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健康

「頚椎症」中高年に増える“首の痛み・しびれ”を和らげるストレッチ&生活習慣を理学療法士が指南

 首や肩の痛み、腕のしびれ。中高年になると増えてくるこれらの不調はもしかしたら「頚椎症(けいついしょう)」かもしれない。この症状は、放置すると日常生活に影響が出てしまうことも。理学療法士として数多くの患者さんをサポートしてきた黒木綾乃さんに、自宅で無理なく続けられるストレッチや、痛みを悪化させない生活習慣のポイントを教えてもらった。

教えてくれた人・文

黒木綾乃(くろきあやの)さん/理学療法士・ヨガインストラクター・介護予防運動指導士・パーソナルトレーナー

理学療法士として総合病院、訪問リハビリ、老人保健施設、デイケア、デイサービス、有料老人ホーム、介護施設役員などを経験。さまざまな現場でリハビリテーションを提供する。長年のリハビリテーションの経験から予防の発展と普及のため、医療ライターとしても活動中。現在は現場でのリハビリテーションの傍ら、一般の方へ腰痛や肩こり予防のパーソナルトレーニングも行っている。

中高年に増える“首の痛み・しびれ”「頚椎症」の特徴

「首や背中が痛い、手や腕がしびれる…」そんな悩みを抱える方は少なくありません。特に中高年に多いのが「頚椎症(けいついしょう)」。これは、加齢による頚椎周辺の変化(椎間板の膨隆(背骨のクッションがふくらんで神経を押しかけている状態)や、骨棘(こっきょく)と呼ばれる骨のとげ)によって、腕や手に向かう神経が圧迫され、炎症や痛み、時にはしびれが生じる状態です。首を後ろに反らすと痛みが強くなるのが特徴で、肩から腕にかけての不快感やしびれを伴うこともあります。

 理学療法士として指導してきた改善事例を交えながら、自宅で無理なく続けられる頚椎症緩和に効果的なストレッチと注意点、ケアのポイントを紹介します。是非参考になさってください。

デスクワーク中心だったAさんに起きた“首の痛みとしびれ”。診断は「頚椎症性神経根症」

 Aさん(60代・女性)は、以前からデスクワーク中心の生活を送っており、もともと肩こりや背中の痛み、手足の冷えや浮腫みなどの不調を抱えていました。運動習慣はほとんどなく、身体を動かす機会も少ない日々。首周りの不調を感じていたものの、忙しさからケアを後回しにしていたそうです。

 ある日、首の後方から右腕にかけて痛みが出現。整形外科を受診し、問診・検査・レントゲン検査などの結果、「頚椎症性神経根症(けいついしょうせいしんけいこんしょう)」と診断されました。

 頚椎症の中でも「神経根」と言われる部分の神経が圧迫されると、「頚椎症性神経根症(けいついしょうせいしんけいこんしょう)」と診断されることもあります。Aさんの場合も、このタイプの症状が現れていました。首を反らすと痛みが強くなり、一方で、首を前に曲げると少し楽になるという状態でした。右の前腕には軽いしびれもあり、日常生活に支障が出ていました。

痛みを和らげる、3つのストレッチとポイント

 Aさんの姿勢を評価したところ、頭部が前方に出て骨盤が後ろに倒れる、いわゆる「猫背姿勢」が見られました。日頃のデスクワークの影響で、肩甲骨回りの柔軟性も低下していました。

 実は、成人の頭の重さは約4~6kgになり、ボウリングの玉1個分ほどもあります。そのため、普通に生活をしていても首には大きな負担がかかります。

 症状を和らげるには、頭を首のみで支えず、いかに体全体で支えられるかが重要です。そこで肩甲骨回りと体幹を緩め、首への負担を減らす日常的なケアを指導。

 デスクワーカーであるAさんには、次の3つのストレッチを指導しました。

注意事項

 痛みが強く出ている時期や、安静時にも痛みがある場合は決して無理に動かさず、ストレッチは控えてください。ストレッチ中に痛みやしびれが強くなる場合はすぐに中止し、担当医や専門家に相談しましょう。手の細かい動きが困難になる、足の運びが悪くなるなどの症状を伴う場合は、早めに受診することが大切です。

 痛みがあるからと自己判断でストレッチはやらないでください。担当医に必ず相談してください。

3つのストレッチ

【1】胸のストレッチ(胸郭を広げる)

【2】胸・脇のストレッチ(胸・肩まわりのゆるめ)

【3】胸の回旋ストレッチ(体幹のリリース、体側・胸のストレッチ)

 ストレッチをする際に、ストレッチポールを使用しますが、バスタオルを2枚と枕などで代用できます。硬すぎる場合は長時間使用しないよう注意しましょう。

ストレッチ用タオルの作り方

 胸の背骨の下に引きます。縦の長さが30〜50センチ程度になるように作成してください。

1. バスタオル2枚を重ねて三つ折りにする

2. タオルの端にクッションまたは枕を置く

3. バスタオルでクッションをきつく巻いていく

4. 巻きがゆるまないようにバンドやゴムで固定する

【1】胸のストレッチ(胸郭を広げる)

1. 床に置いたストレッチポール(or 手作りストレッチポール)の上に、背中を沿わせるようにして仰向けに寝ます。膝はしっかり曲げておく。枕などを使って、首の位置を安定させる。

2. 両手を左右に大きくひろげ、深く深呼吸をしながら、30秒ほどキープ

3. 慣れてきたら、両手を大きく広げて、胸の前を伸ばします(30秒×2~3回実施)

ポイント

 首が過度にうつむいたり、後ろに反りすぎたりしないよう、枕の高さを調整。呼吸と共にリラックスして行うと効果がUPします。

【2】胸・脇のストレッチ(胸・肩周りのゆるめ)

1.床に置いたストレッチポール(or 手作りストレッチポール)の上に、背中を沿わせるようにして仰向けに寝ます。膝はしっかり曲げておく。

2.両手を組んでバンザイする(両ひざをしっかり曲げ腰が反りずぎないよう注意)

3.深く深呼吸をしながら、30秒ほどキープ(30秒×2~3回実施)

ポイント

 胸椎(胸辺りの背骨)の伸びを意識し、脇も伸ばします。腰に負担がかからないよう反りすぎに注意しましょう。

【3】胸の回旋ストレッチ(体幹のリリース 体側・胸のストレッチ)

1.リラックスして横向きに寝る

2.膝、股関節を90度程に曲げ膝を手で押さえる

3.背筋をまっすぐにし、上半身を回旋しながら手を広げていく

4.深く深呼吸をしながら、30秒ほどキープ。左右同じ動きを行う。(30秒×2回程実施)

症状を和らげるのに効果的な、ケアのポイント4

 Aさんの場合、日常生活に取り入れやすい4つのケアの工夫が、首の痛みやしびれの軽減に効果的でした。

【1】ストレッチで姿勢を整え、首への負担を軽減

 頚椎症の症状を和らげるためには、日常生活で首に過度の負担をかけないことが大切です。まず、胸回りのストレッチをこまめに行うことで、デスクワークでの首への負担が軽減されました。胸郭が広がることで呼吸も深くなり、首まわりの血流アップ効果もあります。

 また、体幹のストレッチをすることで、首だけを意識するのではなく、体全体で頭部を支え、首への負担を減らすことが大切です。

【2】水分補給

 次に、水分補給を指導しました。長時間のデスクワークによって血流は滞りがちです。こまめな水分摂取は、血流改善を促すだけでなく、筋肉や神経の働きを助け、疲労感の軽減にもつながります。長時間同じ姿勢をとらないようにし、パソコンやスマートフォンを使用する際は、うつむき姿勢にならないよう指導しました。

【3】血流改善のためウォーキング

 さらに、運動不足だったAさんにはウォーキングも指導。軽いウォーキングを日常に取り入れることで、全身の循環が促進され、首まわりの緊張も緩和されます。指導したストレッチを行いながらウォーキングすることで、姿勢も整いやすくなり、首への負担軽減が期待できます。

【4】枕の調整

 睡眠中の枕の高さにも気をつけ、首に負担の少ない姿勢で眠ることも大切です。特に、首を反らす動きで痛みが出る方は、低い枕は避けてください。

 これらの習慣を無理なく続けることで、根治ではなく、二次障害の予防と機能維持、再発の予防につながります。

ストレッチとケアを続けたAさんの現在は…

 これらのストレッチやケア習慣を継続することで、Aさんは症状が軽減。頭部が前に突出したいわゆる「猫背姿勢」も改善し、手のしびれなどの症状が出ずに生活を送っています。

注意:ストレッチは痛みが強く出ている時期は避け、担当医や専門家の許可が出てから行いましょう。自己判断で行うのは絶対に止めましょう。

まとめ

 頚椎症に悩む方が快適に日常生活を送るには、首への過度な負担を避けることが大切です。

 第一に、首はとてもデリケートなので、痛みが強く出ている時は、首を急激に動かさず、無理なストレッチ・マッサージをすることは控えましょう。急性期の痛みが治まったら、無理のない範囲で、少しずつ身体を動かすことが重要です。

 また、長時間同じ姿勢で過ごすことや、高い枕、低すぎる枕の使用も頚椎に負担をかけるため、避けましょう。さらにデスクワークが多い方は、重い頭を支える首周りの負担を減らすため正しい姿勢を心がける、水分補給や、ウォーキングといったケア習慣が、再発予防につながります。

 今回ご紹介したストレッチは、すべて自宅で行えるものばかりです。ぜひ、日頃のケアの参考にしてください。

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