「早食い」「トイレの我慢」「起床後すぐのランニング」は大病を招く習慣だった!?【3大疾病 生活習慣病を防ぐ29の知恵】を名医が徹底解説
健康とは病気にならないこと、とすればその秘訣を知っているのは病気を知り尽くしている専門医たちだろう。病気を防ぐ習慣、反対にその病気を招いてしまう習慣は何か。3大疾病・生活習慣病の名医5人が自らの知見と経験をもとに紹介する。
教えてくれた人
中川恵一さん/がん専門医・東大病院特任教授
秋津壽男さん/循環器専門医・秋津医院院長
矢野宏行さん/糖尿病専門医・やのメディカルクリニック勝どき院長
渡辺尚彦さん/高血圧専門医・日本歯科大学病院臨床教授
石原藤樹さん/医学博士・北品川藤クリニック院長
がんの予防にはコーヒーやブロッコリーが効果的
日本人の死因1位であるがん。それに次ぐ脳卒中、心筋梗塞の「3大疾病」は死に直結する重病ゆえ、日頃の生活習慣で予防を意識することが欠かせない。
自身も18年に膀胱がんを患った東大病院特任教授でがん専門医の中川恵一さんが語る。
「がんを患ったことで普段の生活習慣をより気に掛けるようになりました。私はがんの予防のためにブラックコーヒーを1日に5杯以上飲んでいます。コーヒーには炎症を抑える作用があり、肝炎から進行する肝臓がんに効くという研究があります。日本人を調査対象にした研究で、コーヒーを1日5杯以上飲む人はほぼ飲まない人と比べて肝臓がんのリスクが4分の1に低下したという報告もあります」(中川さん)
コーヒーのがんへの効果は現在研究が進んでいる途中だが、肝臓がんに対しては高い確率で効果が期待できるという。
大の酒好きの中川さんは、酒とうまく付き合いつつ食事を工夫している。
「夕食時にはお酒と一緒にブロッコリーを食べています。飲酒でリスクが高まるがんの代表は食道がんですが、酒をやめるつもりはありません。野菜や果物は食道がんのリスクを半減させるという研究があります」(中川さん)
朝食時にはフルーツ、夕食時には野菜の中でも特に栄養価が高いブロッコリーをお酒とともに食すという。
一方でがん予防のために避けたい食習慣もある。
「熱い飲食物は食道がんのリスクをほぼ確実に高めるので少し冷ましてから飲み食いします。また、フルーツジュースは果汁100%ジュースでも糖分が多く糖尿病を招きやすい。すい臓、肝臓、大腸などのがんにつながるので飲みません」(中川さん)
がんと並ぶ3大疾病で、主に血管の硬化を原因とする脳卒中や心筋梗塞を予防する習慣について、秋津医院院長で循環器専門医の秋津壽男さんが語る。
「週2回夕飯時にひきわり納豆を食べています。納豆に含まれるナットウキナーゼには血栓を溶かす作用がありますが、粒納豆と比べてひきわり納豆はナットウキナーゼ含有量が多いのです」
血管を守るために秋津さんが避けているのが、「サウナ」と「水風呂」だ。
「今はサウナブームですが、高温のサウナに入ると急激に血圧が上昇して心拍数が増加します。特に高齢者は体内の水分量が少なく、サウナに入ると血液がドロドロになって血栓が詰まりやすく、心筋梗塞や脳梗塞を起こす恐れがある。また、長時間サウナに入った直後の水風呂は激しい温度差で心臓に負担がかかり、心疾患を引き起こす可能性があります」(秋津さん)
トイレの我慢は高血圧を招くので注意!
3大疾病の引き金となるのが、高血圧、糖尿病、脂質異常症などの生活習慣病だ。
“ミスター血圧”の異名を取る高血圧専門医の渡辺尚彦さんが言う。
「毎朝コップ1杯の無調整豆乳を飲んでいます。豆乳は塩分の排出を促すカリウムや血管収縮を防ぐマグネシウム、カルシウムなどの栄養素が豊富で、大豆に含まれる植物性タンパク質は血圧を上昇させるホルモンを阻害する働きが期待できます。甘味料や塩分が入った成分調整豆乳より無調整のほうが高い効果を望めます」
体を動かす習慣も高血圧の対策に効果が期待できるという。
「長時間座ったままの状態は血圧を上げますが、貧乏ゆすりの要領で足を動かす『健康ゆすり』には降圧効果があります。脚の血管の内皮細胞から血管拡張作用があるNO(一酸化窒素)が分泌されやすくなります」(渡辺さん)
反対に高血圧を招く習慣は「トイレの我慢」だという。
「排尿や排便を我慢し続けると血圧が上がるので要注意。外出時は我慢せずに用が足せるようにトイレの場所を確認しておきましょう」(渡辺さん)
糖尿病予防には血糖値の乱高下を防ぐことだ。“ミスター血糖値”の異名を取る、やのメディカルクリニック勝どき院長で糖尿病専門医の矢野宏行さんが語る。
「食事は早食いを避け、食後の15分以内に軽めのスクワットやゆっくりめの散歩をしています。現代人の食事には摂取する糖質が多いため食後急激に血糖値が上がりやすく、反動で血糖値を下げるホルモンのインスリンを多量に分泌することで血糖値の乱高下が起こりがち。その状態が続くと糖尿病を招きやすくなりますが、食後15分以内に軽い運動をすると血糖値の乱高下を防ぐことができる」
一方で血糖値の上昇を招きやすいのが食後すぐの睡眠だ。
「食後1時間以内に寝てしまうと糖質が消化されず血糖値が上がりやすくなってしまうので、避けましょう」(矢野さん)
血中コレステロールの増加などで脂質代謝に異常をきたすと脂質異常症を招く。北品川藤クリニック院長の石原藤樹さんが語る。
「毎日7時間以上の睡眠を取るようにしています。睡眠中は脂質代謝やホルモン分泌をする時間。寝る時間を日によって大きく変えず、安定した睡眠時間を確保することが脂質やコレステロールの代謝にいいのです」
食事では次の点に気をつけているという。
「乳製品は牛乳よりもチーズを積極的に摂っています。発酵食品のほうが中性脂肪に悪影響を与えないのです。逆に控えているのはウインナーやハムなどの加工肉。頻繁な摂取は脂質異常症のリスクを高めます」(石原さん)