50代女性「民間の介護保険に入った方がいい?」給料も上がらず物価も上昇…自分の介護費用が不安【専門家が回答】
生命保険文化センターの調査によると、介護にかかる費用は毎月平均9万円となっており、長生きすればするほどお金はかかり続ける。「公的な介護保険だけで不安…。民間の保険に入った方がいいでしょうか?」という相談に、介護経験をもつファイナンシャルプランナーで行政書士の河村修一さんに回答いただいた。
この記事を執筆した専門家
河村修一さん/ファイナンシャルプランナー・行政書士
内外資系の生命保険会社を経て、2011年に母の介護経験をもとに介護者専門FPとして独立。その後、2018年にカワムラ行政書士事務所を開業。介護や相続、親の介護をめぐる家族会議支援など、将来に備えるサポートを幅広く行う。
50代女性「民間の介護保険は加入すべき?」
50代女性から「将来の介護費用が不安。この先、年金や介護保険制度もどうなるのか…。民間の介護保険に加入するか迷っています」という相談を受けました。
民間の介護保険は、がん保険などと並び、実に多彩な商品が登場しています。最近では月々数百円で加入できるタイプや、要介護1と認定されると給付金が受け取れるもの、軽度認知症(MCI、認知症の前段階)と診断されたら数百万円の給付金が支給されるなど、さまざまな商品があります。
まず、介護にかかる費用について考えてみましょう。
生命保険文化センターの調査(2024年)によると、介護にかかるお金は、一時的な費用が平均47万円、月々平均9万円です。介護期間の平均年数4年7か月で計算すると、総額は542万円となります。介護施設に入居するとさらにお金がかかり、介護費用のほか、医療費などもかかり続けます。人生100年時代と考えると、実際には800万円以上の金額がかかることにもなるのです。
これをどのように準備するのか――私の介護経験をふまえ、民間の介護保険についての考え方や選び方を解説します。
※生命保険文化センターの「生命保険に関する全国実態調査(2人以上世帯)」(2024年度)
https://www.jili.or.jp/lifeplan/lifesecurity/1116.html
民間介護保険が必要か?判断すべきポイント
民間の介護保険が必要かどうかは、多くのかたが悩むところです。実際、介護は人によって状況もかかる費用も大きく異なります。
私の母は60才のときに脳出血で倒れ、在宅介護が始まりました。当初は要介護3で、その後要介護2~3を行き来していましたが、10年後に再び脳出血を発症し、最終的には要介護5に。介護期間は17年間と長期に及び、介護費用もそれなりにかかりました。
一方で、父は77才頃にアルツハイマー型認知症と診断され、要支援から要介護2となり、介護期間は6~7年でした。父の場合、公的な介護保険に加え、「障害者控除対象者認定書」の交付を受けることで、住民税が非課税になるなど、介護費用を抑えることができました。
→要介護1の父に約10万円が還付された!障害者手帳がなくても申請できる「障害者控除」の実例【介護のお金FP解説】
当時はまだ民間の介護保険は今のように商品がそれほどなかったこともあり、両親ともに本人の年金や公的な制度でやりくりしていました。しかし、母のように介護期間が長引くケースでは、加入していれば経済的な負担の軽減につながっていたと思います。
相談者さんは現在50代なので、いつご自身に介護が訪れるか、公的な制度ですべての費用をまかなえるのか不安を感じていらっしゃいます。まずは、公的な介護保険で「何が使えるのか」「どこまで負担が軽くなるのか」を理解しておくと不安が少しでも減るかもしれません。
公的介護保険である程度負担は抑えられる
40才になるとすべての国民が加入する公的な「介護保険制度」。保険を使えるのは原則として65才以上の要介護(支援)の認定を受けた人※で、自己負担額1割(所得により2割・3割)で介護保険サービスを利用できます。
※40~64才の場合、国が定める特定疾病の場合は利用可能(自己負担割合は所得に関わらず1割)。
訪問介護などの生活面から、手すりなどの福祉用具まで、介護に必要なサービスや用具は自己負担額を抑えて利用することができます。
ただし、介護保険サービスは、要介護度によって上限額が定められているため、上限を超えて利用した分は、原則として全額自己負担になります。
また、公的な介護保険ですべての介護費用をまかなえるわけではなく、保険対象外となる自費のサービスも併用する必要が生じることもあります。介護費用だけでなく、治療が長引いた場合などには、医療費もかかります。
介護費や医療費の自己負担額が高額になった場合には、負担を軽減する制度や、私の父のように状況に応じて障害者控除などを活用できるケースもあります。
民間の介護保険を検討する前に、こうした公的な制度について知っておくとよいでしょう。
→「80代の父の在宅介護にかかるお金が心配…」覚えておきたい「高額介護サービス費」の仕組みや利用方法について実例相談をもとにFPが解説
※厚生労働省 「介護事業所・生活関連情報検索」介護保険の解説
https://www.kaigokensaku.mhlw.go.jp/commentary/
介護でお金がかかるのはいつからなのか?
続いて「介護費用は何歳くらいから必要になるのか?」について考えてみましょう。
民間の介護保険は主に「要介護」になると給付金を受け取れる設計が主流なので、要介護認定を受けた人の割合や年齢を確認してみます。
要介護(要支援)認定者数は734.2万人(男性235.8万人、女性498.4万人)で、65才以上の割合は20.1%、おおよそ5人に1人が要介護認定を受けています(厚生労働省「介護保険事業状況報告(令和8年1月暫定版)」)。
年齢別に見てみると、65才以上:18.3%、75才以上:31.5%、85才以上:57.8%。つまり、85才を超えると2人にひとりが要介護認定を受けていることになります(厚生労働省「年齢階級別の要介護認定率(令和4年)」)。
一方で、要介護認定を受けていない人や、介護を必要とせずピンピンコロリで亡くなるケースもあります。
民間の介護保険に加入した場合、保険料をいつから、いつまで払うのか?何歳くらいに給付を受け取るのか、支払った金額と受け取れる金額のバランスは気になるところです。
しかし、いつから要介護になり、いつまで介護や医療費がかかり続けるのかは、正確には予測できないため、平均的なデータとして参考にしておくといいかもしれません。
※厚生労働省「介護保険事業状況報告(令和8年1月暫定版)」
https://www.mhlw.go.jp/topics/kaigo/osirase/jigyo/m26/2601.html
※厚生労働省「年齢階級別の要介護認定率」
https://www.mhlw.go.jp/stf/wp/hakusyo/kousei/21/backdata/01-02-01-04.html
「もしも要介護になったら…」リスクに備えるのが民間の保険
そもそも民間の保険は、めったに起こらないものの、起こったときに経済的なダメージが大きいリスクに備えるものです。身近な例でいうと「自動車保険」がわかりやすいかもしれません。高額なお金を必要とする大きな事故が起きたときなど、自分の預貯金では十分に対応できないリスクに備えるものです。
あるいは、民間の医療・がん保険などで「数千万円の先進医療が受けられた」など、がんになるかわわからないものの、保険に入っていたおかげで公的な医療保険が使えない高額な治療ができたななどのケースもあります。
なお、民間の保険(かんぽ除く)に加入者している保険の種類の割合は、「終身保険」 26%、「医療保険 (有期型)」14.5%、「医療保険(終身型)」14.1%、「がん保険」8.3%、「介護保険」は2.1%。介護保険はそこまで加入者の割合は高いとはいえない状況ですが、前述のように、介護は、長期化するほど費用が積み重なり、家計にじわじわと影響します。
公的な保険だけでは足りない場合に備え、民間の介護保険に加入することで「安心感」は得られるでしょう。また、民間の介護保険は、所得控除の対象になるため、節税対策になる一面もあります。
民間の介護保険に向いている人(一例)
・将来の介護費用を準備するのが難しいと感じている
・充分な貯蓄ができそうにないため、無理のない範囲で月々の支払いで備えたい
・突然の介護・介護期間が長引くことに不安を感じている
・認知症の不安やリスクに保険で備えておきたい
一方で、要介護のリスクを踏まえた上で、将来の介護費用は自己資金や公的な介護保険や年金、預貯金などで準備をしたい(準備ができる)と考えている人は、民間の介護保険は無理に加入する必要はないともいえるでしょう。
民間の介護保険を選ぶときのチェックポイント
民間の介護保険は実にさまざまな種類があります。選ぶときのポイントを確認しておきましょう。
どんなタイプがある?
民間の介護保険は主に、被保険者が所定の要介護状態になった場合に、保険金・給付金を受け取るタイプが一般的です。また、認知症に特化した商品など、多様なタイプがあります。
なお、誰でも加入できるわけではなく、年齢制限や健康状態によっては加入できない場合もあります。
受け取る方法は?
保険金・給付金を受け取る方法は、主に「一時金」「年金」「一時金+年金」があります。このほか、「死亡保険金」や「高度障害保険金」などもあります。また、「一定期間」受け取るのか、「終身」(死亡するまで)で受け取るのか、商品によって設計が異なります。
どんなとき受け取れる?
給付要件(所定の要介護状態)は、独自の基準を定めている商品や、公的な介護保険に連動し、「要介護1以上」などで保険金・給付金を受け取れる商品もあります。
民間の介護保険を検討するときのチェックポイント
民間の介護保険を選ぶときには、以下のような項目を確認しておきましょう。
□毎月の保険料はいくらか(いくらなら払い続けられるか)
□保険料はいつまで支払うのか(終身払い・一定期間など)
□どのような状態になった場合に保険料の払込免除があるのか
□どのような要件で保険金が支払われるのか
□公的介護保険に連動しているか(連動している場合は要介護度の基準)
□保険会社独自の認定基準があるか
□保険金は一時金か年金形式か、または併用できるのか
□保険金はいくらか
□保障期間は終身か一定期間か
□掛け捨てタイプか、貯蓄性があるタイプか
□解約時にお金が戻ってくる(解約返戻金)タイプか
※参考/生命保険文化センター 介護保険の概要
https://www.jili.or.jp/knows_learns/kind/main/14.html
民間の介護保険は必要か?【まとめ】
民間の介護保険は「もしものリスク」に備えるものですが、その「もしも」はいつ誰に起こるかはわからないもの。一方で、ある日突然、介護が始まるケースもあります。
民間の介護保険を検討する前に、まずは公的な介護保険の制度を知り、どのくらい不足するのか、どんな介護を受けたいのか、いくらまでであれば負担できるのかを考えておくことが大切です。
加入する場合には、無理なく支払える保険料で、自分にとってどんな保障内容が必要か、よく吟味して選んで欲しいと思います。例えば、月々の保険料は掛け捨てだったとしても、一定期間「安心の保障」を得ていると考え、並行して余裕資金があれば貯蓄や資産運用で将来の介護費用を準備する方法もあるでしょう。
相談者さんのように50才を超えたら、ご自身の考える介護のあり方、収入や資産の状況など介護費用を含めた老後資金について、改めて考えるよいタイミングかもしれません。
