《長生きの秘訣》「新しいものを取り入れる」「若い人に学ぶ」90歳を迎えた今もなお美容研究家として活躍する小林照子さんが説く、人生を楽しむ心がけ
<自分が知らない世界を教えてくれる人は年下であっても、大事な「先生」なのです>
私は平成18年(2006年)から、二十四時間テレビショッピングの「ショップチャンネル」に出演しています。スタジオからの生放送で、私が開発した化粧品を直接紹介して、販売しています。
私は70年以上、美容の仕事をしてきました。もちろん、テレビにも仕事で何度も出演させていただいた経験があります。しかし、初めてショップチャンネルに出演したときには、キャストと呼ばれる進行役の人のあまりにもハイテンションなトークについていくことができませんでした。「はい」「そうですね」と、相槌を打っているうちに番組は終わってしまいました。話題を振られても、答えようとしているうちに次の話題が始まってしまうので、どうしたらいいか、わからなくなってしまったのです。
番組終了後、私は若いバイヤーの女性に大目玉をくらいました。
「小林さん。時間内にきちんと製品の説明ができないのでしたら、出演の意味がないですよ! もっとトークの練習をしましょうよ!」
私はこのとき70歳。相手の方はたぶん、30代でしょう。私はとても落ち込みました。自分のだめさ加減も恥ずかしかったのですが、70歳を過ぎてよもや人前で怒られるとは、思ってもいなかったのです。
しかし、その半面、とても新鮮な気持ちにもなりました。美容の世界では長いあいだ、教える側で生きてきた人間ですが、テレビショッピングの世界では新米です。バイヤーの方たちは大きな予算を持って仕事をきちんとこなしている人たちです。お若い方であっても、この世界では私の大先輩。こちらが知らないことを教えてくださるのですから、ありがたいかぎりです。
仕事でもプライベートでも、私たちはいろいろな世代の人たちと接して生きています。時には自分よりも年若き人に、自分のミスを指摘されたり、指導を受けたりすることも、さまざまなシーンであると思います。
しかし、そこで腹を立てて、相手を生意気だなどと思わないことです。わざわざ言ってくれているということに、まずは感謝するべきなのです。その方に「何か言って、言い返してきたりするといやだな」という気持ちがあれば、ふつうは何も言ってくれないことがほとんどなのですから。
それに、たとえその方が非常にお若い方であったとしても、やはりこちらが精通していない世界では、相手の方は「先生」です。教えてくださる方のおっしゃることは、素直に受けとめたいと思います。
こちらが素直な態度で反省すれば、相手の方はさらにいろいろと教えてくださいます。ここで学ばない手はありません。
歳をとると、ついつい「こちらのほうが年長者」という驕りで、謙虚な態度を忘れがちです。
でも、いくつになっても、礼儀は礼儀。長く生きてきたからといって、傲慢な態度をとることだけは、慎みたいものです。