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健康

《80歳を超えても20代のような記憶力》「スーパーエイジャー」はなぜいつまでも若々しくいられるのか?誰でも実践できる身近な活動

 80歳を超えても20代のような記憶力を持ち、複雑な計算も軽々とこなす。そんな驚異的な認知能力を持つ高齢者たち“スーパーエイジャー”がいる。意外にも身近な活動が、私たちの脳に驚くべき変化をもたらしている。

 スイス在住の医師・平井麻依子さんが、世界の脳科学のエビデンスを自分の脳で実験したことをまとめた『「脳にいいこと」すべて試して1冊にまとめてみた』(サンマーク出版)より、一部抜粋、再構成してお届けする。

教えてくれた人

医師・平井麻依子さん

東京・新宿区出身。スイス在住の医師。群馬大学医学部卒業、及び、ロンドン大学衛生熱帯医学大学院修了。 修了後、世界保健機関(WHO)に就職。その後、外資系コンサルティングファームで、日本、マレーシア、UAE、イギリス、スイスのオフィスにて勤務。医薬品医療機器分野のイノベーション戦略を担当。本当に患者のためになる新しいイノベーションの原石を探し、その可能性を最大化することにパッションを感じる。患者中心の医療に関する出版物・講演多数。2023年、イギリス出張中に視野に異常をきたし緊急入院。その後、脳腫瘍と診断される。スイス・アメリカにて闘病生活を送る。1年で職場に復帰し、現在、自身の体験をもとに、ヨーロッパ最大の脳腫瘍に関わる非営利機関での活動をしている。趣味は、スイスの湖での水泳と山でのハイキング。

若々しいシニア「スーパーエイジャー」は何をしているのか?

 平均寿命が延びている中で、年齢を重ねても若々しい脳をもっている人には、どういった理由があるのか。

 こうした研究は数多く行われています。

 そして、それは脳の神経可塑性に結びついています。

 たとえば、アメリカ・マサチューセッツ総合病院の神経内科が行った「スーパーエイジャー」の研究があります。

 スーパーエイジャーとは、80歳以上のシニアの中でも同世代と比較すると、圧倒的に高い認知能力をもつ人のことを指します。

 その研究では、若さの秘訣のひとつとして、「新しい刺激を脳に与えつづけること」が挙げられています。

 新しい刺激を脳に与えつづけるということは、具体的には認知機能を刺激するということ。これまでにやったことがなく、考える力が試されるようなことです。

 たとえば、「楽器を習う」「外国語を身に付ける」「ダンスで新しい動きをする」「カードゲームをする」「新しい料理を作る」など、いままで経験したことのない精神的・身体的なスキルであればなんでもよいのです。

 認知機能を刺激する活動によって、神経可塑性が高くなり、脳の神経回路網のシナプスが増え、右脳と左脳の情報交換が活発になり、脳の老化を減速させるのです。

 特に、心理学的に「複雑介入」と呼ばれる、複数の脳の活動を統合する必要のある経験だと、より効果的とされています。

 これは、注意力、判断力、記憶力、空間把握能力などを同時に使う活動です。

 つまりは、ひとつのことを行うよりも、複数の要素が絡まりあった「新しいこと」を行う方が脳にはいいのです。

 動きが複雑で上達には努力が欠かせないことを実施すると、脳に新たな白質が作られ、灰白質の体積が増えるのです。

 これにより、決定力、記憶力、思考力、集中力、論理力などを鍛えることになります。

 脳を刺激する活動をやめると、認知低下が加速します。それは定年後やることがないと痴呆が始まる……といった身近な例からもわかるでしょう。

頭のいい人はジャグリングをやっている?

 ある研究によれば、注意力、空間把握能力などの複数の能力を同時に必要とする「複雑介入」であるジャグリングは特に効果があるといわれています。

 有名なジャグラー、ピーター・フランクルさんは、数学者として算数オリンピック委員会会長も務めていますし、高校日本一を決める日本高校生ジャグリング大会も開成高校、筑波大学附属駒場高校などの超進学校が優勝の常連です。

 東京大学のジャグリングサークルはメンバー総数が100名を超えるそうです。

 そういえば、私の高校にあったジャグリング部でも部員3名が全員東大に進学したような……。

 また、語学学習やダンスもさまざまな裏付け研究によって、神経細胞の可塑性に対する効果が立証されています。

 語学に関して興味深い実験を紹介しましょう。

 2012年、スウェーデン・ルンド大学のヨハン・マーテソンが、スウェーデン軍士官学校の語学を学んでいる学生と、学んでいない学生を比較し、両者に3か月間同じ難易度の学習課題を出しました。

 そして、その実験の開始時と終了時に、脳画像を撮影しました。

 脳画像によると、語学を学ばなかった学生の脳には変化はありませんでしたが、学んだ学生の脳の海馬や中前頭回が大きくなっていたことが判明しました。

 特に、語学習得が苦手で、懸命に努力した人の方が大きかったそうです。

 これは、第二言語を使うには、前頭葉、脳梁などのさまざまな部分を活性化させ、右脳と左脳の両方を関与させ、情報交換をさせる必要があるからだと考えられています。

 つまり、語学を学ぶと脳が活発になる、しかも語学が苦手であればあるほどその効果は高いということです。なんだか勇気が出る実験結果です。

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