大谷式1日1万歩ウオーキング術 医師が検証&実践している心も体も元気になる歩き方
急いでいるときにはセカセカと、緊張していればぎこちなく、落ち込んでいればトボトボと……。歩く姿には、そのときの心理が表れるもの。そこで今回は、気持ちが上向きになって健康にもなる歩き方を、専門家に教えてもらいました。ウオーキングするのにぴったりのこの時期、体だけでなく心にも効く歩き方で出かけてみませんか?
教えてくれた人
大谷義夫さん/医師
池袋大谷クリニック院長。呼吸器内科医・医学博士。全国屈指の患者数を誇る呼吸器内科のスペシャリストとして、テレビなどでも活躍。『1日1万歩を続けなさいー医者が教える医学的に正しいウォーキングー』(ダイヤモンド社)など著書多数。趣味はウオーキング。
65才以上で体力があるなら1日1万歩を目標に
「健康のため1日1万歩を歩こう」「1万歩より8000歩がいい」「20分以上歩くといい」「いや1時間以上歩いた方がいい」ーーウオーキングの正しい方法については諸説ある。そんなさまざまな説について科学的根拠を基に検証し、正解を導き出したのが医師の大谷義夫さんだ。
「私が82の論文を読み、自ら実践して出した結論は、健康なら年齢を問わず、『1日1万歩を歩く』です」(大谷さん・以下同)
65才以上の高齢者で1万歩が難しい場合は、1日8000歩でも肥満防止やストレス解消効果が期待できるというが、体力があるなら高齢でも1万歩を目指した方がいいという。
「アメリカ国立がん研究所で40才以上の男女5000人を対象に『1日の歩数と死亡率の関係』を調べたところ、1日に歩く歩数が多い人ほど死亡率が低いことが判明。とはいえ、1万歩と1万5000歩では、効果がさほど変わらないので、私は1万歩をすすめています」
更年期やうつ、不眠、認知症予防にも
ウオーキングの効果は死亡率を下げるだけではない。
「慢性不眠症で運動不足の患者が4か月間ウオーキングをしたところ、睡眠レベルと抑うつ症状が改善し、ストレスホルモンのコルチゾールが減少したという研究結果もあります」
幸せホルモンと呼ばれる脳内の神経伝達物質・セロトニンは、太陽光を浴びることで分泌が活性化するので、日中のウオーキングがベスト。自律神経の調節機能も担っており、分泌量が増えれば気分が安定してポジティブになり、ストレスも軽減、更年期症状の改善も見込まれる。
「また、東北大学の調査では、毎日60分以上歩いた人は30分未満の人に比べて認知症リスクが28%低かったこともわかっています」
体だけでなく心や脳にも好影響を与えるウオーキングのルールについては、実践編をチェック!
心まで元気になる「大谷式」1日1万歩ウオーキング術<基本編>
国内外のさまざまな論文に目を通した医師・大谷義夫さんが、科学的根拠を基に、心と体に最も効果的な歩き方を紹介してくれた。
<STEP1>基本姿勢は“胸を張って”!
アメリカ・コロンビア大学の研究グループは、42人の男女に「背筋を伸ばした姿勢」と「猫背の姿勢」をとってもらい、ホルモン分泌量を比較。すると前者は、男性ホルモンの一種で“やる気ホルモン”とも呼ばれるテストステロンが増加し、ストレスホルモンのコルチゾールが減少したことが判明。つまり、胸を張って歩くとやる気がわいてくるのだ。
【正しい歩き方】
・目線は進行方向
・背筋を伸ばす
・歩幅は広く
【間違った歩き方】
・目線が下を向く
・猫背になる
・歩幅が狭い
<STEP2>歩幅は広いほど認知症リスクが低下。65cm以上を目指そう!
東京都健康長寿医療センター研究所の研究によると、歩幅が狭い人は広い人に比べて、認知機能低下のリスクが3倍上がることがわかった。おすすめの歩幅は、後ろ足のつま先から前足のつま先までが65cm以上。参考にしたいのが横断歩道だ。横断歩道は白線の幅も白線間の幅も45cmなので、どちらかの幅をまたぐようにすれば65cmくらいになる。横断歩道を渡るときにでも一度、自分の歩幅をチェックしてみよう。
<記者が実践!>身長150cmの記者が歩幅65cmで歩いてみたら
歩幅65cm…。測ってみるとかなり長い。実際歩いてみると不自然なほどの大股に。正直歩きづらい。45cmならなんとかいけるが、これでは股関節をかなり激しく動かすことに。「最初から無理せず “いつもより少しでも歩幅を広く”を意識していくと、少しずつ歩幅が広がっていきます」(大谷さん)。
気持ちが上向く! 大谷式1日1万歩ウオーキング術【実践編】
【1】服装は自由。歩き方はゆっくりでOK!
毎日歩くことが大切なので、服装は自由でいい。「靴もウオーキングシューズなどではなく、履き慣れたものでOK」(大谷さん・以下同)。早歩きよりもゆっくり歩いた方が副交感神経を優位にし、リラックスできるという。
【2】1日1万歩は歩く! 小分けでもOK!!
「かつて、有酸素運動は20分以上続けないと効果が出ないといわれていましたが、最近の研究では、短時間で細切れの運動でも有効だとわかっています。ですから、合計で1万歩を歩くのならば、数分ずつと小分けにしてもいいんです」。まとまって歩く時間がとれなくても、家事の最中に歩いた歩数も換算していいという。つらいと思わないで毎日続けることが最優先なのだ。
【3】ウオーキングは夜より朝がおすすめ!
朝に太陽の光を浴びると体内時計がリセットされて自律神経が整い、幸せホルモンのセロトニンが分泌され、体にさまざまな好影響を及ぼす。そのため、夜よりも朝に歩く方がおすすめだ。「ただし、寝起き直後はおすすめできません。自律神経のバランスが不安定なときなので、血圧が急上昇したり、脳梗塞や心筋梗塞のリスクが高まったりする可能性があります」。
【4】毎日20分歩けばうつのリスクが低下
「東京大学大学院の調査によると、1日1万歩、2か月で20万歩を歩いたところ、不安・抑うつ症状が改善したことがわかりました。また、カナダ・トロント大学の『運動とうつに関する調査』によると、運動をするほどうつの発症リスクが低くなることが判明。週150分のウオーキングでも、将来のうつリスクが低下します」。つまり、毎日約20分のウオーキングがうつ予防につながる。
【5】4週間続けるとストレスが減少
「産業医科大学がストレスとウオーキングに関する調査のため、被験者に4週間毎日歩いてもらったところ、もともと運動習慣がなかった人はストレスが減り、社会とよりうまくやっていけるようになったことが判明しました」
【6】歩く前の朝食には納豆&バナナがいい!
高知大学の研究によると、男子学生50人に1か月間、納豆とバナナを含む朝食をとり、食後に30分、太陽光を浴びてもらったところ、一日中気分がよく、寝起きもスッキリし、早寝早起きになったという。「これは大豆に含まれるトリプトファンと、バナナに含まれるビタミンB6、そして太陽光が、幸せホルモンのセロトニンを合成したから。私もバナナ1本をつぶして納豆1パック(タレなし)と混ぜ、トーストにのせて食べましたが、意外に合いました」。
【7】歩くなら街中より森林の中を
「北海道・中頓別町国民健康保険病院院長の住友和弘さんが、森林と街でウオーキングをし、それぞれの効果を調べたところ、森林を歩いた方が、血圧が低下してストレスホルモンが減少。自律神経のバランスが整って睡眠の質も改善したことがわかりました。森林でなくても、公園など緑の多い場所なら同様の効果が望めます」。できるだけ、緑の多い場所を歩くよう意識して。
【8】1人より2人で歩くと習慣化しやすい
アメリカ・インディアナ州にあるパデュー大学の調査によると、パートナーと歩くことでウオーキング頻度が増加し、さまざまな人とのコミュニケーションの機会も増えたことがわかった。つまり、2人で歩いた方が楽しくウオーキングができるため、習慣化しやすくなるというわけだ。「ウオーキングは毎日行うことが大前提ですので、楽しく続けるための工夫が重要です」。
【9】犬と一緒に歩くとより効果的
麻布大学獣医学部の研究で、犬が飼い主を見つめると、飼い主も犬も愛情ホルモンのオキシトシンの分泌が増えることがわかった。「犬と散歩をするなら、時折見つめ合うと幸福感がアップします」。
イラスト/藤井昌子
※女性セブン2024年11月21日号
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