《足の老化チェックリストも》形成外科専門医が考案した“すごい足踏み”「外出ナシでも歩くことと同じ効果」
形成外科専門医で、『1日3000歩 歩きたいのに歩けない人のための すごい足踏み』(アスコム)の著者である菊池守さんは、歩かなくても歩くことと同じ効果のある運動が可能だと語っている。日々の運動の大切さはわかっていても、体調や気持ちの問題で歩くのが面倒だと思っている人こそ、おすすめの“すごい足踏み”を紹介する。
教えてくれた人
菊池守さん/日本形成外科学会認定・形成外科専門医
2000年、大阪大学医学部卒業。国内の医療機関に勤務した後、アメリカ・ジョージタウン大学創傷治療センターに留学し、足病学に出会う。帰国後、佐賀大学医学部附属病院形成外科診療准教授、日本初の足の総合病院「下北沢病院」院長を歴任した足の専門医。一般社団法人「足の番人」理事長、ウェブサイト「教えて、足病先生!」(https://ashibyo.com/ashibyo.com)の校長も務める。
人間の足は50年が耐用年数
歩くことで得られる健康効果の最大のカギは、筋肉と血流だと菊池さんは話す。
「全身の筋肉の6〜7割は下半身に集まっており、歩くことで下半身の筋肉を刺激・活性化・トレーニングして、全身の血流を改善することにつながります。だからこそ、歩行は健康の維持や増進効果が全身に波及するんです」(菊池さん・以下同)
しかし、菊池さんによると、年齢を重ねるごとに1日あたりの歩数が少なくなり、少しの徒歩でもつらいと思う人も多いのだという。
「それは、人間の足は50年で耐用年数を過ぎると言われているからです。50歳を過ぎると、足のどこかに少しずつ異常が出始め、60歳、70歳になるとだんだん歩くのが辛くなるのが普通です。
今、買い物くらいは自分で歩いて行けると思っているかたでも、知らぬ間にだんだんと足が衰えて、運動量も落ちているかもしれません。まずは足の老化がどれだけ起きているか、チェックしてみましょう」
足の老化チェックリスト
□1日20分以上歩けていない
□歩くとすぐに足がだるくなる
□歩くとすぐに疲れる感じがする
□最近、つまずきやすくなった
□歩くスピードが落ちてきたと感じる
□ひざに痛みがある
□足の指に痛みやしびれがある
□腰に痛みがある
□足に力が入らない
□階段の上り下りがスムーズにできない
□足にむくみがある
□歩くときに目線が下がる
□最初の1歩が出にくい
□気がつくと、イスがないか探してしまう
チェックが1〜2個…現時点では大きな心配はなし。しかし、1個でもチェックがある場合は将来に向けての危険信号かもしれないので、できる限り運動不足を解消できるように努力が必要。
チェックが3〜4個…おそらく歩行不足・運動不足を自覚しているはず。筋肉量が落ちて、ますます歩けなくなる悪循環に陥る前に、早急な予防策が必要。
チェックが5個以上…現状を放置しないことが大切。痛みなどがある場合は、無理をせずに、自宅で運動量と筋肉量を増やす。
“すごい足踏み”なら外出ナシで歩行と同様の効果
歩くことがよいとわかっていても、ひざ痛や腰痛、筋力の低下、心理的に面倒になるなどの理由で、歩くのがしんどい人も多い。そこで菊池さんは、自宅で手軽にできる“すごい足踏み”をおすすめしている。
「イスに座って行えるのに、歩くときと同じ下半身の大きな筋肉を刺激・活性化・トレーニングできる運動です。実際に歩かなくても、歩いたときと同様の健康の維持・増進効果が得られます」
“すごい足踏み”は、手軽に行えるうえに、歩行よりもすぐれている点があるという。
「太ももの内側にある大内転筋という大きな筋肉を上手に動かせる運動です。日常生活や歩行では使われにくい筋肉ですが、“すごい足踏み”の中には大内転筋にうまく作用する動きが取り入れられています。ほかにも下半身の大きな筋肉はほとんどカバーできるような、効率的なトレーニングとなっているので、ぜひお試しいただきたいです」
“すごい足踏み”の準備運動
「普段はまったく歩かない、運動する習慣がまったくないといった運動不足の人や、腰痛やひざ痛がある人の場合、いきなり“すごい足踏み”をすると痛みを感じる場合があります。そこで、3つの準備運動からはじめましょう」
【1】壁ドンふくらはぎ伸ばし
<1>壁に向かって立ち、両腕のひじを伸ばした状態で両手のひらを壁につける
※壁の代わりにイスの背もたれなどを利用してもOK。
<2>左足を後ろへ一歩下げる
※つま先をまっすぐ前に向け、ひざを曲げず、かかとが浮かないように足の裏全体を地面につける。
<3>少しずつ壁に体重をかけ、左右のつま先をまっすぐ前に向けたまま、右足のひざをゆっくり曲げ、20秒キープする
※左足のひざは曲げない。かかとが浮いたり、つま先が外を向いたりすると、筋肉にアプローチできないので気をつける。
<4><1>〜<3>を20秒ずつ、左右両足3セットずつ行なう
【2】足首ぐるぐる運動
<1>イスに浅めに腰掛け、左足に右足を乗せて足を組む
<2>右足の指の間に、左手の指を差し入れ、握手をするように握る
※足の指先が固くて痛みがある場合は、足の先端を包み込むように握ってもOK。
<3>内側にぐるぐると円を描くように、足首を回す
<4>外側も同様に、ぐるぐると円を描くように、足首を回す
<5><1>〜<4>を左右両方、内回り・外回りを10回転ずつ行なう
【3】骨盤起こし倒し
<1>イスに浅めに腰掛けて背筋を伸ばす。腰の左右上部にある出っ張りを、左右の手で包み込むように添える
※腰上部を包み込む手は、人差し指〜小指が腰の前側、親指が腰の後ろ側にくるようにする。
<2>腰に当てた手の親指に少し力を入れ、腰を前に押し出すようにしながら骨盤を起こして前傾させる
<3>腰に当てた手の人差し指〜小指に少し力を入れ、腰を後ろに引くようにしながら骨盤を倒し、後傾させる
<4><2>〜<3>を10セット行なう
“すごい足踏み”の基本姿勢と入門編
準備運動ができたら、“すごい足踏み”をやってみよう。できるだけ大きな動きで行なうことが大切。
【基本姿勢】
<1>首・肩・腕には力を入れず、上半身はリラックスする
腕を振るときは、リズムを取る程度でOK。
<2>イスに浅めに腰掛ける
お尻〜太もも裏の半分程度を座面に乗せるイメージ。イスは座面が固いものがおすすめ。
<3>背筋を伸ばす
骨盤をきちんと起こし、前傾させた状態をできるだけキープ。
<4>腹筋に力を入れる
<3>で骨盤を前傾させてから腹筋に力を入れることで、体がブレず、安定した状態での運動が可能になる。
<5>ひざ・股関節の角度は足が地面についた状態で90度になるようにする
座面の高さがちょうどよいイスを選ぶのがおすすめ。
【入門編「床踏みステップ」】
<1>基本姿勢でイスに座る
「床踏みステップ」は手足の動きを大きく、リズムよく行うのがコツ。疲れてきたら、動きの大きさは変えずに、足を動かすペースをゆっくりにしてもOK。ひざは伸ばさず、基本姿勢のとおり90度にしてからスタート。
<2>左足を床から10cmほどの高さまで持ち上げ、右腕を前に、左腕を後ろに振る
左足のつま先を持ち上げ、かかとだけを床を「トン」とつく。床につくとき、右腕を後ろに、左腕を前に振る。
<3>右足を床から10cmほどの高さまで持ち上げ、左腕を前に、右腕を後ろに振る
右足のつま先を持ち上げ、かかとだけを床を「トン」とつく。床につくとき、左腕を後ろに、右腕を前に振る。
<4>左足を床から10cmほどの高さまで持ち上げ、右腕を前に、左腕を後ろに振る
左足の足裏全体を床を「ドン」とつく。床につくとき、右腕を後ろに、左腕を前に振る。
<5>右足を床から10cmほどの高さまで持ち上げ、左腕を前に、右腕を後ろに振る
右足の足裏全体を床を「ドン」とつく。床につくとき、左腕を後ろに、右腕を前に振る。
<6><2>〜<5>の動きを、1分間繰り返す。慣れてきたら長く続けると効果アップ