにだけ当てはまる項目がある → 腰椎椎間板ヘルニアによる腰のトラブルの可能性が
●A・B両方に当てはまる項目がある → 腰椎椎間板ヘルニアと脊柱管狭窄症の混合状態