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連載

兄がボケました~認知症と介護と老後と「第73回 後見人への道」

 ライターのツガエマナミコさんは、認知症を患い現在は特別養護老人ホームで暮らす兄の成年後見人になるべく、その手続きに邁進中です。祖父母の家の相続がきっかけではありましたが、今後兄のサポートを続けていくためには、必要な手続き。マナミコさんの奮闘は続きます。

 * * *

分厚い後見開始の申し立て手引書にドヒャ~

 少し前になりますが、「104サービス終了」の文字を新聞に見つけてしばし感慨にふけりました。電話番号案内の104には、かつてとてもお世話になった身なのでございます。

 社会人になるまでこのサービスを知らなかったわたくしは、上司に「これ104で調べておいて」と言われたとき何を言われているのかわかりませんでした。

 その後、フリーライターになると104への依存度は格段に増えました。うろ覚えの住所や会社名でも親身になって調べていただけることに感動したものです。今ならインターネット検索で簡単に調べられることも、昔は生身の人を介したやり取りの向こうにある情報だったのでございます。

 無くなるのは寂しいですが、かく言うわたくしもすっかり104から遠ざかっておりました。紙の電話帳に自分の家の電話番号を見つけてなんとなく嬉しかったのも遠い昔。時代はこうやって流れていくのだと、思わず遠くを見つめてしまいました。

 先日、ついに司法書士の先生が兄の施設にいらっしゃいました。

 30年ほど前に亡くなった祖父母(母方)の家を処分するべく、ついに動き出したわけですが、遺産相続では法律上、認知症の兄には成年後見人を付けなければならないそうです。

 ということで目下、「わたくしが後見人になります」と裁判所に申し立てをするための書類集め、書類作成にいそしんでいるところでございます。その一環で、兄がどの程度の認知症なのかをみるため、司法書士の先生が面談にいらしたというわけでございます。

 ベッドにいる兄に「こんにちは」といっても反応はなく、「食べ物は何が好きですか?」と問いかけても返事はありません。1分ほどで「もうご様子はわかりました」といい、居室を後にしました。

 その後、施設のお部屋をお借りして、「持ってきてください」といわれた住民票、戸籍謄本、兄の通帳全部、介護保険証の写しをお渡ししました。通帳の中身から生命保険に入っていることがわかると「生命保険証券はありますか?」とおっしゃり、また現在のマンションが兄との共同名義であると話すと「登記事項証明書が見たいのですが、ありますか?」とおっしゃり、「なるべく早めに郵送してください」とサラッと言われました。

 それと引き換えに先生の鞄から分厚い紙の束が出てきて、「これは後見開始の申し立て手引書です。よく読んでおいてください」と差し出されました。

 それとは別に、兄の学歴、職歴、病歴、身体状態などを書く用紙と、わたくしの学歴、職歴、収入、預貯金などを書く用紙もあり、「それも記入して一緒に郵送してください」とおっしゃられました。内心“やれやれ面倒なことじゃわい”と思いましたが、“それくらいのことはオチャノコサイサイですわ”という顔をして「承知しました」と快諾して、先生をお見送りいたしました。

 分厚い紙の束はA4サイズで60枚以上。ドヒャ~となりましたが、中身は書類の記載例が多く、読むべきところはそれほどありませんでした。

「成年後見人の仕事」は主に年に一度、家庭裁判所に本人(兄)の収支報告をすること。本人の不利益になるような出費をしたり、後見人(わたくし)の私利私欲のために本人の預貯金を使ってはいけないことなどが切々と書かれておりました。

 権利としては本人の代わりに契約、解約ができること。兄は施設にいるので安心ですが、もしも詐欺まがいの契約に引っかかってしまった場合も、わたくしが契約解除できるというわけでございます。

 契約はこれまでもマンションの売買などで、兄の代理もしてきましたので特に大きな権利とも思えませんが、兄のクレジットカードをずっと解約できずにいたので、後見人になれた暁には、権利を行使してガッツリ解約してやろうと思っております。

 叔母は叔母で、認知症である夫に成年後見人を付けるべく、着々と事を進めている様子。兄と、認知症の叔父の書類がそろったところで、同時に家庭裁判所に申し立て書類を提出すると司法書士の先生はおっしゃっていました。提出されると家庭裁判所から人が施設にやってきてわたくしと兄を面談するという流れだそうでございます。

 いよいよツガエ後見人への道がスタートいたしました。こうご期待!

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文/ツガエマナミコ

職業ライター。女性63才。両親と独身の兄妹が、2012年にそれぞれの住処を処分して再集合。再び家族でマンション生活を始めたが父が死去、母の認知症が進み、兄妹で介護をしながら暮らしていたが、母も死去。そのころ、兄の若年性認知症がわかる(当時57才、現67才)。通院しながら仕事を続けてきた兄だったが、ついに退職し隠居暮らしを開始。2024年夏から特別養護老人ホームに入所。

イラスト/なとみみわ

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