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兄がボケました~認知症と介護と老後と「第55回 元気の源」

 インタビューや取材をして記事を執筆するのが、ライターのツガエマナミコさんの本業です。兄の介護で翻弄される日々の中でも、仕事は変わらず精を注ぐマナミコさんですが、介護のなみならず仕事でも悩みはつきもの。今回は、自分を追い詰めない術について記してくれました。

「介護の末の喜劇」を想像できる世の中になってほしい

 先日、インタビューさせていただいた方に訂正や不明点がないか原稿チェックをお願いしたところ、「もっとオブラートに包んで集約してくれるものと思っていましたが、口語のままだったので驚きました」と大幅に訂正されて戻って参りました。

 まだまだ未熟なライター・ツガエでございます。

 でも別のケースでは「こういう言い回しはしていませんよね?」と自分の言葉を重視する方もいらっしゃいますし、録音に残っていても「こんなことは言ってない」と言い張る方もいらっしゃいまして、なかなか難しい世界だと痛感する日々でございます。

 昔ほど落ち込むことは少なくなりましたが、結果として取材対象者に訂正のお手間をとらせてしまう申し訳なさに恐縮することは増えました。全原稿「訂正ナシ」となることを目指して、日々精進しているところでございます。ただ、ここまでライターとして生き延びていることについては、我ながら“たいしたもんだ”と己に賛辞を贈っております。

 それが元気の源になることを、わたくしは介護から学びました。

 誰も見てない、誰もほめてくれないときの究極の自画自賛。自分で自分を褒めて、頭を撫でて、ヨシヨシしてあげるのでございます。自分の外にもう一人の自分を作り出す感覚でございます。

 辛くてもしっかりすることを自分に強いることも、ときに必要ですけれど、それが長期間になると心身が擦り切れるので、気持ちの半分は「緩んだ自分も、できない自分も、それでいいよ」と許していいと思うのです。わたくしは、それが高じて、今や自分に過保護な怠け者になったので、加減が難しいところですが、たまに「介護の末の殺害」といったニュースを見ると、「きっとこの人(犯人)は自分に厳しい人なのだろうな」と思ってしまうのでございます。他人に甘えず、長い間懸命に介護してこられた人が罪人という結果になるのは、なんとも納得がいきません。

 幸いにも私は体を壊さず、心も病む前に人を頼って救われましたけれども、人にはそれぞれ事情があるから悲劇は絶えないのでございましょう。介護の末の悲劇をなくす、というより介護の末の喜劇を想像できる世の中になるといいと思うのですけどね。
 
 さらなる元気の源ナンバー1は、特別養護老人ホームでございます。

 今週も兄の顔を見に行って参りました。おかげさまで問題なく、「ご機嫌もいいし、体調もいいですよ」とスタッフさまにおっしゃっていただきました。

 そろそろクリスマスなので、100均で購入したキラキラモールやオーナメントで部屋を飾り付けて参りました。安上りで申し訳ないと思いながらも、すこしは賑わいを感じてくれたらいいなという妹の浅知恵でございます。もちろん各フロアには大きなクリスマスツリーがあり、各所にリースや飾りもありました。兄がクリスマスを理解しているかどうか怪しいところでございますが、飾り終えると「よかったね」と言ってくれたので、大満足して帰ってきた次第でございます。

 大満足といえば、先日、女子3人で東京・港区でいただいたディナーでございます。ランチの外食は頻繁にありますが、ディナーは半年ぶりでございまして、気合を入れてお着物での参戦でございました。すべてが美味しく、デザートまでいただいて満腹でございました。ただ不満足だったのはキャンセル料でございます。予約は4人でしておりましたが、急遽1人キャンセルしたことにより、キャンセル料を5000円請求されました。

「コース料理を予約したならいざ知らず、そうじゃないのにそれって高くない?」というのが女子3人の正直な感想でございます。それだけ迷惑なキャンセル客が多いのかもしれませんが、3人は予定通り行ったのですし、予約なしで入ってくるお客様もいる中で理不尽を感じずにはいられませんでした。こういう考えはもう古いのでございましょうか……。

 店名に「トラットリア」を冠したそのレストランは、お水も注文(ボトル900円)しないと出てこない本場イタリア仕込みのお店でして、コテコテの日本人としては目を丸くして笑うしかございませんでした。

 ちなみに「トラットリア」の意味を調べると、イタリア語で「家庭的な飲食店」とのこと。お料理が美味しかったのでいろいろ差し引いてもプラスでございましたが、「家庭的かな~?」と疑問が残ったディナーでございました。

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文/ツガエマナミコ

職業ライター。女性62才。両親と独身の兄妹が、2012年にそれぞれの住処を処分して再集合。再び家族でマンション生活を始めたが父が死去、母の認知症が進み、兄妹で介護をしながら暮らしていたが、母も死去。そのころ、兄の若年性認知症がわかる(当時57才、現67才)。通院しながら仕事を続けてきた兄だったが、ついに退職し隠居暮らしを開始。2024年夏から特別養護老人ホームに入所。

イラスト/なとみみわ

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