「正座をする」はOK!「ラジオ体操」はNG!<ひざの関節を守る正しい習慣&悪化させる習慣【専門医解説】
年を重ねると「ひざ」はどうしても痛みが出やすいもの。しかし、その痛みは「日々の習慣」によって大きく左右される。靴の履き方から自転車の漕ぎ方まで、ひざの関節を守る正しい習慣をお伝えする。
教えてくれた人
戸田佳孝さん/戸田整形外科リウマチ科クリニック院長
日常的な動作や習慣がひざの痛みを悪化させる
ひざ痛の最も代表的な症状である「変形性膝関節症」の患者数は1000万人以上にのぼる。
『ひざ痛を自力で治す』(大洋図書)の著者でひざの名医として知られる戸田佳孝さん(戸田整形外科リウマチ科クリニック院長)が言う。
「ひざの関節は太ももの大腿骨とすねの脛骨を繋いでいます。2つの骨が接する面にはクッションの役割を果たす軟骨と半月板があり、加齢などで軟骨がすり減ると半月板が損傷し、神経の通る靭帯を圧迫して歩行時や階段の昇降時に痛みが生じます。これが変形性膝関節症です」
ひざ痛のもととなる軟骨のすり減りは筋力の衰えが主な原因となる。
「ひざを伸ばす筋肉である大腿四頭筋が衰えると歩行時にひざが真っ直ぐに伸びず、地面に足が着地した時にひざが『横揺れ』してしまい、軟骨のすり減りが進みます。これによりひざ関節の痛みが増してしまうのです」(戸田さん。以下「 」内は同じ)
ひざの痛みを消すには日常的にひざの横揺れを防ぐことが重要となる。戸田さんが勧めるのは靴に中敷を入れることだ。
「特にO脚の人は足の小指側が高い中敷きを靴に入れると、足首が少し内側に入りひざが真っ直ぐに伸びやすくなる。ひざへの衝撃を和らげてくれます」
また、かかとに厚みがある靴よりも靴底が薄いほうがひざへの負担を軽減できることがわかっているという。
「2006年に米国リウマチ学会の学会誌に発表された論文で、靴を履くよりも裸足のほうがひざへの負担が減ることが報告されました。外出する時は平べったい靴を履き、室内ではスリッパを使わず裸足の生活を心がけましょう」
ひざをしっかり伸ばすためには大腿四頭筋を鍛えることも重要だ。そこで効果的なのが自転車だと戸田さん。
「自転車に乗って逆回転でペダルを漕ぐことで、効果的に大腿四頭筋を鍛えることができます」
食生活ではアボカドの摂取がひざの軟骨に良いという。
「アボカドに豊富に含まれるTGF―βという物質は軟骨の土台となる繊維を作り、すり減ったひざ軟骨を修復します。グルコサミンなどのひざ軟骨に良いとされるサプリは多くが胃腸で分解されてひざに届きません。より手軽なアボカドを試してみる価値はあります」
ラジオ体操で痛みが増すケースも
逆にひざの痛みを悪化させてしまうため避けるべき習慣もある。そのひとつがラジオ体操だ。
「健康のために毎朝やっている人も多いと思いますが、ラジオ体操には飛び跳ねる動作が多く、ひざへの衝撃が大きい。痛みが増してしまうケースがあるので避けたほうが良いでしょう」
痛みが出ている時は階段の利用も控えるほうがいい。
「特に降りる時にひざに大きな衝撃を与えてしまいます。ひざ痛を抱えている場合は、極力階段は使わず、エスカレーターやエレベーターを利用するようにしましょう」
歩く際には重心のかけ方でもひざへの負担が大きくなる。
「片足で立つと軸足のひざに体重の6倍の力がかかると言われています。重い荷物を片手で持って歩くなど、重心を体の片側にかけて歩くとひざを痛めやすいので避けましょう。歩行の際は両足に半分ずつの体重が乗るよう心がけると負荷を減らせます」
ひざの痛みを消すor悪化させる習慣
「ひざ」に精通する名医に聞いた「痛みを消す」or「悪化させる」習慣を一覧にした。毎日の生活で無意識に行っていないかチェックしよう!
ひざの痛みを消す習慣
※項目/ポイント
【1】正座をする
正座をすることでひざを伸ばす筋肉である大腿四頭筋が柔らかくほぐれる
【2】靴に中敷を敷く
変形性膝関節症用の中敷を使うとひざが真っ直ぐに伸びて負担が減る
【3】ひざを伸ばして歩く
ひざが曲がったまま着地するとひざへの衝撃が大きくなるため、真っ直ぐ伸ばして歩く
【4】自転車に乗り逆回転で漕ぐ
自転車を逆回転で漕ぐことで大腿四頭筋を鍛えられる
【5】かかとでひざの裏側を押す
足を伸ばし、反対の足のかかとでひざ裏を押すと筋肉がほぐれてひざを伸ばしやすくなる
【6】ひざに穴を開けたサポーターを装着する
蜘蛛の巣状に穴を開けたサポーターを装着することでひざの曲げ伸ばしがラクになる
【7】ひざをついて作業する
タンスの一番下の引き出しを開けるなど低い位置で作業をする際はひざをついて行なう
【8】アボカドを食べる
アボカドに含まれる成分TGF-βがすり減ったひざの軟骨を修復する
ひざの痛みを悪化させる習慣
※項目/ポイント
【1】片足に重心をかけて歩く
片足で立つとひざに体重の6倍の力がかかる。歩くときは両足に平均的に体重がかかるようにする
【2】階段を降りる
下り階段でのひざへの衝撃は上り階段よりも強い。痛む場合はなるべく使わず、エスカレーターやエレベーターを使用する
【3】ラジオ体操をする
飛び跳ねる動作が多く、ひざの軟骨を痛める
【4】湿布を多量に貼る
湿布に頼り過ぎると貼ったことに安心して無理な動きをしやすい
【5】室内でスリッパを履く
室内ではなるべく何も履かない。特にかかとが2センチ以上の高さがあるスリッパはひざを痛めやすい
※週刊ポスト2025年5月9・16日号
●ひざの痛み<変形性膝関節症>9割は軟骨のすり減り 薬や手術に頼るべきか?専門医が解説
●《歩くだけで健康に》形成外科専門医が教える「歩くのがしんどい」人のための“質のいい歩き方”3つのポイント
●チェックリストで【骨の健康度】を確認!冬場に多い転倒による骨折「大腿骨近位部骨折した男性の死亡率は女性より高いとのデータも」「過度のアルコール摂取、喫煙が骨粗しょう症の原因に」