作家・佐藤優さんが語る、人生を楽しむための45歳からの「時間」の考え方 「足し算の時間」と「引き算の時間」とは?
人生の目的や自分の役割などを考えるうえで、「年齢」という概念を意識することが大切だと話すのは、元外務省職員で作家の佐藤優さん(66歳)。さまざまな経験を積むことは大切だが、何に挑戦し、どのような経験を積むべきかは、年齢によっても変わるという。特に人生の中で転換点となる「45歳」からの過ごし方について、佐藤さんの著書『残された時間の使い方』(クロスメディア・パブリッシング)から一部抜粋、再構成してお届けする。
45歳から時間の質と使い方が変わる
私は長い人生の時間を俯瞰して見た時、45歳くらいから時間の質が変わるように考えます。簡単にいうと、45歳までは「足し算の時間」がベースで、45歳以降は「引き算の時間」がベースになります。「足し算の時間」とは自分の中にいろんなものを吸収し、ため込んでいく時間です。
20代はとにかく仕事のやり方を覚える時間です。目の前のやるべきことや上司から言われたことをこなし、仕事を覚えていきます。その後、30代は覚えた仕事をもとに、実践と経験を積む時間です。そして40代になると自分の仕事の仕方を確立し、その範囲を広げつつ完成させる時間になります。知識や技量、ノウハウを身につけ深めていき、経験値を高めていく。45歳までは基本的にどんどんプラスしていく人生であり、足し算の時間ということになります。
その後45歳からは、積み上げてきたものを使って結果を出していく時間になります。持っているものを増やすというより、有効に使っていくというイメージが強いので、「引き算の時間」という表現になります。
足し算の時間は新たなものを身につけるために、どんどん挑戦していく姿勢が大事になるでしょう。それに対して引き算の時間では、基本的には新しいことに無理に挑戦しようとはしないことです。
例えば45歳を過ぎて会社を辞めて独立するにしても、それまで手掛けたことのない新しいことを始めるのはリスクが高すぎます。事務職だった人がいきなりラーメン屋を開業したり、農業を始めようとするという話を聞いたりしますが、知識も経験もない領域に飛び込むのは、当然ながら失敗するリスクが高いわけです。同じ独立するのでも、それまでの仕事の知識や経験を生かせる仕事に限ることが大事です。事務の仕事をしていたので、事務処理のアウトソーシングの会社を起こすという独立であれば、成功する可能性は高くなるでしょう。いずれにせよ、これまでの蓄積を利用するという意味で、引き算の考え方がベースになっているということです。
この引き算の時間は、年を取るほどその割合が高まっていきます。50代より60代、さらに70代、80代となると、足し算するものは実際になくなっていきます。
引き算の時間を楽しむコツとは
45歳からは引き算をベースにした時間が増えていく──。そう言うと、なんだか暗い話のように聞こえます。しかしそれは間違いです。仮に45歳までの足し算の時間に、目的意識を持って有効な時間を使っていれば、当然ながら知識や経験などが増えていきます。豊かな蓄積があれば、そのソースを使って残りの人生をより豊かに、かつ楽しく生きることができるようになります。
引き算の時間とは、言い換えれば応用の時間でもあります。
前述したように、まったく新しい仕事や業種に挑戦することはリスクが高く、避けるべきだと思います。ただし、これまでの仕事の延長線上であれば、思い切って転職や起業するのもありでしょう。
そう考えると、実は人生の大きな転換や展開があるのは、むしろ引き算の時間ということになります。
引き算の時間は、「完成の時間」でもあります。残りの人生を展開する中で、最終的に自分の人生をどう締めくくるのか。どんな完成形を描き、それに向かってどのように残りの時間を使っていくか。その意味では、引き算の時間は足し算の時間以上に、クリエイティブかつ有意義な時間であるということができると思います。
◆作家・佐藤優
さとう・まさる。元外務省主任分析官。同志社大学神学部卒業、同大大学院神学研究科修了後、外務省に入省。英国の陸軍語学学校でロシア語を学び、在ロシア日本大使館に勤務。北方領土問題など対ロシア外交で活躍。2002年、背任と偽計業務妨害容疑で逮捕。2009年、最高裁上告棄却。2013年、執行猶予期間を満了し刑の言い渡しが効力を失う。著書に『国家の罠―外務省のラスプーチンと呼ばれて』(新潮社)、『残された時間の使い方』(クロスメディア・パブリッシング)など多数。
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