《歩くだけで健康に》形成外科専門医が教える「歩くのがしんどい」人のための“質のいい歩き方”3つのポイント
年齢を重ねるにつれて、歩くことさえも面倒になっている…それは、体からの危険信号かもしれない。その理由を、『1日3000歩 歩きたいのに歩けない人のための すごい足踏み』(アスコム)を上梓した形成外科専門医・菊池守さんが解説。歩くことと健康の関係や、日常の歩行の質を上げる方法を教えてもらった。
教えてくれた人
菊池守さん/日本形成外科学会認定・形成外科専門医
2000年、大阪大学医学部卒業。国内の医療機関に勤務した後、アメリカ・ジョージタウン大学創傷治療センターに留学し、足病学に出会う。帰国後、佐賀大学医学部附属病院形成外科診療准教授、日本初の足の総合病院「下北沢病院」院長を歴任した足の専門医。一般社団法人「足の番人」理事長、ウェブサイト「教えて、足病先生!」(https://ashibyo.com/ashibyo.com)の校長も務める。
病気の予防も!歩くことは究極の健康法
歩行は特別なウエイトを使わなくても効率的なトレーニングができる運動であり、かつ究極の健康法だと、菊池さんは語る。
「人間の筋肉の6〜7割は下半身に集まっています。誰もが歩くことによって、全身の筋肉の6〜7割を自然と動かせて、全身の血流を促進させることができます」(菊池さん・以下同)
歩行は血流促進だけでなく、心臓や肺が活発に働いて鍛えられることで心肺機能の向上もできるほか、骨に刺激を与えて骨密度アップ効果もあるという。さらに、病気の予防にもつながるそうだ。
「1日あたりの歩数は、2000歩で筋肉の衰えを防いで寝たきりのリスク軽減、4000歩で血流促進と脳への刺激によるリフレッシュ効果でうつ病予防、7000歩で血流の維持や血管が鍛えられることによるがんや動脈硬化の予防効果、骨への刺激による骨粗しょう症や骨折の予防効果、8000歩なら高血圧・糖尿病・脂質異常症など代表的な生活習慣病にも有効だと研究されています」
運動不足は日本の死亡に関する危険因子第3位
逆に、「歩くのがしんどい」と運動不足のまま毎日を過ごしていると、いったいどうなるのか。
「2013年に厚生労働省が発表したデータによると、日本国内での主な死亡に関する危険因子は、喫煙、高血圧に次いで運動不足が3位。年間約5万人が、運動不足によって亡くなっているのです」
たとえば、ひざの痛みで歩けなくなり足がむくんで血圧が上がる、動かないことで足首やひざが固くなって強い痛みを訴える、骨密度が減って骨がスカスカになるなど、運動不足によってさまざまな体の悩みを引き起こし、結果として不健康が死へとつながっていくのだ。
歩行の質をアップする3つのポイント
そうは言っても、毎日たくさんの歩行を続けるのはきついという人も多いだろう。そこで菊池さんは、歩行の質が上がる3つのポイントを教えてくれた。
【1】歩幅は大きすぎず小さすぎず
歩幅の目安は、大きすぎず小さすぎずを基本に考える。無理に大股歩きをする必要はない。
【2】目線を上げて姿勢よく
地面を見て歩くと、前傾姿勢になり体のさまざまな部分に余計な負荷がかかる。そこで、目線を起こしてしっかり前方を見る意識を持つ。自分の体が上からつり上げられるイメージで、背筋を伸ばすようにするとさらに全身運動になってよい。
【3】横断歩道を渡りきれる程度のスピードを維持
信号が青のうちに横断歩道を渡りきれるような、少し早歩き程度の速度をキープできるように意識する。