認知症の母が白内障と緑内障を併発!眼科で視力検査に挑んだ母の「C」マークへの珍回答
遠距離介護の先駆者であり作家でブロガーの工藤広伸さんの母は認知症で要介護4。今年83才となる母は白内障に加え、緑内障も抱えているため、眼科通院が必須だ。認知症がじわじわと進行する中で、毎回「視力検査」に四苦八苦しているという。認知症介護の眼科通院における問題とその対応策とは?
執筆/工藤広伸(くどうひろのぶ)
介護作家・ブロガー/2012年から岩手にいる認知症で難病の母(82才・要介護4)を、東京から通いで遠距離在宅介護中。途中、認知症の祖母(要介護3)や悪性リンパ腫の父(要介護5)も介護して看取る。介護の模様や工夫が、NHK「ニュース7」「おはよう日本」「あさイチ」などで取り上げられる。最新著『工藤さんが教える 遠距離介護73のヒント』。ブログ『40歳からの遠距離介護』https://40kaigo.net/ Voicyパーソナリティ『ちょっと気になる?介護のラジオ』https://voicy.jp/channel/1442
認知症の母の眼科通院歴
母の眼科通院は、2017年から始まりました。きっかけは母が「壁に黒い影がある」と訴えたからで、飛蚊症と思って眼科を受診したところ、白内障と診断されました。最初に受診した眼科の医師とはどうも相性が良くなかったので、病院を変えたところ、さらに緑内障も見つかったのです。
緑内障の初期段階は自覚症状がほとんどないうえ、日本人の失明原因の1位です。あのとき転院していなかったらと思うと、ゾッとします。現在も2か月に1回のペースで通院していて、目薬で眼圧をコントロールしながら、進行を食い止めています。
白内障と緑内障の治療を始めて9年、その間に母の認知症も進行しました。そのため、眼科通院において、認知症ゆえのさまざまな問題も出てくるようになったのです。
腕のいい眼科医に救われた白内障の手術
数年前、母の視力が低下した時期がありました。白内障が進行して、水晶体が濁ってしまったためで、眼内レンズを挿入する手術を受けることになりました。ところが、ここで問題になったのが、認知症です。
手術中はじっとしていなければなりませんが、母は何のための手術なのか忘れてしまうので、動いてしまう可能性がありました。医師から「全身麻酔で手術する人もいるけど、認知症の症状が悪化することもある」と言われ、頭を抱えました。
結局、腕の確かな眼科医のおかげで、局所麻酔で手術を行い、無事に終了しました。しかしこれで終わりではなく、再び視力が低下する後発白内障のリスクがあるとのこと。
現在も後発白内障と緑内障の経過観察のため、通院を続けています。
視力検査の前に「レクチャー」が必要な母
通院のたびに、毎回行う視力検査。実はサポートが、かなり大変なのです。
最初は、マスクの問題です。母は検査前に、なぜかマスクを外そうとします。今は笑って済まされますが、コロナ禍は強めの口調で「外しちゃダメ!」と何度も制止していました。
次に、問題となっているのが視力検査です。母が通っている眼科の視力検査は、座ったまま行います。目の前の画面にランドルト環(Cのマーク)が映し出されるので、切れ目の方向を伝えるだけのシンプルな検査です。
ところが認知症のため、検査方法を忘れてしまっています。そこでわたしが、母に検査前に必ず「レクチャー」するようになりました。
わたし:「いい?(指でCの形を作りながら)輪の開いているほうを指すんだよ。『こっち』って言えば、わかってもらえるから」
2年くらい前から始めた、実演つきの視力検査レクチャー。できるだけわかりやすい言葉やジェスチャーで、母に理解してもらえるよう努めています。
認知症の母の予想外の珍回答
眼科のスタッフの皆さんも、母が認知症であることは理解してくれています。今回の視力検査は、こんな感じで進んでいきました。
スタッフ:「視力検査始めますね。輪っかの開いているほうを教えてくださいね。これはどうですか?」
母:「まんなか!」
わたし:「ちょっと!まんなかって(笑い)。こうやって、指を使ってもいいから」
母は「何を言っているんだろう?」と思いました。でもよくよく考えると、ランドルト環の真ん中は確かに開いています。「そういうことじゃないんだけどな」と思いつつ、検査は続きました。
スタッフ:「こちらはどうでしょう」
母:「よこ!」
わたし:「ちょっと!それだと右か左かわからないでしょ!ほら、指使って!」
スタッフ:「これはどうですか?」
母:「よこ(指は右を向いている)」
わたし:「そうそう!それでいいよ!」
検査室には10人ほどの患者さんがいて、次の順番を待っていました。わたしが身振り手振りで必死に説明する姿に、周囲の皆さんは違和感を覚えたかもしれません。
スタッフ:「右は1.0ですね、前回と変わりません」
右目の検査は、なんとかクリア。続いて、左目の検査が始まりました。
スタッフ:「これはどうですか?」
母:「右!」
わたし:「えっ?」
急に「右」という言葉を思い出したようで、わたしもスタッフさんもびっくり。そこからは「上」「左」と口頭で答えながら、指で正しい方向を示すようになり、左目の検査はスムーズに終わりました。
スタッフ:「左も1.0ですね、前回と変わりません」
母は途中で、検査方法を思い出したのだと思います。隣で、ひたすら褒めた効果もあったかもしれません。
視力検査が認知症の進行チェックにもなっている
通院のたびに、「いつまで視力検査は続けられるのだろう」と思わずにいられません。
ランドルト環による検査が難しくなったら、次はひらがなによる検査になるかもしれません。漢字はほぼ読めなくなった母ですが、ひらがなはまだ読めます。もう少しだけ、視力検査は続けられると思っています。
わたしにとって視力検査は、認知症の「今の状態」を確認する場にもなっています。認知症が重度まで進行し、できないことが増えている母ですが、サポートがあれば視力検査はできる。それがわかるだけで、少し安心できます。
今日もしれっと、しれっと。
