膝がポキポキ、ゴリゴリ鳴るのは関節トラブル、病気のサインかも
膝のトラブルは高齢女性だけの悩みではない。膝に違和感を覚えたことのある40~70代男女400人を対象とした調査(ゼライス株式会社<宮城県多賀城市>調べ)によると、膝に痛みがなくても動かしたときに音やこわばりなどを感じる人は40代男性が最も多く、9割以上にのぼったという。
特に働き盛りをも悩ましているのは、不快な「膝鳴り現象」だとうい。この「膝鳴り現象」の原因とは?
放置すると重篤な障害に直結してしまうのか? 膝痛治療の第一人者である関町病院(東京都練馬区)の丸山公院長に、膝の音の正体と対策をうかがった。
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「ボキボキ」「ゴリゴリ」膝の音は変形性膝関節症の前ぶれ!?
普段の生活の中で、膝を曲げたり伸ばしたり歩いたりすると、「ポキポキ」「ゴリゴリ」といった妙な音が出ることはないだろうか。痛みもなく歩くのに差し支えなければ、特に気にしないという人もいるのでは?
実はこの音は関節の病気のサインのことだと、膝痛治療の第一人者である関町病院(東京都練馬区)の丸山公院長は言う。
「これは、関節の『摩擦音』なのです。膝軟骨の水分量が減ってくると、関節の摩擦抵抗が大きくなり、摩耗が始まります。膝を動かすと局所的な圧迫力が増し、音が鳴るようになるのです。初期段階では『ポキポキ』『バキバキ』といった破裂音や『カクカク』『ギシギシ』といった、きしむような音が出るようになります」(丸山院長、以下「」内は同)
曲げ伸ばしのときの音は、関節の老化を知らせてくれるものだったのだ。膝関節に存在する軟骨は水分を保持していることで滑らかに動き、クッションの役割も果たしている。この水分が減少する主な原因は加齢で、早ければ30代から減り始める。
「ところが、膝の摩擦音がしばらくして消えてしまうことがあります。音がしないことで、問題がなくなったと思いがちですが、そうではないんです。膝軟骨の摩耗が進んで表面が滑らかになると音がしなくなるからです。また、軟骨を包んでいる滑膜(かつまく)が炎症を起こすと関節液が増える現象が起こり、この場合も音は減少します」
膝の音がしなくなったら、安心なのではなく「中期段階」への進行を疑った方がいいということのようだ。放置すると軟骨はさらにすり減っていく。
「膝関節の軟骨下骨という場所まですり減ると、骨どうしが直接ぶつかって、今度は『ゴリゴリ』『ザラザラ』という強い膝音に変わり、痛みも感じるようになります。この進行期までくると、変形性膝関節症になっている可能性が高いでしょう」
変形性膝関節症は、主に膝の軟骨が摩耗することで起こる病気。丸みを帯びて滑らかに動くような形をしていた関節の骨が変形し、周囲の組織を圧迫したり傷つけたりするようになる。
「米国では、膝を動かしたときに感じる音やきしみの頻度と、変形性膝関節症の発症リスクを調べる大規模調査が行われました。変形性膝関節症の症状がない男女3495人(男性42.2%、平均年齢61.1歳、レントゲン検査で膝軟骨が軽度に摩耗していると確認された人26%)を対象に、3年間にわたって1年ごとに調査したものです。その結果、膝の音やきしみが全くない人に比べて、『たまにある』では変形性膝関節症の発症リスクが1.5倍、『ときどきある』では1.8倍、『よくある』では2.2倍、『いつもある』では3.0倍に高まることが報告されています。こうしことからも私は、膝の音は変形性膝関節症の発症予測に有効と考えているのです」
膝の病気を見つけるために、丸山院長は次のチェックを行うといいと言う。1つでも当てはまれば膝のケアを始める必要があるとのこと。
□膝からいつもと違う音がする
□膝にこわばりを感じる
□動き始めるときに膝から音がする
□曲げ伸ばしすると膝の音がする
□階段を昇り降りするときに膝の音がする
□膝が腫れている、または熱感がある
□激しいスポーツをしている(していた)
□過去に膝の怪我をしたことがある
□座ったり立ったりすることが多い生活をしている
□歩き方が最近変わってきた
「膝の音は、靭帯や半月板の損傷、関節リウマチ、軟骨骨折、骨壊死、骨腫瘍、脱臼などでも起こることがあります。中でも最も多いのは変形性膝関節症です。音がしたら膝関節の病気の前ぶれで、早期発見するための重要な警鐘と考えましょう」