《長生きの秘訣》世界最高齢102歳の現役薬剤師・幡本圭左さんが続ける習慣「朝食に干しぶどう入りヨーグルト」「毎朝ベッドで10分の体操」
肌つやもよく、足腰もしっかり、かくしゃくとした姿が印象的な幡本圭左(はたもと・けさ)さんは、世界最高齢・102歳の現役薬剤師だ。3年前に世界最高齢の薬剤師としてギネスブックに認定された。昭和27年に区内に「安全薬局」を開業し、現在も週に6日働くが、そんな幡本さんに長生きの秘訣を聞いた。
睡眠時間はたっぷり取らないと健康にはなれない
――毎日のルーティンや習慣について教えてください。
幡本さん:朝7時に起きて、夜は11時半ぐらいに寝ているので、睡眠は7時間半ぐらい。たっぷり寝ないと健康になれないと思ってるの。それから脳細胞の働きも、睡眠をたっぷりとらないとね。
6時間ぐらいしか寝ないと、頭がしびれるみたいになるので、お昼寝しています。1時間も2時間も寝るもんじゃなくてね、30分。30分くらいソファーで横になる。だから、ほんとに寝てるのは15分か20分。そうすると頭がスッキリする。
お昼寝は決まった時間じゃなくて、いま寝なくちゃいけないって体が求めていたら。なんとなく頭がしびれるような、頭が休みたいっていう感じするのね。
毎朝10分、ベッドの上で自分流の体操
――ほか、意識されている健康法はありますか?
幡本さん:毎朝10分、ベッドの上で自分流の体操をしています。朝、目が覚めたら、寝たまま足を10回バタバタやって、その次は体を真っすぐにして、足を少し浮かせて、足を交互にクロスする、これも10回。その次は、両足で自転車こぎの動きをする。
それから、ベッドに背中を付けたまま、右腕をできるだけ左に伸ばして、背中のストレッチ。それから左腕も右側に伸ばす。そういう体操を最低10分かけてやっています。
こういう体操をしてから起きるのと、しないで起きるのとでは、起きた時の体の調子がぜんぜん違うの。
若い時は起きてすぐスッと動けるじゃないですか。でも、この歳になると、起きてよいしょって立つのもね、体操してからだと割合に楽に立てる。ただ、転ばないように注意はしますけどね。
寝室は3階だから、20段の階段の上り下りもいい運動かもしれませんね。いちばん弱いのが膝なんです。若い時に何かにぶつけたんだったか、お皿にひびが入っちゃってね。若かったもんで、30代だから、医者に行って痛い注射をしてもらって、もう治ったって行かなくなっちゃったの。
それが、だんだん、年を取ってきたら痛くなって。病院に行ったら「手術した方がいいよ」って言われても、そのままにしてて。90近い時に「もう限界だから手術しなさい」って言われたんだけれど、ここまで生きると思わないから。で、痛い思いして2、3年生きててもしょうがないからやらなかった。そしたら、今になって痛くなってきた。
商品がそれなりに重さがあるので、梱包もいい運動になります。宅配業者が毎日集めてきますのでね。それに間に合うように手紙を書いて、納品書を書いたり、参考資料も入れて、落ち度がないように。
自家製のヨーグルトはフルーツを入れてたっぷり食べる
――食生活で意識していることありますか?
幡本さん:私は、お客様、特に高齢者には「たんぱく質をしっかり食べなさい」って言っていて。
娘も薬剤師なんだけども、家のことは彼女がやっていて、しっかり食べさせられます。意識しているのは、出してもらったものは全部食べること。
娘たちも70歳過ぎているので、そんなにこってりしたものはなくて、お肉やお魚が多いです。たんぱく質ですね。
お味噌汁は普通、お豆腐とかお揚げとかワカメみたいなもんでしょうけど、うちはそうじゃないの。ごった煮なの。なんでもあるもの入れてある。味噌汁の中に、こんにゃくが入ってたり、かぼちゃが入ってたり、さつまいもがあったり、にんじんも、ちくわも入ってる。ごぼうも入ってるし。「これ、味噌汁? おかずね」って笑うんだけど(笑い)。
朝はパンだけど、いろんなもの食べます。パンは自分の好きなものを食べるけど、普通は食パン。それとサラダ。今朝はにんじん、キャベツ、キュウリ、それから自家製の蒸した豆、ゆで卵を半分。ドレッシングは自分の好きなの。
それから自家製のヨーグルト。ヨーグルトにはレーズンを入れてる。ブランデーに干しブドウを浸したもので。20粒以上ヨーグルトに入れて。ついでに小さいスプーンでブランデーもかけて。お母さん酒飲みですね、なんて娘の夫に言われる(笑い)。
それと、バナナを半分。この間はりんご。いまは必ずバナナの他に、りんごかみかんが出てますね。
おやつは甘いものかせんべい
――好きな食べ物は?
幡本さん:甘いもの。なんでも、甘ければおいしい。
午後5時ぐらいにおやつを食べるのだけど、甘いものかおせんべいね。私、年にしては歯がしっかりして、上は全部自分の歯で、下は小さい入れ歯と差し歯があるけれど。だから、硬いおせんべいが好き。だけど、先日失敗して、少し歯が欠けたの(苦笑)。
逆に嫌いなものは納豆。皆さんには「納豆食べなさい」って言っていますが(笑い)。
あと、お酒はぜんぜん飲まないの。会合があったら、ビールで乾杯して半分ぐらい飲むくらい。体が受け付けないの。あんまり冷たいものも好きじゃない。極力冷たいものは飲まない。アイスクリームもほぼ食べない。お酒もタバコもやらない。体が「いらないよ」って言ってくれるみたいね。
――健康診断は受けているのですか?
幡本さん:健康診断は毎年行っていて、医者には“健康優良児”って言われます。だけど、この間、人間ドックの結果「腎臓と肝臓が弱ってます」って言われました。そりゃね、100年から生きてれば、弱るの当たり前よね。膝も時々痛くなる。
健康法は3食しっかり食べる
――特に効果を実感されている健康法は?
幡本さん:3食しっかり食べる。娘が食事の用意をしてくれますので、ゆっくり3食いただいております。
――それが健康と若さの秘訣?
幡本さん:若々しいと自分では思わないけどね。肌のことで悩んだことがないもんだから、これが普通だと思う。顔も手もあまりシミもない。
――漢方に詳しいことが、長生きや健康に繋がってると思われますか?
幡本さん:思います。どうしてってね、まず第一に、普段から自然治癒力、免疫力を高めるために漢方薬を長年服用していることが大きな力となっていると思います。
仕事は天から授かったもの
――長生きの秘訣の1つに、好きな仕事をするという意見もあります。
幡本さん:まさにその通り。生き甲斐ですから。お正月休みや夏休みをとる時は、なんとなくつまらない。やっぱりこれは、天から授かったものと痛感します。
――リタイアしたいと思ったことはない?
幡本さん:あったんです。それはイヤになったとかじゃなくて、この家を継いでもらいたいと思って。娘に引き継ごうと思ったんですけど。
でも娘が、私はお母さんみたいなふうにはできない。みんなの仕事の応援をして、美味しいってご飯を食べてもらって、みんなの健康を考え、家のことをしていた方が自分らしいって言うので。
――生涯現役で、これからも仕事を続ける?
幡本さん:もちろん。仕事ができなくなるまで。お釣りを間違えたり、お薬を間違えたり、もしもそういうことになったら、もう終わりだけど。赤字になっても続けます。
――これからの目標や夢を教えてください。
幡本さん:今の通りに仕事ができたら嬉しいな。でね、お客様が「おかげさまで良くなりました。元気になりました。病気が治りました」、数えるだけでもそういう人がいらしていただいたら、最高の日になります。
◆幡本圭左
はたもと・けさ/大正11年9月18日、長野県生まれ。昭和17年、東京薬学専門学校女子部(現・東京薬科大学)を卒業。結婚後、昭和27年に区内に「安全薬局」を開業し、現在も週に6日働く。令和4年、世界最高齢の薬剤師としてギネスブックに認定。
写真/小山志麻 取材/小山内麗香 文/高山美穂