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健康

「血圧やコレステロールの数値はあまり気にしなくてOK」「腰痛や難聴は重い病気のサインかも」 放っておいていい老化・見逃すと危険な老化【高齢者医療の専門医監修】

 全国の100歳以上の高齢者が過去最多を更新したという。日本人の平均寿命が年々延び続けているいま、老化との向き合い方が人生の充実度を決める。体の衰えは必然だが、比較的そのままにしておいて問題ない症状と、すぐに医療機関を受診すべき症状の見分け方を高齢者医療の専門医が解説する。

教えてくれた人

長尾和宏さん/医師・長尾クリニック前院長、内山安男さん/順天堂大学大学院医学研究科老人性疾患病態・治療研究センター長、和田秀樹さん/高齢者専門の精神科医、石渡俊行さん/東京都健康長寿医療センター研究所・研究部長

人間は年齢とともに免疫機能も低下してく

 死を恐れ、不老不死の薬を探し求めた秦の始皇帝はある真夏の日、巡幸を終えて都への帰路、突然不帰の人となった。世界史上に燦然(さんぜん)と輝く大帝国の主ですら、不老不死を手に入れることは叶わなかった。

 老化は全身にさまざまな現象を引き起こす。長尾クリニック前院長で医師の長尾和宏さんが言う。

「脳が老化すると、神経細胞が減って、脳が萎縮して認知症になります。心臓の心筋細胞が老化すると、心臓が収縮しなくなってポンプ機能が低下し、慢性心不全になってくる。腎臓は機能が落ちると尿を作る能力が低下し、半分以下になると、腎不全になります」

 年齢とともに、免疫司令塔の胸腺が萎縮して、免疫機能も低下するという。

「誰でも毎日、体の中でがん細胞が生まれていますが、NK細胞や白血球、リンパ球が退治してくれるのでがんの発症が抑えられています。しかし免疫力が低下するとがんになりやすく、亡くなる人も増える。誤嚥(ごえん)性肺炎や感染症で亡くなりやすくもなります」(長尾さん)

女性ホルモンの減少は35才頃から

 女性の老化には、女性ホルモン「エストロゲン」の減少が大きく関係している。順天堂大学大学院医学研究科老人性疾患病態・治療研究センター長の内山安男さんが解説する。

「35才頃から女性ホルモンの低下が始まると、コラーゲンやエラスチンの減少により、皮膚が乾燥しやすく、シミやしわが増える。髪のボリューム低下や白髪が増えるなどの症状も出ます。40代以降は病的に骨密度が低下して骨粗しょう症のリスクも増え、加齢で筋肉が減る『サルコペニア』になると、骨粗しょう症と相まって骨折しやすくなります」

 女性特有の尿もれも、老化現象のひとつだ。

「エストロゲンは膀胱(ぼうこう)や尿道の組織を維持する働きがあり、低下すると組織の弾力性が失われ、尿もれしやすくなる。出産や加齢による骨盤底筋の緩みや尿道の変化も尿もれの原因です」(内山さん)

老化は自然現象 数値を意識しすぎず、老いを受け入れて

 いくつもの老化現象に悩まされるが、実は健康寿命を延ばすためには対処すべきものと、放置していいものがある。 高齢者専門の精神科医である和田秀樹さんは、老化を過度に恐れる必要はないという。

「“高齢だから仕方がない”とあきらめずに、少し努力すれば健康長寿につながることはあります。ただ一方で、老化は自然現象です。神経質にならずに老いを受け入れることで、幸せに過ごせることもあります」

 和田さんは「数値を意識しすぎない方がいい」と続ける。

「代表例は血圧です。高血圧の診断基準は140/90mmHgですが、この数字に明確な裏付けはありません。人は加齢によって血管の壁が厚くなるので、全身に血液を送るために自然と血圧が高くなります。老化による“自然現象”なのに、降圧剤をのんで無理に下げようとすると頭がぼんやりするなどの副作用が出やすい。思わぬ転倒や事故にもつながるので、注意が必要です。血糖値も同じで、数値が高いからと薬をのむと、急激な低血糖を招いて意識障害や発作、最悪の場合は死につながることもあります」(和田さん・以下同)

 老化による高コレステロールも、過度に対処する必要はないという。

「閉経後はエストロゲンが減少するので、コレステロールの値が上がりやすい。病院に行くとスタチンなどの薬を処方されることがありますが、コレステロールは免疫細胞の材料なので、不足すると免疫力が低下しがんになるリスクが高まると指摘されています。よく『高コレステロールは心筋梗塞のリスクを上げる』といわれますが、日本人はアメリカ人と違って、心筋梗塞よりもがんで亡くなる人が12倍も多い。無理に下げるべきではありません」

 骨粗しょう症対策も、安易に行うべきではない。

「予防薬はあまり効かないうえに、胃腸障害などの副作用を起こしやすい。みなさん、骨量を増やそうと数値を気にしがちですが、痛みがないなら薬をのむべきではありません」

老化現象に抗いすぎると逆効果ということも

 体の不調だけでなく女性が気になるのは、老化に伴う見た目の変化だ。シミやしわ、多くの場合は年齢とともに体形は変化し、脂肪がつきやすくなってくる。でも老化に抗うことで、健康を害することもある。

「過度な糖質制限や低栄養によるダイエットで体形を維持しようとするのはやめましょう。筋肉量が減少してサルコペニアや健康と要介護の間である『フレイル』になるリスクが高くなります。女性の場合、(体重kg)/(身長m×身長m)のBMIを、21〜25に維持してください」(東京都健康長寿医療センター研究所・研究部長の石渡俊行さん)

 和田さんも言い添える。

「女性は40代以降太りやすくなりますが、問題ありません。少し太っている人はやせている人に比べて、6〜8年寿命が長いことがわかっています。加齢による体重増加は放っておきましょう」

この症状はセーフ?「気にしすぎなくていい老化現象5」

【1】高血圧

 血圧が上がるのは加齢とともに血管の壁が厚くなることへの適応現象。血圧を下げる薬には効果が期待できないうえ、頭がぼんやりするなどの弊害がある。

【2】高血糖値

 血糖値は低い方が危険。血糖値が50mg/dL近くまで下がると発作が起き、強い苦しみが襲うなど危険な状態に。

【3】高コレステロール

 閉経後はエストロゲンの減少に伴いコレステロール値が高くなる。コレステロールは免疫細胞の材料であり、コレステロール値が高い人ほどがんになりにくいという研究もあるため、無理に数値を下げなくてよい。

【4】軽度肥満

 やせすぎは太めの人と比べて6~8年寿命が短く、軽度肥満の方が長生きする。年齢を重ねると筋肉が落ちて脂肪がつくのは自然なこと。脂肪を落とすと免疫機能が落ちてしまう。脂肪がない体は免疫細胞を作れないため、がんになりやすい。

【5】骨粗しょう症

 予防薬はあまり効果がなく、胃腸障害などの副作用を起こしやすい。服薬は痛みがあるときのみにする。

見逃してはいけない「老化サイン」。体の痛みや難聴はがまんしない

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