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暮らし

《余命8年が20年に》腎移植手術を経て“人生の残り時間”と向き合った作家・佐藤優さん、SNSは“時間泥棒”「ほとんどの人たちが自分の時間が奪われているという感覚がない」

 年を取るにつれて、人生の「残り時間」を意識するようになった人もいるだろう。元外務省職員で作家の佐藤優さん(66歳)は、慢性腎不全を患い2023年、腎移植手術を受け、8年ほどの余命(人工透析を続けた場合の10年生存率6割)が20年(10年生存率は9割)に伸びたことをきっかけに「寿命が延びたのは、この世で私自身がまだやるべきこと──使命があるからだ」と、残り時間で何をするかをより考えるようになったという。自分の残り時間とどのように向き合えば残り時間を幸せに生きられるのか、佐藤さんの著書『残された時間の使い方』(クロスメディア・パブリッシング)から一部抜粋、再構成してお届けする。

気付かないうちに時間を奪われている

 私たちは気がつかないうちに、自分の時間を何者かに奪われています。ミヒャエル・エンデの有名な『モモ』という作品には、他人の時間を奪う灰色の男たち=「時間泥棒」が登場します。彼らは人々に「時間銀行に時間を預けると、時間が増える」と嘘をつき、他人の時間を奪おうとします。主人公のモモという少女がその時間を取り戻すという話です。

 今から50年以上前の作品ですが、エンデが投げかけた問題は決して古くなってはいません。それどころか、「時間泥棒」はますます巧妙に姿を変え、擬態し、私たちの生活に忍び込んでいます。
 
 その典型がSNSと呼ばれる情報ツールです。X、LINE、Facebook、TikTokなどからYoutubeも含めて、私たちはいまや様々な分野と種類のSNSツールに囲まれています。

 いまや子どもから大人までスマホを片手に時間があればSNSをしている状況です。

 問題は、ほとんどの人たちが自分の時間が奪われているという感覚がないということです。むしろ自分の意志と嗜好で選択し、楽しんでいるという感覚がある。

 手軽に暇な時間を埋め合わせるツールが巷に溢れていることで、私たちはついつい貴重な自分の時間を奪われてしまいます。現代の生活において、インターネットやそれに付随するSNSは、時間泥棒の最たるものだといえると思います。

「客観的な時間の流れ」と「主観的な時間の流れ」

 時間というものは、よくよく考えると不思議なものです。今という瞬間があり、その直前には過去がある。そしてその直後に未来があるのですが、その未来は刻刻と現在に置き換わっていきます。時間の実態というものを、私たちは物理的な実体として直接認識することはできません。しかし、それが流れとして存在するであろうことは直感しています。

 このことを端的に言及したのが、ローマ帝国時代に活躍した哲学者アウレリウス・アウグスティヌス(354~430年)でしょう。

 アウグスティヌスは、「2つの時間がある」としました。「時間そのもの」と、「私たちが体験する時間」です。

 似たような考え方としてフランスの哲学者アンリ・ベルグソン(1859~1941年)の時間論があります。ベルグソンは、私たちが通常時間と呼んでいるものは、空間化され視覚化されたものに過ぎないと説きます。

「客観的な時間の流れ」と「主観的な時間の流れ」というのは明らかに違いがあります。前者をファクト(fact=事実)の時間というのに対して、後者はトゥルース(truth=真実)の時間として区別する考え方があります。
 
 ファクトの時間であれば1時間は60分です。それがトゥルースの場合は親しい人たちを過ごしていると1時間は60分よりもはるかに短く感じられ、上司に叱られている時の5分は1時間以上に感じられます。こういう主観的な時間がトゥルースなのです

 会社の始業や終業の時間も、電車や飛行機など交通機関の時間も、テレビやラジオなどの放送の時間帯も、すべてファクトの時間によって定められています。ファクトの時間があるからこそ、現代社会は機能しているのです。ところが現代人は、ファクトの時間を意識しすぎるあまり、ついついトゥルースの時間を見失いがちです。

 だからこそトゥルースの時間を意識して、ファクトの時間に侵食されつくさないよう自分の時間を生み出し、確保するという意識が大事になると考えます。

残り時間を幸せに生きるための「時間の解釈」

 世にある時間術の本は、ほとんどすべてがムダな時間をなくし、できるだけ有効に時間を使うための内容です。

 時間をマネジメントするうえで、本当のムダと思えるような時間はできるだけ削ることは必要でしょう。ただし、過去の時間に対しては、むしろムダなものなど何1つなかったという解釈が一番よいのではないかと思っています。

 人間は結局、合理的な判断だけに従って生きているわけではありません。

 一見ムダな時間も、解釈次第では貴重な経験を積んだということになります。実際、単なる解釈ではなく、事実としてそういう面があるはずです。過去の自分を許容し受け入れることで、過去の時間を肯定するのです。その方がラクだし、豊かな人生を送ることができるのではないでしょうか。

◆作家・佐藤優
さとう・まさる。元外務省主任分析官。同志社大学神学部卒業、同大大学院神学研究科修了後、外務省に入省。英国の陸軍語学学校でロシア語を学び、在ロシア日本大使館に勤務。北方領土問題など対ロシア外交で活躍。2002年、背任と偽計業務妨害容疑で逮捕。2009年、最高裁上告棄却。2013年、執行猶予期間を満了し刑の言い渡しが効力を失う。著書に『国家の罠―外務省のラスプーチンと呼ばれて』(新潮社)、『残された時間の使い方』(クロスメディア・パブリッシング)など多数。

●《年長者のたしなみを学ぶ》ANA初の「65歳定年まで飛び続けた客室乗務員」が指南する“相手を緊張させない”コミュニケーション術

●《自分の行動履歴を「見える化」》認知症専門医が提案 スマホを使って脳を「能動的」に動かす方法

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