「血圧やコレステロールの数値はあまり気にしなくてOK」「腰痛や難聴は重い病気のサインかも」 放っておいていい老化・見逃すと危険な老化【高齢者医療の専門医監修】
一方、ひざや腰の痛み、動悸、息切れなどのつらい症状は見過ごせない。
「動悸や息切れの根本原因には心不全が隠れていることがあります。病院を受診し、経過観察や治療を推奨します。ひざや腰の痛みも“高齢だから仕方がない”と言う人がいますが、薬でとれる痛みはとった方がいい。がまんすれば免疫力が下がります」(和田さん)
石渡俊行さんは、健康寿命を延ばしたいならフレイルは放置すべきではないと話す。
「フレイルは栄養や運動不足が原因で発症します。そのままにしておくと、要介護リスクが高くなる。対処すれば進行を防ぎ、改善することも可能です」
音が聞こえづらくなる加齢性難聴も、何もしなければ認知機能の低下を招く。
「多くの場合、加齢性難聴は、高い音から両耳が聞こえにくくなります。耳鼻科を受診して、早めに補聴器をつけて聴覚のリハビリを行うことで、社会的孤立、抑うつ、認知機能低下などの予防ができます」(石渡さん)
頻尿や尿もれもうまく対処することで、日々の幸せ度がアップする。
「夜中、数時間おきにトイレに行くようなら、寝る数時間前は水分を控えるなど対策をした方がいい。ただし夏は脱水症になりやすいので、減らしすぎないこと。女性の尿もれは、骨盤底筋を鍛える運動や、薬物療法が有効です」(内山さん)
長尾さんは、老化現象の中には重大な病気が潜んでいる可能性を常に頭に置いてほしいと話す。
「急なシミの増加にはがんの可能性があるし、腰痛も腰椎の圧迫骨折、肺がんの腰椎転移、大動脈解離などが隠れていることがある。急に物忘れが激しくなったということなら、甲状腺機能低下症や慢性くも膜下血腫ということもあるので、おかしいと感じたら病院に行ってください」
ただちに受診を!「放置してはいけない老化現象5」
【1】動悸、めまい、息切れ
加齢に伴う動悸は、動脈硬化の進行など心臓の老化によって起こっていることも。息切れの原因は心臓の老化。
【2】急な認知機能低下
物忘れなど認知症のような症状が進んだという場合は甲状腺機能低下症、慢性くも膜下血腫などの可能性が。神経難病の始まりだったということもあり得る。通常、認知症は5年〜数十年という期間でゆっくりと進行するもので、1か月で大きく症状が進むことはない。
【3】フレイル
栄養不足、運動不足、持病が原因になって発症しやすい。歩行者用信号を青信号の間に渡りきれなくなったり、ペットボトルのふたを自分で開けられなくなったら要注意。フレイル外来などを受診して治療を。
【4】腰痛
腰痛には、腰椎の圧迫骨折、肺がんの腰椎への転移、腎臓がん、大動脈解離など、命にかかわる病気のサインのこともある。
【5】難聴
早めに補聴器をつけたり、聴覚のリハビリを行うことで、社会的孤立、抑うつ、認知機能低下の予防を。
【6】頻尿
日中に8回以上、または、夜間に1回以上の排尿があることをいう。尿路感染症、糖尿病などが原因の場合もあるため、日常生活に支障をきたす場合には、早期に泌尿器科で検査を。
カラオケで歌うと脳、心臓、肺が元気に
残念ながら若返りの特効薬はないが、生活習慣で老化を遅らせることはできる。老化を遅らせるには、体を酸化させないことが大事だと長尾さんは言う。
「活性酸素が増えると体が酸化して、老化が早まります。たばこは活性酸素を大量に発生させるので、禁煙はマスト。過度なストレスも活性酸素を増やすので、好きなことをして楽しむ時間をとりましょう」
軽い有酸素運動は健康にいいものの、石渡さんは、過度な運動は避けてほしいと語る。
「関節炎や骨折の危険、不整脈などの発生リスクが高くなります。プロテインやサプリメントの過剰摂取もよくありません。肝臓や腎臓への負担となり、新たな疾患を生む可能性が高まります。自費診療の再生医療など、非科学的な若返り治療にも気をつけてほしい。現時点で科学的に実証された若返り法はありません」
楽しめる習慣を生活に取り入れるのもいい。
「ウオーキングのような軽度な運動は、免疫力を強化して、老化のスピードを緩めます。カラオケなどで歌うこともおすすめ。脳や心臓、肺を使います。立って歌えば足腰も鍛えられるでしょう」(長尾さん)
石渡さんは、過度に紫外線を浴びないよう予防に力を入れてほしいと話す。
「紫外線は細胞の炎症と酸化を引き起こすので、老化に強烈な影響を与えるといわれている。シミやたるみの原因にもなります」
体の糖化を防ぐことも重要だ。
「米や麺類などの炭水化物を摂りすぎると最終糖化産物(AGEs)が増えて体の糖化が進み、糖尿病などの病気を引き起こします。食事はたんぱく質、炭水化物、脂肪のバランスを保ち、偏らないように。抗酸化作用のあるビタミンCやDHAはサプリメントで摂ることもできますが、できれば新鮮な野菜や魚を食べてください」(長尾さん)
放置すべき老化、放置すべきでない老化の見極めが、健康長寿につながる。
写真/PIXTA
※女性セブン2025年7月3・10日号
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